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テーマは二つの人生を持った一人の女の悲劇 ──『バイロケーション』安里麻里監督インタビュー

バイロケーション

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第17回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞し新感覚ホラーワールドを作りあげた若手ホラー作家・法条遥の同名小説を、水川あさみ主演で映画化した『バイロケーション』。本作は、自分と全く同じ姿形・個性を持った異物“バイロケ”が自分の人生に侵食してくる恐怖を描く、究極のサスペンス・ホラー。メガホンをとるのは、『リアル鬼ごっこ』シリーズの若手女流監督・安里麻里。オリジナルの「表」バージョンだけでなく、全く異なる結末が用意された「裏」バージョンの連続公開でも話題の本作。1月18日の公開を前に、安里監督に作品のテーマと、出演者の魅力を伺いました。
テーマは二つの人生を持った一人の女の悲劇 ──『バイロケーション』安里麻里監督インタビュー
──原作は日本ホラー小説大賞の受賞作ですが、映画化のいきさつを教えてください。
監督: 最初は、小林(剛)プロデューサーに原作小説を紹介されて、「一緒に企画開発してくれないか、読んでみて良ければ監督・脚本をやって欲しい」と言われました。原作を読んでみると、映像化するにはとても難しくてハードルが高いって思ったんですけど、すごく可能性を感じて、自分が撮る意味もあると思ってチャレンジしました。
──原作は本当に複雑なストーリーでしたが、映画化するうえではどんなところに重きを置いたのですか?
監督: 原作は、もう一人の自分(バイロケーション)が出てきたら、それを許せるかどうかがテーマだと思うんです。でも、読み終わってみて一番大事なポイントを考えた時、二つの人生を持った一人の女の悲劇だと思ったんです。お互いがお互いになりたかったのになれなかった悲劇。これがテーマだと思っていて、そこからどう伏線を張りトリックを作っていくか、どうやってサブキャラを動かすかと逆算して作っていきました。「バイロケーション」が怖い存在だということは、サブキャラクターが体現しているのですが、複雑になってしまう部分は省いて純粋化して、逆に補足しなければならない部分を追加しました。
──バイロケというもう一人の自分が現れて、殺されるかもしれない…という怖いホラーだとばっかり思って観ていたら、「女の人生の選択」を考えさせられるもので、衝撃的でした。
監督: 皮肉な話ですよね。観たくない現実もある、あそこで一歩踏み出していれば…でも、それもこれも全部自分だと。脚本を書いていて本当に痛かったんですが、そういう部分も含めて、やりがいがある物語だなと…。ちょっとドSなんです(笑)。
──本作は、オリジナルバージョンの「表」と、別エンディングの「裏」バージョンが公開されますが、最初から二つのエンディングを考えていたのですか?
監督: 企画の途中で出てきました。小林プロデューサーが、仕掛けとして「映画自体にもバイロケが発生しても良いんじゃないか」と出した案なのですが、まさか実現するとは(笑)。
──監督自身は「表」と「裏」、どちらが好みですか?
監督: もちろん「表」です。最初に掲げたテーマでもあるので、あくまでも「表」がメインだと思っています。
──「表」と「裏」で見終わった後の印象が全く変わりますが、男性と女性で意見が別れそうですね。
監督: 主演の水川さんも「表」が好きと言っていましたが、女性はどうやら「表」バージョンが好きという人が多いです。男性は、可哀相すぎて観ていられないみたいです(笑)。
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──主演に水川あさみさんを起用したのは?
監督: 水川さんってクールビューティーというか、芯の強さを感じる女優さんで、自分で頑張って頑なに生きているという印象があって、そんな方にやって頂きたいと思っていました。上手く言えないけど、女性らしい柔らかさやおおらかさを持った方だと、いやらしさが出てしまうと思ったんです。自分が二人の人間なってしまう役を演じるのって、やはり水川さんのような強い女性という印象のほうが泣けるんです。

お顔が端正で綺麗なので、どこまで汚れた姿に落とせるか難しいな…って思っていたけど、本人はすごいやる気で、全シーン“くま”メイクで頑張ってくれました。追い詰められた感じだからこそ出る美しさが撮れたかなと思います。その辺はガッツポーズでした(笑)。
──水川さんは「自分が二人いる」という難しい役柄で戸惑いもあったと思いますが、撮影中はかなり話し合ったのですか?
監督: 撮影前も撮影中もたくさん相談しました。二人が存在しているシーンでは、水川さん自身の感情を優先して、どちらから演じるか決めています。私自身も、脚本を書いているので頭の中で出来ているものがあるんですが、実際に生身の人間がそこに立って喋って初めて違和感を感じたりするので、果たしてこれが正しいのか、その場で水川さんと迷いながら作ったシーンもありましたね。「指輪」のシーンなんかは、二人の女が自分のことをどこまで言うか、言わずに裏設定にすべきか、3日ぐらい悩みました。
──Kis-My-Ft2の千賀健永さん、ジャニーズJr.の高田翔さんは、原作とは違う設定になりましたね。
監督: 映画に登場するキャラクターは、全員が背景に重いものを背負った役柄なんですが、千賀君が演じた御手洗巧は、そのなかで一人だけピュアな男の子なんです。一生懸命で真っ直ぐすぎて、巻き込まれちゃって人殺しだってしてしまうような。淡々とした静かな人間ドラマの中で、アクションシーンを請け負ってもらう動的なキャラクターとして、若い大学生にしたかったんです。千賀君って、私からみると“いい子”っていうオーラがあって、どんなに今風な“チャラさ”を作ったとしても、ピュアさや人のよさが滲み出てしまう(笑)。そういう意味でキャスティングしました。

高田君が演じた加賀美榮は、原作だと大学生なんですけど、映画的には中途半端な気がして、見た目には制服を着た子供のキャラクターにしたかったんです。皆がバイロケに翻弄されて大騒ぎしているなかで、10代なのに達観している特別な存在として入れました。彼には裏設定があって、シーンとしては撮影していたんですが、尺の都合上カットしてしまいました。DVDには収録されるかもしれません(笑)。
『バイロケーション』 『バイロケーション』
──サブキャラクターのなかでも、酒井若菜さんが演じた門倉真由美役は、難病の子供を持つ主婦で、女性としては辛い設定ですね。
監督: 原作を映画化するときに、どうしたら色んなハードルを解決できるのか悩むんですけど、門倉真由美のキャラクターを全く変えた時に、初めて物語が見えたというか、動き出したんです。キャラクターをひとつ掴むだけで、こんなに話がすんなり解決するんだ!って思ったほどです(笑)。バイロケの存在、出現する意味、怖さ、そして悲哀。バイロケを一番体現したキャラクターになっていると思います。
──最後に、これから観る観客へ向けてメッセージをお願いします。
監督: ただ怖いだけじゃない映画なので、特に女性に観て頂きたいですね。人生の選択を突きつけられる映画でもあって、自分ならどうするか、どっちなら許せるか、そういうことを考えながら楽しんで頂けると思います。
2014年1月17日
『バイロケーション』
2014年7月16日(水) Blu-ray&DVD リリース!