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テレンス・ハワード『デッドマン・ダウン』オフィシャルインタビュー

デッドマン・ダウン

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復讐のために犯罪組織に潜り込んだ男と、自分の未来を奪った人物への復讐を誓う女。2つの復讐が交差するサスペンス・アクション『デッドマン・ダウン』。コリン・ファレル演じる主人公ヴィクターは、妻子を闇組織に殺害され復讐のために組織に潜入している。その敵役である暗黒街のボス・アルフォンス役を演じたテレンス・ハワード。今年の日本公開作が『ムービー43』『ランナウェイ/逃亡者』に次いで既に3作目となる本作で、今までのイメージを覆す悪役を演じた彼に、本作について振り返ってもらった。
テレンス・ハワード『デッドマン・ダウン』オフィシャルインタビュー
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──本作への出演を決めた理由は?
ハワード: この映画に出演したいと思った要素は3つあった。1つ目は、コリン・ファレルと再共演できること。僕たちはブルース・ウィリスも出演した『ジャスティス』('02)という映画で共演し、コリンのキャラクターを掘り下げる才能を目の当たりにして僕は大きな影響を受けた。彼はキャラクターになり切るだけでなく、そのキャラクターの目に見えないところにある多くの異なるレイヤーを発見していった。しかも無意識にやっているんだ。彼はいつも全員が一緒になった大きな弧を見ながら素晴らしいアイデアを打ち出してくる。まるでオーケストラのようにね。バイオリンだけを演奏するのではなく、オーケストラ全体を思い描いているんだ。だから僕は友人のコリンともう一度共演したくてたまらなかった。

2つ目は、ニールス・アルデン・オプレヴ監督だ。彼はスウェーデンのオリジナル版『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』の監督だ。想像力に富みクリエイティブな精神に対する確かな目をもつ人を見つけたら、その人と一緒に仕事をするチャンスが欲しいのは当然さ。彼の仕事の仕方はまるで催眠術にかけられたみたいだよ。事実をシンプルに伝えるだけじゃなく、人の配置の仕方も完ぺきだ。通常僕は監督のところに行ってシーンで自分がすべきことを尋ねたりしないんだけれど、ニールスのところにはしょっちゅう行ったよ。彼の洞察力はそれほど素晴らしかったんだ。

そして3つ目は、長い間善良な男たちを演じてきたから。時々暗黒面が支配する場所に踏み込んで、別の環境にいる自分を見てみる必要がある。アルフォンスのことを説明するには、ハリール・ジブラーンの物語『The Criminal』を引き合いに出すのが一番いいと思う。正しい方法で全てのことをやろうとした若者の話なんだ。彼は学校に行こうとして、お金が足りないと言われる。仕事が必要だが、教育を受けていないから仕事にもつけない。途方にくれた彼は物乞いするが、人々から『お前は屈強な男なんだから、仕事をすべきだ』と言われる。怒りの頂点に達した彼は街に出掛けて行って、史上最悪の事件を起こしてしまうんだ。彼は『僕はドアをノックしたが、僕のためにドアが開くことはなかった。だから僕は自分がほしいものを奪い、世間の喉元をひっつかんで、何もかも息の根を止めてやるんだ』と言う。親切で心根の優しい人間が、思いやりに欠けたために犯罪者に変わってしまうという人間性に対する悲しい話だ。そしてそれがアルフォンスだ。彼は、幼い少年時代に『鳩を殺したい』と言うような人間じゃなかった。たくさん愛し、たくさん失い、失望し、自活するしかなくなった結果、世界がコミュニティとして機能すべきだということを忘れてしまったんだ。そして利己的な人間として動き始め自分を見失うけれど、映画の終り間際まで、自分の夢を全部失ってしまったことに気づかないんだ。
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──アルフォンスはどういったキャラクターですか?
ハワード: どんな俳優にとっても、演じるキャラクターは俳優自身のある意味未完成なバージョンだと思う。自分が理解したように演じることしかできない。そして自分の人生を投影することでより良く演じることができる。誰しも暗い面はあると思う。

僕が演じているキャラクターは異なる環境に置かれてはいるが、僕自身の心をいくぶんか反映してみることから仕事を始めたんだ。脚本にない多くのものが演じている俳優の中にはある。たとえば、ドミニク・クーパー演じる部下のダーシーが僕を感心させようとして忙しく立ち回ることで、僕のキャラクターが大物であることがわかる。自分が読み取ったことの多くやキャラクターへの解釈は、脚本には書かれていないということなんだ。それは自分が共演している相手役の目の中や、監督の頭の中、そしてしぐさの中にあるんだ。

僕たちの人生で悲しいのは、将来どんな余波が訪れるか気づかないまま、とても多くの選択をしているということだ。アルフォンスは数年前に間違いを犯した。それ以前には彼は誠実な人間に対して不誠実なことをしたことがなかった。ところが初めて彼は、食べるため・自分を守るため・自分の夢を達成するために、罪のない人間を傷つけた。彼には良心があるから、自分に善良なことが起こるのが許せなくなった。そしてゆっくりと、強欲や身勝手さや欲望という悪の基本原理に身を委ね始める。

正しい環境のもとで、自分が見たいと思うような善良な男たちを演じることも必要だけれど、バランスを取るためにはしばしば人間の別の面も必要になる。人間の魂のもうひとつの、夜目を閉じた時に現れるもっと暗い面。光が当たらないような極端な状況下で、自分がどんな人間かを僕たちは知る必要があるんだ。僕はアルフォンス役を楽しんだけれど、同時に怖くもあった。自分では許せないと思っている場所に自分を投げ込まなくてはならないからね。
──この作品の見どころは?
ハワード: アクションとラブストーリーが混ざり合い、その2つが相互に作用し合う脚本だ。ヴィクターは人生に愛する人間がひとりもいない、完全に孤独な男だ。だが彼はベアトリス(ノオミ・ラパス)と知り合う。彼女の精神は自動車事故によって粉々に壊され、一方ヴィクターの魂も粉々に砕かれている。そして運命のいたずらか、彼らは悪魔を正すために悪魔と契約し、互いを助けることで互いの傷を癒そうとする。でも傷つけた人間は戻ってきて、代わりに自分を傷つける。全ての人間を許し人生を前向きに進んでいくことが最もいい方法なのだろうが、人間にとってそれをするのはなかなか難しい。嫌悪や怒り、恨み、孤独、後悔の物語のど真ん中にラブストーリーが混ざり、一触即発の状態を創り出す。だから映画の終盤には壮絶な爆発シーンがあって、銃弾によって感情と夢も消えていくんだ。
2013年10月28日
『デッドマン・ダウン』
2013年10月26日(土)新宿ミラノほか全国ロードショー