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現代の監視社会は自らが招いたもの ── 映画『ザ・サークル』ジェームズ・ポンソルト監督インタビュー

ザ・サークル

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全米で2013年に発行され大ベストセラーとなった、デイヴ・エガーズの同名小説をもとに描いたサスペンス・エンターテイメント『ザ・サークル』が、11月10日(金)より公開。本作は、遠くない未来に待ち受けるSNS社会の光と闇をスリリングに描ききったサスペンス・エンターテイメント。憧れのSNS企業<サークル>に採用され、新しい環境に期待を膨らませる主人公メイには、「ハリー・ポッター」シリーズ、『美女と野獣』のエマ・ワトソン。先進的な考えを持ち、全社員から愛される<サークル>のカリスマ的リーダー・ベイリーを、大ベテラン、トム・ハンクスが演じる。映画の公開を前に、メガホンをとったジェームズ・ポンソルト監督が来日。直撃インタビューに応じてくれました。
──原作者のデイヴ・エガーズさんは、今作の脚本にも参加されていますが、映画化にあたってどんなテーマを共有したのですか。
監督:この作品の核にあるのは、プライバシーと監視社会。小説にはもちろんサブプロットもあり、テクノロジーや現代社会の問題にも触れ、キャラクターももっと多く出てくるけど、映画ではこの2つに集中しました。自分の行動が逐一モニターされ、録画され、シェアされる。こういった社会は果たして自由だと言えるのか?そして、今の社会が既に監視社会だと言うならば、実は、これは政府や体制側から強要されたのではなく、僕たち自らが創りあげてしまったもの。スマホのアプリやカメラも、自分たちに便利だからといって、自分の意志で自分の情報を渡している。何処に行ってもカメラがあるし、互いに互いを監視し、さらに他の人をチェックすることを促している。自分たちの意志でこの世界を創りあげてしまい、その中で何とか生きていくことになりました。
──1人の人間が24時間監視されているという意味では、20年前の映画『トゥルーマンショー』を思い出しました。あの作品では、主人公がテレビを通して監視されていました。
監督:昔ならば妄想型陰謀論のなかで、こういう未来があるかもしれないと提示していたけど、あくまでそれはフィクションに過ぎなかった。でも、皮肉にも現代では、さっき言ったように、僕たちは自らの意志で24時間監視される状況を招き、その奴隷になっている。スマホのようなデバイスは安く手に入れられるし、素晴らしい大学に進学しなくても、Googleで検索するだけで人類の英知にアクセス出来る。『トゥルーマンショー』における“プロデューサー”や、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」の“ビッグ・ブラザー”ではなく、今は、ポケットに収まるコレ(スマホ)が神になっているよね。デバイスを神のように扱い、手放せなくなった一方で、見えない檻に自分を閉じ込めてしまったのかもしれません。
──原作をビジュアル化する上で困難だったこと、ワクワクしたことは?
監督:小説を読んでいる時に心乱されたのが、ネットやSNSをやっている人は感じていると思うけど、ものすごい情報量が自分のもとにやってくること。メールでもTwitterやFacebookでも、それに自分自身が応えなきゃって思い始めると、ものすごく辟易してしまう。その感じをどうやってビジュアルとして表現できるか考えました。メイの場合は仕事柄、なるべく早くレスポンスしなければいけない。そこで思いついたのが、メッセージがポップアートのようにポンポンと出て消えるという表現です。あのメッセージには英語じゃないメッセージもあるけど、全部が読めないデザインになっているんです。目を通せないくらいの量が一気に押し寄せてくるというイメージです。

