ニュース&レポート

手紙を通して亡き母と対話する、一風変わった“バディームービー” 『バースデーカード』吉田康弘監督インタビュー

バースデーカード

  • Facebookでシェアする
  • ツイートする
橋本愛と宮崎あおいが娘・母役で競演する映画『バースデーカード』が、10月22日(土)より全国ロー ドショー。誕生日に毎年届く、亡き母からの“バースデーカード”。それは、最愛の娘の成長を見守ることが出来ないことを悟った母が、ありったけの愛を込めて綴った未来の娘への“手紙”。20歳を迎える最後の手紙に綴られていたのは、初めて知るママの真実。そして、世界一しあわせなサプライズが待ち受けていた…。メガホンをとるのは、『キトキト!』『旅立ちの島唄〜十五の春〜』の吉田康弘監督。映画の公開を前に、吉田監督にお話を伺いました。
手紙を通して亡き母と対話する、一風変わった“バディームービー” 『バースデーカード』吉田康弘監督インタビュー
──亡き母から贈られるバースデーカードを通して成長する娘。遺された家族の物語はどんな発想から生まれたのですか。
監督:余命を悟ったお母さんを描いたノンフィクションのお話をプロデューサーから渡されたのがきっかけです。亡くなった母と遺された娘が、手紙を通して長い年月をかけて対話する。病気や死を扱いながらも暗くならず、一風変わったバディームービーのような物語ができたら面白いんじゃないかと思いました。
──これまでの作品でも“家族”をテーマに撮られていますよね。
監督:シナリオを書いていた2011年の、震災の4日前に僕に子どもが生まれました。なので、なおのこと、亡くなってからも親子の縁が続くこと、子どもの人生に関わり、バースデーカードを通して子どもと接することが出来るのは素敵だなと思いました。これまでの作品では、子どもの目線から描くことが多かったんですが、娘が生まれたことによって、親からの視点、アンサーのようなかたちも描けたかなと思います。
──バースデーカードは主人公が11歳から20歳になるまで贈られます。女の子の1年ごとの出来事や母親からのメッセージはどのように考えていったのですか。
監督:基本的には、前向きな冒険物語で、どんな手紙が来るのかワクワクするような展開にしたんですが、途中のシナリオを橋本愛ちゃんに読んでもらった時に、「紀子は少し良い子過ぎる気がする。反抗期があってもいいんじゃないか」と言われて、なるほど!って思いました。同性ならではの発想というか、手紙を読みながら、お母さんの言うとおりにして、17歳・18歳の誕生日で、ロードムービー的な展開があり、母の過去を知れば知るほど自分との違い、劣等感も感じたりして、ちょっと遅れてきた反抗期を19歳に入れてみました。それによって、父との衝突や、父の思い、父と母のエピソードも盛り込むことが出来ました。いろんな人の意見やヒントから、臨機応変にシナリオを書き直して、物語に肉付けしていった感じでした。

