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映画『アンナプルナ南壁』本編特別映像&デニス・ウルブコ、ドン・ボウイ インタビュー

アンナプルナ南壁 7,400mの男たち

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9月27日(土)より公開される山岳ドキュメンタリー映画『アンナプルナ南壁 7,400mの男たち』。本作の見どころ映像と、実際に山岳救助に携わった登山家デニス・ウルブコ氏とドン・ボウイ氏のインタビューが到着した。
映画『アンナプルナ南壁』本編特別映像&デニス・ウルブコ、ドン・ボウイ インタビュー(左:ドン・ボウイ/右:デニス・ウルブコ)

登山者の40%近くが命を落とすことから“キラー・マウンテン”と呼ばれ、世界で最も危険な山として知られるアンナプルナ。映画『アンナプルナ南壁 7,400mの男たち』は、そのキラー・マウンテンから届いたSOSに、命を賭して救出に向かった12人の登山家たちの姿を、貴重な記録とインタビュー映像で捉えた感動のドキュメンタリー。

今回解禁になった映像に登場するのは、実際に山岳救助に携わったカザフスタンの世界的登山家デニス・ウルブコ氏と、カナダ出身で山岳救助隊メンバーとしても活躍するドン・ボウイ氏。二人ともアンナプルナからのSOSを耳にしてすぐに駆け付けた勇気ある人物であり、そんな彼らが自らの肉体を酷使しトレーニングする姿にあわせて語られる哲学はどれも珠玉の名言ばかりだ。

「頂上を目指さなくてはならない。仕事でも学問でも人との結びつきでも。とにかく前に進むんだ。魂の高みを目指し、心が求め切望する大切な何かにたどり着くために」「この地球で過ごせる時間は限られているから、本当にやりたいことをするべきだと思う。漫然と生きるんじゃない。テレビの前に座っていてもわくわくしないよ。生きている実感を味わうんだ」。そんな言葉に彩られた本作は、普段日常を生きている私たちにいま一度“生きることの素晴らしさ”や“人と人とのつながりの大切さ”を思い出させてくれること請け合い。スポーツの秋でもあるこの季節に、アウトドア気分を一足早く味わってみてはいかがだろうか。



また、映画の公開にあわせ、両氏のインタビューも到着した。

◆デニス・ウルゴフ氏インタビュー

──数あるヒマラヤの8000M峰の中でもアンナプルナ南壁の難しさというのは、どのような点にあるのでしょうか?
デニス:アンナプルナ南壁は大変難しいルートです。東峰から登る道は整っているように見え、ほかの8,000m級のよくあるルートと同じに見えますが、決定的に違う点があります。それは非常に長く続く東の尾根です。この尾根は標高7,500m地点で7キロも続くのです。これは大変に時間と体力を消耗してしまうのです。
──デニス・ウルブコさんご自身のアンナプルナ南壁のご経験について
デニス:私自身はアンナプルナに関しては、2004年北からフランスルートで登頂しました。過酷な下山で大変危険な目にあいました。この映画で描かれている状況はその時と似ており、暗闇と霧、そして雪崩とクレバスへの細心の注意が必要でした。一歩一歩が、体力と精神の弱さとの闘いでした。危険な場所で体を奮起し、ブレーキをかけながら歩いていく。それは、まさに死と背中あわせのレースでした。
──救助に向かった登山家たちの行動と連携は無駄がなく驚きました。どうしてこのような勇気ある行動がとれたのでしょうか?
デニス:私達登山家は、どんな場合でも一緒です。なにか特別なことをしたわけではないのです。私達には何か遺伝のようなものがあるのだと思います。危険にもかかわらず、人は時には全く知らない人でも助けようとします。それは自発的な行動です。それはまったく疑いないことだと思います。イナキは助けを必要としていた、だから向かったのです。
──デニスさんを難易度の高い山に着き動かす原動力とはどこからくるのでしょうか?
デニス:始めに言いたいのは、全ての登山が危険なわけではありません。もちろんきちんとした装備をして安全な登山をしたいという気持ちがあります。しかし魂の深いところ、なにか原始的なところで、その気持ちがやってくるのです。過酷なアタックでは、命を十分に感じることが重要です。そして私は声に従うのです。私の熱い気持ちは、過酷な挑戦で山を登ることに向かっています。それを認識することは難しいです。真の戦士であること、という気持ちや個人的なエネルギーだけで目標を達成することが、前向きな思考にさせるのだと思います。
──映画の見所を教えて下さい。
デニス:私にとってこの映画の1番重要なシーンはイナキの言葉 ‟人生は素晴らしい“です。


◆ドン・ボウイ氏インタビュー

──ドン・ボウイさんにとっては登山とはどんな意味を持つのでしょうか?
ドン:ある意味で、山は単なる岩と氷と雪に過ぎないと思います。もし何も経験を得ることができないのであれば、アンナプルナのような山の頂上を立つことは、ほとんど意味がありません。遠征から得た経験―たとえそれが残念な結果だったり、良い結果であったとしても―それらの経験が、他人との関係に何かしら影響がでないのであれば、その遠征は単なる実りのない自己中心的な行為です。
──今回の救助活動は、ドン・ボウイさんの登山人生のなかで、どのように位置づけられる出来事でしたか?
ドン:2008年のイナキ救助活動は、個人的にとてもつらいものでした。その影響は、長い間重く自分にのしかかっていました。たぶん、これからの自分の人生にも大きな影響を及ぼすと思います。ポジティブな影響とネガティブな影響の割合を比較するのはほとんど不可能です。しかし、私の友人や家族は、その救出劇以降私が変わったといっています。私は、もっと強く、そして他人に対してより思いやりのある人になりたいと思います。私はアンナプルナに4回挑戦して、まだ頂上までたどり着いていません。アンナプルナは私の宿敵ですね。
──アンナプルナ南壁のルートの特徴について教えてください。
ドン:新しいルートを試している間は、ポーランドのルートやトマジ・フマルのルートの近くに近づいていると個人的に感じていました。それは新ルートとはいえませんが、二つのルートの融合だと思っていました。壁の下へのアプローチは、長く、困難で多くのクレバスや雪崩にあいます。深い雪の中ではベースキャンプから壁面に達するまで2日間はかかります。山が多い年は、それがベストな登り方です。私は、7,350m近くのロック・ノワールまでにしか行っていません。2006年ポーランド遠征隊とタルケ・カンを登った時、遥か彼方東から長い尾根が見えました。その尾根はとても長く吹き曝しです。天候が悪化したり、なにかのトラブルで撤退しなければならかったら、ロック・ノワールまで引き返すか、頂上の下を歩いて北壁を下ります。そこで何か問題が起きたら絶望的です。しかしながら私はいつか必ず挑戦したいと思っています。
──数々の登山経験は、ドン・ボウイさんの人生に影響を与えているのでしょうか?
ドン:山を登ることは、“支配する”という行為が幻想であることを教えてくれます。私達は、山を含め、この世界で本当は何も征服していないのです。自分のエゴのために、財産、土地、物、人々そして実績などを、私達が支配していると単に感じているにすぎません。唯一残るものは、私たちが与える他者への愛情だけです。愛情は、感情のように消え去りません。  愛情は、風や感情のように行ったり来たりはしません。それどころか、私達は、自分たちの周りにある素晴らしい幸福を求めて突き進むのです。山の斜面で学んだことは、下界で生かされます。学ぶ教室は雲の中にあるのです。
2014年9月24日
『アンナプルナ南壁 7,400mの男たち』
2014年9月27日(土)よりヒューマントラスト有楽町ほか全国順次公開