あと、デイヴの小説の中では、<サークル>が素晴らしい筆致で描かれていて、大学のキャンパスのようでいて、カルト的で魅惑的で、何でも必要とすれば叶えてくれるユートピアのような場所でした。実際に僕の友達がGoogleやApple、Twitter、Facebookなどで働いていたので、プロダクションデザイナーと一緒に色んな企業に足を運んで、どんなエネルギーを感じるのか、皆幸せそうなのか、賑やかなのか静寂なのか、白黒なのかカラフルなのか、その雰囲気を細かく研究しました。建築に関しては、今後10〜20年の間に作られるであろうデザインを参考にしました。不思議なことに、スイスでも日本でも、北カリフォルニアでも、人間が思う“理想郷”って実は同じような姿をしているんです。自然と共生していて開放的で、去りがたくなるような雰囲気。企業のトップとしては、社員がもっと働いてくれるように、居心地の良い場所にするだろうと考えながら作りました。
──エマ・ワトソンさんとトム・ハンクスさんの共演も話題です。2人をどのように演出したのですか。
監督:本当に最高でした。トムは、僕が子どもの頃から大好きな役者だったし、エマも「ハリー・ポッター」を観ていて、素晴らしい役者だと思っていました。2人とも役柄に対して知的なアプローチをするタイプです。1人の人間としても素晴らしく、誰からも愛される役者だと思います。彼らは常に衆目にされされていて、その中で生活することでユニークな感受性を持っていました。普通に友人と食事をするだけでも、自分の行動が“見られている”と意識せざるを得ないし、それが自然に身についています。普通なら人目に触れないところに行きたいと思うかもしれないけど、彼らはセレブレティとしてのステイタスを良い事のために使っている。その姿にインスピレーションを感じました。
──エマ・ワトソンさんが演じたメイの父親役でビル・パクストンさんが出演していましたが、残念ながら遺作となってしまいました。
監督:心優しくて、現場の誰にもリスペクトを払う素敵な方でした。彼自身も映画監督であるし、映画作りについてよく知っていて、アートの収集家でもありました。映画という芸術に対してすごく愛情を持っていて、夜の10時にテキストメッセージを送ってくれて、古い映画の話をしたりしました。他の人とも話したけど、誰よりもエネルギーをもち、ポジティブな人だったと口を揃えていました。彼と同じくらい素晴らしいキャリアを経験出来たらと思うし、自分のやっている仕事を彼ぐらい愛しながら生きて行きたいと思っています。
──メイが、<サークル>の新しいサービスについてスピーチしますが、“話のうまいカリスマ”に人々が動かされてしまうのがちょっと恐かったです。
監督:難しい問題ですね。アメリカでは現に、ポピュリストの権化とも言えるリーダーが、大統領として立っています。トランプ大統領の場合は、SNSの力を使って当選したとも言えます。しかしTwitterを通して罵詈雑言を発信するし、北朝鮮のリーダーと子供同士の喧嘩のようなことも始める。これによって1つの地域がものすごく不安定な状況に陥ってしまうこともあり得るのにね。

SNSは、その人物の延長線上にあり、使うことによって最高の自分と最低の自分を表現できますが、対面であればどう振る舞うのか、同じくらいの愛情や思いやり、良識を持つべきだし、使用頻度も適度な頻度を意識していくべきだと思う。何かを悪く言うことで人気を獲得しようとするのは、過去の例からも良くないことだと解っているけど、つい聞いてしまう。歴史はやはり繰り返してしまうのかもしれない。そこにテクノロジーが加わると問題がさらに大きくなってしまうのかもしれません。
『ザ・サークル』ジェームズ・ポンソルト監督インタビュー
──映画では、SNSを取りまく問題点を指摘していますが、一方では、SNSのおかげでマイノリティが自分の声を発信することが出来たりします。SNSの良い使い方とは?
監督:良い使い方はたくさんあると思います。例えば“アラブの春”では、国営メディアには取り上げられない声を若者たちがあげることができた。大事件や危機にさらされている時にもSNSが大活躍します。身近なことでも、愛する人と距離が離れていたとしても常に連絡が取れる。ちなみに僕は、妻とFacebookで出会って、今2人の子供がいるんです。

ただ、さっきも言ったけど、SNSは自分の延長線上と捉えて、自分が言ったことの責任は常に意識して使わなければいけないと思う。本人を前にして言えないことは、ネット上でも言わないようにする。人は無名になったときに不親切になり、冷酷な事も言えてしまうからね。忘れてはいけないのは、リアルライフで人間関係が上手くいっているかどうか。SNSは副次的なものであって、実際の人間関係の代わりにはならないと思うから。


2017年11月7日
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『ザ・サークル』
2017年11月10日(金)TOHO シネマズ六本木ヒルズ
公式サイト:http://gaga.ne.jp/circle/