あと、紀子は内気な女の子なので、手紙を通してそっと背中を押すような感じもあります。14歳でキス指南はちょっと早いですが、ユーモアも交えながら少し背伸びをさせるお母さんの思いを描きました。
──母親役に宮崎あおいさんを起用したのは?
監督:お芝居はもちろんのことですが、透明感があり、実写映画では“母親”役というイメージがまだ定着してないと思ったので、今回の役はとても新鮮なキャスティングになるんじゃないかと思いました。実際に演じてもらうと、母性あふれるお芝居で、子どもへのまなざし、さりげなく手を握るとか、僕からお願いしなくても自然に母親になりきって演じてくれました。手紙の文面や細かいニュアンス、読み方も、宮崎さんが腑に落ちる言い方を確認しながら撮影しました。
──紀子を演じた4人の女優さんが、それぞれ面影が似ていました。幼少期を演じた2人(新津ちせ・篠川桃音)は、宮崎あおいさんの雰囲気もありましたね。
監督:紀子役はまず橋本愛ちゃんがいて、彼女に繋がっていく過程は、「似ていること」を条件にたくさんオーディションしました。お芝居よりも雰囲気を重視して探して、何度もリハーサルして芝居の練習をした感じですね。『6才のボクが、大人になるまで。』という映画がありますが、同じ役者が12年間を演じるのは無理だとしても、そのイメージは目指したいと思いました。普通の女の子の人生を切り取る映画だから、出来るだけ違和感なく、本物の家族を見ているような、紀子の成長を観客も一緒に見届けるような映画にしたいと思ったので、出来るだけ引っかかりがないように、めっちゃ頑張りました(笑)。ちょっとした仕草とか紀子らしさは気をつけましたが、結果的に宮崎さんにも似ているというのは嬉しいですね。
──本当の家族のように見せるための工夫は、ほかにどんなものがありましたか?
監督:愛ちゃんは、自分の出番がない時でも撮影現場にお芝居を見に来ていました。紀子が子どもの頃にお母さんに言われた言葉、お母さんと過ごしたことを、自分の記憶として留めておきたいという思いがあったようです。僕がリクエストしたものでもなく、この映画が何を目指しているのかをキャスト・スタッフみんなが理解してくれていました。
──父親役を演じたユースケサンタマリアさんは、穏やかで素敵な父親でしたね。
監督:父親役はものすごく重要でした。年齢層も幅広く演じてもらう必要があったので、もともと芸達者で年齢不詳な感じのあるユースケさんがいいと思いました。ユーモアがあって、悲しい話でも悲しくなりすぎず、ちょうど良いバランスがとれる。息子役の須賀健太君とのやりとりもアドリブ満載で、2人とも伸び伸びと演じていて、家族の良い空気感が出ていましたね。期待以上と言っては失礼ですが、受けの芝居が素晴らしくて、いろんなシーンでセリフを受けたときの表情、まなざし、セリフの返し方に、同性ながらキュンキュンして見ていました(笑)。この映画は、母と娘の物語が軸ですが、実は父親目線でも評判が良くて、「おじさんも泣かされた」という感想をもらっているので、男性の方も観ていただける映画になっていると思います。
──ロケ地は長野県・諏訪市でしたが、さわやかな物語にぴったりでしたね。
監督:どこからでも諏訪湖が見えて、湖面にいろんな表情を写しだしていて少しスピリチュアルな場所でもあります。最初は架空の町を舞台にしようと思ったんですが、惚れ込んでしまって、諏訪湖周辺で撮影しました。家族がピクニックで行く高原は、エアコンで有名な霧ヶ峰高原ですが、その名の通り年中霧に包まれている場所です。“家族だけが知る秘密の場所”として記憶に焼き付くものにしたかったので、スケジュール的にもリスクは高かったけど、勝負に出ました。撮影準備中は霧が立ちこめていたんですが、だんだん晴れてきて、見事な青空になり、CGのような雲まで出てきました。でも合成じゃないです(笑)。

お母さんと家族のシーンを撮った後、10年後、20歳の手紙を読むシーンもあったんですが、曇天の中で厚い雲の下からもう一度太陽が出てきてくれて、紀子がその光をふと見上げるシーンが撮れました。結果的に、母親が病室で手紙を書いているシーンとリンクすることになり、偶然の産物で良いシーンが撮れたと思います。ロケーションが味方してくれて、映画の神様に感謝しましたね。
──最後に、この映画を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
監督:どこにでもいるような家族を描いています。普通の人々の人生の中に、たくさんのきらめきや、素敵な瞬間があるということを、この映画を通して感じてもらえると思います。自分の家族のことや、今ある幸せに感謝し、温かい涙を流してもらえる映画になっていると思いますので、是非劇場に足を運んでください。



※「宮崎あおい」の「崎」は「大」が「立」になります。
※「吉田康弘監督」の吉は「土」に「口」になります。
環境により正しい文字が表示できないため、代用文字を使用しています。
2016年10月20日
『バースデーカード』
2016年10月22日(土)全国ロー ドショー
公式サイト:http://birthdaycard-movie.jp