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家族が立ち止まってしまう秘密ならば、明かされるべき ── 『ミモザの島に消えた母』ローラン・ラフィット インタビュー

ミモザの島に消えた母

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『サラの鍵』原作者タチアナ・ド・ロネのベストセラー小説を映画化した『ミモザの島に消えた母』が、23日(土)より公開。本作は、30年前に謎の死を遂げた母とその裏に隠された「禁断の秘密」をめぐり、真相を追い求める息子、目を背ける妹、頑なに口を閉ざす父と祖母の愛憎劇と、秘密があぶり出されるにつれ救いを得ていく姿を描いた珠玉のサスペンス・ドラマ。主人公・アントワーヌ役には、『クリムゾン・リバー』『アンタッチャブルズ』のローラン・ラフィット。人生の惑いから脱却するため、暗い過去と必死に向き合うアントワーヌを力強い演技で魅せる。映画の公開を前に来日した、ローラン・ラフィットにお話を伺いました。
家族が立ち止まってしまう秘密ならば、明かされるべき ── 『ミモザの島に消えた母』ローラン・ラフィット インタビュー
──監督は、アントワーヌというキャラクターを、あなた自身をイメージして書かれたそうですね。まるでラブレターのようで、俳優冥利に尽きるんじゃないかと思いますが、脚本を受け取ってどう感じましたか?
ラフィット:私はラブレターという感じでは捉えなかったな(笑)。最初に脚本をもらった時にそのことを聞いていたので、逆に、気に入らなかったらどうしようって思ったんだ(笑)。もし私が、第3か第4候補であったら気にせずに読めたけど、自分を想定して書いてくれた脚本を、自分が気に入らなかったら大変なことだからね。ただ、実際に読んでみてすごく気に入って、監督が私をイメージしてくれた主人公に、私も上手くはまれるイメージができたんだ。
──監督とは何作か一緒に仕事をしているのですか?
ラフィット:12年前に彼の初監督作品(『彼女の人生の役割』(04))で、小さな役を演じたんだ。一緒に仕事をしたのは12年ぶりだけど、その間も互いに今どんな作品に関わっているのか気にしていた。私は彼の作品の、シンプルでありながら繊細で考えられているところ、ストーリーを中心にした演出が魅力だと思う。
“『ミモザの島に消えた母』" “『ミモザの島に消えた母』"
──原作のある物語ですが、原作を読み込んでアントワーヌというキャラクターに近づいていったのですか?
ラフィット:原作は読んでいないんだ。読む必要もないと思った。なぜなら、監督が作品のストーリーを語るものだから、監督の語りたいストーリーとそのヴィジョンに私が乗っかる必要があると思っているんだ。彼が要求することは明確で、自分が何を撮りたいのか完全に把握しているからね。だからこれといって役作りはしていないけど、気をつけた点は、撮影が順撮りではないので、その時のキャラクターがどんな心境にあるのか、物語の継続性を保つために、脚本を何度も読み直して、その時の感情を把握して演じたんだ。
──アントワーヌというキャラクターと、自身との共通点はありましたか?
ラフィット:共通点を見いだすならば、言外の部分が好きではなくて、物ごとははっきり伝えた方がよいと思っている点。ただ、真実を明かすことは必ずしも正しいこととは限らないけどね。
──確かに、登場人物の一人一人が、一つの秘密を抱えたことで30年もの間苦悩します。後半のクリスマスの騒動では、みんなに感情移入できてしまい、誰の味方すればいいのかわからないくらいでした。
ラフィット:登場人物全員に感情移入してしまうのはわかる。一家の祖母は、家族を操作するために秘密を持ったわけだが、彼女の気持ちもまたわかる。おそらく真実をどう捉えるかは、世代によって違うんだと思う。アントワーヌの場合、フロイトなどの精神分析の考え方にも親しみがあるので、真実との関係に対して、祖母の考え方とは違う。この映画は世代間の考え方の衝突でもあると思う。
──まさに世代間の捉え方の違いを感じました。秘密にして家族を守ろうとした祖母と父、そのために30年間も前に進めずにいた兄妹。難しい秘密だったと思います。
ラフィット:アントワーヌは、10歳の頃の母の死について言外の意味を感じ取り、その沈黙がのしかかっている。この家族は、父と祖母の間で定められた沈黙の掟に支配された一家なんだ。互いにあまり口をきかず、ある種の話題はタブーになっている。アントワーヌを不安にするものが強くなり過ぎたとき、彼はついにその秘密に向かい合うことを決心し、それほど底が深いとは想像もしていなかった箱を開けるんだ。

そして真実を追求して父親にぶつけるが、それは秘密があるがために家族が同じ問題で立ち止まって前へ進めなくなるからだ。そんな秘密ならば、私は打ち明けるべきだと思うよ。サイクルを破らなければ次へいけないような秘密なら、明かされるべきものだと思う。
“『ミモザの島に消えた母』"“『ミモザの島に消えた母』"
──妹のアガットを演じたメラニー・ロランとは初共演ですね。本当の兄妹のように素敵でした。
ラフィット:撮影前から知っていて、実際に撮影して親しくなっていったんだ。彼女はイメージ的には脆い感じがするけど、実は芯が強い女性で、そのバランスが素晴らしい。テクニカルな女優さんというよりも、繊細でナチュラルな感じが彼女の魅力だと思う。しかもすごく面白いんだ!撮影中にもたくさん笑って、仲良くなりすぎて、恋人同士に見えたら困るねって言ってたほどなんだ(笑)。
──ロケ地のノアールムーティエ島は美しい場所でしたね。島をつなぐパサージュ・デュ・ゴワという海の中道は、見え隠れする道と映画のテーマがマッチしていて素晴らしかったです。
ラフィット:あの島も道も、作品の立派な登場人物なんだ。たとえばバルザックの作品もそうだが、どんな環境なのか細かく描写して、場所やロケーションに重要性を持たせるのは素晴らしいよね。ゴアの道はミステリアスで危険だけど、美しい場所。家族の秘密とも関連性があり、登場人物の心情にあわせて、風景も崩れていく。そんな関係性があるのもこの映画の魅力だと思う。
──実際に渡ったんですよね。
ラフィット:もちろん。でも本当は別の橋もあるんだ。最近できたものだけど、ちょっと遠回りになる。島へ近道するならばあの道だね。
──あそこまで行ったら、実際に渡ってみたいですね!
ラフィット:まさにその通り!あの道を渡るべきだ(笑)


2016年7月19日
『ミモザの島に消えた母』
2016年7月23日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー