ニュース&レポート

ブレーキと思ったらアクセルだった。そんな車に乗った気分〜『冷たい熱帯魚』吹越満インタビュー

冷たい熱帯魚

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイートする
  • Facebookでシェアする
愛のむきだし』『紀子の食卓』など衝撃的なテーマの作品を世に送り出し、国内外で高い評価を受ける園子温監督の最新作『冷たい熱帯魚』。実際に起こった事件をモチーフにした本作は、小さな熱帯魚屋を営む男が、一見人の良さそうな男によって猟奇殺人事件に巻き込まれていく様子を圧倒的な勢いで描いた問題作。本作で、ひょんなことから生き地獄を味わうことになる主人公・社本を演じた吹越満にインタビュー!自身の演じた役柄や、園監督にまつわる仰天エピソードなどを語って頂きました!
──出演の経緯ですが、監督によると、「社本役に吹越さんを…と推していたら吹越さんが偶然そこにいた」とのことですが…
吹越:そうなんです。下北沢の喫茶店で、僕は別の打ち合わせをしていたんですけど、「園さんがいるな〜」と思ってはいたんです。でも、打ち合わせ中だったので声を掛けず、帰り際に挨拶をしたら、園さんが非常に驚いていました(笑)。ちょうど『冷たい熱帯魚』の打ち合わせをしていたらしく、「来年の1月、どうしてますか」と仰られたので「空いてます」と答えたんです。
──どんなストーリーや役柄かも聞いていなかった?
吹越:そうですね。園さんの作品では、『愛のむきだし』で1シーン、『ちゃんと伝える』で2日分ぐらいのロケだったので、その程度に考えて、「あ、いいっすよ」と言ったんですけどね(笑)。後で脚本を頂いて、「さて、俺は何をやるんだろう?」と見たときに、主役だったのでビックリしました。
──映画は衝撃的な内容でしたが、脚本を読んだ時はどう思いましたか?
吹越:ビックリしましたね。最初はどういうものになるか解らなかったんです。『愛のむきだし』の次だとすれば何となく解るけど、その次に『ちゃんと伝える』という作品が入っていて、それが意外な流れでしたから。でもとにかく、いい意味でヒドイものをやりたいんだというのは理解できました。

園さんは、海外の映画祭を前提に考えていたので、「最初からR-18になっても構わない、日本国内に向けてちょっと抑えることなしで行く」と仰っていたので、凄いなと思いました。そういうものに参加したことがなかったので、是非やりたいと思いましたね。

完成した作品を観ると、僕としては監督の足を引っ張ることにならなくてよかったという思いが強いんですけど、だからこそ、「ひょっとしたら、もっとやってもよかったな?」という欲が出るくらいの感じの内容になってましたね。
『冷たい熱帯魚』 『冷たい熱帯魚』 『冷たい熱帯魚』 『冷たい熱帯魚』
──吹越さんが演じた社本は、前半と後半で変化しますね。役作りではどんな工夫をしましたか?
吹越:でんでんさんの役が激しい「動」だったので、対比を考えて、前半は僕は何もしないぐらいがお互いに際立つだろうと思っていました。でんでんさんは裏がある役、僕は変化する役なので、変化の前後で度合いを大きく見せるためにもそうしていました。

細かいところでは、「眼鏡」ですね。地方都市の国道沿いの熱帯魚屋が、ちょっといい眼鏡をかけている…ってどうだろう?と思って、監督と話し合いました。物語の後半では眼鏡がなくなり、社本が変化する鬼門のようなものとして考えていました。
──社本という男を、男性としてみてどう思いますか。
吹越:気持ちはわからないでもない…かな。完璧な善人ではなく、結構ずるい。どっちかっていうと僕は村田より社本に近いかな(笑)。怖がりだし、いざという時は何も出来ないかもしんないな(笑)
──社本のように豹変してしまうこともある?
吹越:子供の頃から、「刃物を持たせるな」とは言われてました(笑)。気が短いんですけど、それは日常的によくあることの範囲でしたから、あそこまで大きく変わることはないですね。

でも、社本の場合、本人が変わったと言うよりも、ファンタジーの枠組の中で考えて、村田が乗り移ったんだと僕は思っています。たぶん、社本本人は気づいてないんですよね。
──村田を演じたでんでんさんと、その妻役の黒沢あすかさんは強烈でしたね。共演してみていかがでしたか?
吹越:でんでんさんとは、何回かお仕事させて頂いていたんですけど、僕のことを"まん(満)ちゃん"と呼ぶんですよ(笑)。そう呼ぶのは、でんでんさんだけなんですけど、そういう所に親近感が沸くんですよね。人の良いおじさん役が多くて、「悪役をやりたかった」と仰っていたので、そんな気持ちが表に出てたから、本当に凄かったですね。見てるだけで面白い方です。

黒沢さんも、人前に晒せないくらいに体の線が崩れていたとご本人が話してましたが、役のために体を造りこんでいらした、そういう熱意とかパワーが凄いと思います。完璧に役柄に入っていて、鬼気迫るものがありましたね。
──園監督とは3作品目ですが、今回ガッツリと一緒にやってみて、驚いたこと、意外だったことはありますか?
吹越:リハーサルで全シーンを4〜5日でやったんですけど、追加でやりたいという園さんからの提案で、何日か休んだ後にもう一度集まったら、園さんの眉毛がないんですよ(笑)。そういうのを見ると、「あ、園さんだったらやりかねないな」と思ってしまう(笑)。何があったのか、酔っ払って剃ったのか分からないんですけど、当たり前に見えるので、「眉毛、どうしたんですか?」って聞けないんですよね。数日経って、やっぱり気になるから聞いてみたら、「クランクインの前に気合いを入れるつもりで剃ったんだよ」って(笑)。しらふになって後悔したみたいですけど、それがちょっと可愛いというか。園さんらしいなと思いました。

お酒飲むと若干変わりますが、普段はおとなしいというか、ちゃんとしているんですね。変な言い方ですけど(笑)。作品のイメージとはギャップがありますね。
──撮影現場での園監督はいかがでしたか?その場の気持ちで変化する、アーティスティックな印象を受けますが…
吹越:もちろんそういう部分もありますが、それは作品のためなので、良いと思います。基本的には冷静に芝居を重視して撮っている人で、現場では、「今だ!」と思った瞬間に、照明のセッティングがまだできていなくてもカメラを回そうとしていましたね。周りのスタッフがその勢いにやっとついて行く…そんなシーンもあったし、何度も何度も粘り強く撮るということもある。その都度変化していく、監督自身が作品のような人ですね
──『冷たい熱帯魚』は、既に海外の映画祭でも反応が良かったようですね。
吹越:ヴェネチアでは、自分の出た映画を観て初めて疲れましたね。最後のスタンディングオベーションも凄かったです。僕らは会場の真ん中ぐらいにいたんですけど、みんなその場で拍手しているんじゃなくて、わらわらと近づいてくるんですよ(笑)。でんでんさんが映画が終わる直前にトイレに行っちゃって、スタンディングオベーションの終わりかけに戻ってきたのですが、そのおかげか拍手が伸びていましたね(笑)。面白い体験をしました。
──最後に、これからご覧になる方にメッセージをお願いします。
吹越:ブレーキかと思ったらアクセルだった。そんな、ワケが分からなくなっている車に乗っちゃった気分になる映画です。作りモノをなめるなよ!という感じですので、是非観てください!
2011年1月21日
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
『冷たい熱帯魚』
2011年1月29日(土)より、テアトル新宿ほか全国順次ロードショー
公式サイト:http://www.coldfish.jp/