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『四十九日のレシピ』タナダユキ監督、「自分自身の親戚一同にも勧めていい作品になった」

四十九日のレシピ

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母が遺した“幸せに生きるためのレシピ”を通じて、心の傷を抱えた家族が人生を見つめ、再生に向かう姿を温かく描いた『四十九日のレシピ』がBD&DVDで好評発売中だ。メガホンを握った鬼才は、タナダユキ監督。同作はとりわけ女性に向けての応援賛歌的な側面が強いが、そこにタナダ監督が込めた想いとは? パーソナルなテーマも含め、話を聞いた。
『四十九日のレシピ』タナダユキ監督、「自分自身の親戚一同にも勧めていい作品になった」

──どの家族も体験しそうな普遍的テーマを演技派キャストと追求する重厚なドラマでした。
監督:最初に原作を手にした時、父と娘の関係に魅力を感じました。石橋蓮司さん演じる良平の場合、父親として何があっても子どもを自立させるという強い意志を持ち、自分も親として自立していますよね。わたしにとっては理想的な親子関係だったので、そこを映像にしたいと思いました。それに、今までは自分よりも年下の主人公をすえて作品を撮ることが多かったのですが、百合子は自分とほぼ一緒の世代。揺れ動いたり、決断できない気持ちがよくわかるし、それに対してもどかしい気持ちもあったりするので、興味がありました。
──『四十九日のレシピ』の原作と出会う前に、個人的に追求していたテーマでしょうか?
監督:そうですね。前々から思っていました。世の中にはお互いに自立できない親子は多いと思っていて、精神的にも経済的にもお互いが自立することって、実はなかなか難しいことなのではと思っています。そもそも家族って、意外とやっかいなものだったりするとも思います。親が子に対しての心配もあれば、その反対もあるでしょうけれど、それを抱えながらも成人した以上、お互いの人生は自分のものと思うようになることは少ない気がします。
──主人公と同世代の女性、男性もですが、我がごとのように受け止める人間ドラマですね。
監督:世の中に、いろいろな映画があるなかで、こういう映画があってもいいと思います(笑)。今まで男性だ、女性だと、わけて映画を撮ったことがなく、今回のように不妊などを扱う作品を撮る過程で、そのことに多くの女性が悩み葛藤していることを改めて知って、驚愕しました。そして、この映画の中に答えがあるわけではないけれども、何か自分を見つめ直すきっかけにして、思いつまっていても仕方がない、思いつまるといいことはないことを知ってほしいです。映画が完成して時間が経って、そういうことを改めて思いましたね。
──その不妊は一例で、必ず終わる人生とどう折り合いをつけ、納得するかが重要ですよね。
監督:あの後も百合子は不妊治療を頑張ると思うけれど、やがてあきらめると思います。でも、彼女の中ですごく納得して止めると思うので、観る方も自分の人生を念頭に置いて、どうすればあきらめることの納得がいくか、考えるきっかけになればいいなと思いますね。でも、もしも10年前にお話をいただいても、テーマがよくわからなかったと思うので、撮らなかったとも思いますね。そして、年齢を重ね、父親の関係とか、人生がUターンする年齢になってくると、少なくとも始まりではないことと、親の老いや死がリアルに降りかかってくる。そういう時、どうすればいいかみたいなことを、考えないといけないですよね。
──ところで、いくつかある魅力的な映像特典の中で、ご自身が特にオススメしたい特典は?
監督:「監督×脚本家のコーヒタイム」です。この時、全然コーヒーをいただいていないですが(笑)。これは宣伝の一環で作ったもので、それまで言わなかった秘話みたいなことを話しています。百合子の人生は孤独かどうか空白かどうかなどを、ちょっとだけ追求したことをダラダラ話している感じで。映画を一度観て「監督×脚本家のコーヒタイム」を観れば、女性の場合は自分と比較して、思うことがあるかもしれないです(笑)。おすすめですかね。
──まかないのレシピ「ごはん編」&「おやつ編」は、どういう内容の映像特典でしょうか?
監督:まかないのレシピの「ご飯編」でスープを作っていて、「おやつ編」でマーラーカオという蒸しパンを作っています。映画の中に登場するメニューを再現することはよくありますが、映画の撮影時に映画のスタッフが何を食べているかは出回らないと思うので、めずらしいですよね(笑)。今回はフード・コーディネーターの方がまかないも時々作っていただいて、それが本当に美味しかったので、ご紹介することにしました。すごく簡単に作れて、おすすめです。おやつやお味噌汁も作っていただいていて、撮影現場では本当に癒されました。
──この作品は過去作と一線を画すような家族のドラマでしたよね。ファンとしては新しいタナダユキ監督の一面を知れてうれしいですが、今後も同様の路線で映画を撮りますか?
監督:確かに今回は、自分自身の親戚一同にも勧めていい作品になっているので、すごくありがたいです(笑)。いままではR指定の作品が多かったので、観る人が限定的でしたので。今回は、より多くの人たちに広がったと思うので、その感想が聞けてうれしかったです。幅が広がった実感があるというか。でも、今後もRが付くような作品も撮ると思いますよ(笑)。
──最後におうかがいします。『四十九日のレシピ』を撮って一番よかったことは何ですか?
監督:豪華なキャストの方々が集まってくださって、皆さん作品のことを第一にしてくださる方々だったので、まったく緊張せずに仕事に集中したこと。それがよかったことですね。歳を重ね、自分が図々しくなっただけかもしれないですが(笑)。ただ、R指定がつかなくても映画が撮れたってことは、自分にとっては大きいことだったと思います(笑)。どのジャンルでも基本的に人の心を描く上では何も変わらないと思っているので、今回のような作品でもR指定がつくような映画でも、どのジャンルでも撮っていければと思っています。
『四十九日のレシピ』
発売中

【セル】Blu-ray(2枚組) ¥5,500(本体)+税
【セル】DVD(2枚組) ¥4,500(本体)+税

※レンタル版同時リリース
発売元:ギャガ
販売元:ポニーキャニオン
2014年5月22日
『四十九日のレシピ』