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他者との繋がりや共生を描いた物語 ── 『ある町の高い煙突』渡辺大インタビュー

ある町の高い煙突

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昭和の文豪・新田次郎の同名小説を、『天心』『サクラ花─桜花最期の特攻─』の松村克弥監督が映像化した『ある町の高い煙突』が、6月22日(土)より有楽町スバル座ほか全国ロードショー。本作は、20世紀初頭の茨城県で、日立鉱山の煙害を防ぐため、世界一の大煙突建設の悲願を達成する為に奔走した若者たちと、それに向き合った鉱山会社の人々を描いた感動実話。劇中で、住民側との交渉役である日立鉱山の庶務係・加屋淳平を演じたのは、『ウスケボーイズ』でマドリードとアムステルダム国際フィルムメーカー映画祭で主演男優賞を受賞した渡辺大。理想と信念を大切にし、愛する者に恥じない生き方を貫こうとする男を演じた渡辺大さんにお話しを伺いました。
他者との繋がりや共生を描いた物語 ── 『ある町の高い煙突』渡辺大インタビュー
──本作は、実話を基にした新田次郎さんの小説「ある町の高い煙突」が原作です。この物語にどんな印象を持ちましたか?
渡辺:脚本を読みつつ、同時進行で原作も流れを把握しながら読みました。企業と地元住民の関係を描く物語って、だいたい企業側はいけ好かない奴で、それをやっつけようとする対立構造が多いと思うんですけど、この物語はそうじゃなくて、企業と地元が手を組んで、苦悩しながらも皆が幸せになる方法を探っていく。他者との共生を描いていて、読後感が良いというか、ホッとする物語でした。登場人物も色々クセがあるけど、どこか憎めない部分があるので、嫌な気持ちにならないのも良かったです。
──渡辺さんが演じた加屋淳平は企業側の人間ですが、彼がいなければ解決出来なかった問題とも思います。なぜこんなに汚れていないんだろう?というほど好人物でした。
渡辺:とにかく“出来た人間”ですよね(笑)。本当に誠実な人で、途中で不幸がありながらも、企業と入四間のために尽くし、しかもそれをひけらかすこともない。

昔の人って信念を持って生きた人が多かったですよね。生きているうちに自分は何を成し遂げるのか、それがフォーカスされるかどうかの問題じゃなく、そういう哲学を持っていた気がします。「お国のため」という言葉もありますが、「故郷」のことを「くに」とも読みますよね。そういった共生していく空間、共同体という意味も含めて、人のためとか、他者との繋がりを思って生きていた時代の人だと思います。

他者との繋がりや共生を描いた物語 ── 『ある町の高い煙突』渡辺大インタビュー
──時代背景として日露戦争後の明治が舞台で、加屋淳平は洋服で農民は和服でした。時代モノはいくつか出演されていますが、移り変わる時代の境目に生きる人物を演じるにあたり、何か意識したことはありますか?
渡辺:不思議な感覚でした。今は余程じゃない限り何でも平均的に与えられる時代だと思うんですけど、この当時は、西洋化される中で、思いっきり加速していく場所と、そうでない場所の差が激しかったと思うんです。時代モノは経験していたんですけど、袴や制服を着ているほうが多かったので、なかなかやったことがない役柄でした。だから、加屋淳平に関しては、出で立ちや振る舞いとして、日本の海軍将校を意識しました。海軍将校さんって、開国後、いち早く海外と触れあって、色んなものを取り入れて先進的に生きた人たちというイメージがありました。加屋淳平は、広島から東京など各地に移り、色んなものを見て洗練されていったと思うので、落ち着いた佇まいとかはイメージに近いのかなと。入四間村の泥臭さと違った部分を出せればいいなと思いました。
──主人公の関根三郎を演じた井手麻渡さんは、今回は映画初主演でした。渡辺さんは主演も助演も多く経験されていますが、現場ではどのようにサポートしましたか?
渡辺:井手くんは初主演ではありますが、無名塾でしっかりやってきた経験があるので、僕はとてもかなわないくらいです。僕も映像作品の数はこなしてきていますが、今回はサポートする側なので、そっちに徹しました。程よく良い緊張感を持ちつつ、一緒にいる時間を多く持って協力し合えたと思います。井手くんも素直な好青年だし、彼の良い意味での不器用な部分とか入四間村の人っぽさをサポートしてあげたいと思っていました。

他者との繋がりや共生を描いた物語 ── 『ある町の高い煙突』渡辺大インタビュー
──日立鉱山の社長・木原吉之助を吉川晃司さんが演じました。
渡辺:緊張しました。あまり多くを語る役柄ではなかったですが、僕と石井(正則)さんが長い台詞で説明した後、吉川さんの表情一つで全部持って行かれたなという(笑)。その存在感たるや素晴らしかったですね。
──ほぼ男所帯の物語の中で、唯一の女性キャラクターで加屋淳平の妹・千穂(小島梨里杏)が登場するシーンは、加屋淳平の表情がほぐれた感じが印象的でした。
渡辺:河原のシーンの撮影が初日だったと思います。監督から「この先は(台本に)何も書いてないんで、自由にやって」って言われて驚きました(笑)。小島さんとも話し合ったんですが、誉めないけど否定もしない兄の愛情表現というか、僕自身、妹がいるのが幸いして、あんな感じになったと思います。加屋淳平が会社の顔じゃなくなっているシーンでもあるし、僕自身が素のままでふらっと入っていけるシーンだったので、これが初日で良かったです。
──前作の『ウスケボーイズ』の主演で、海外で主演男優賞を受賞しました。その後、作品選びや役作りなど変化はありましたか?
渡辺:変わらないですね(笑)。頂いた仕事を頑張ろうという思いです。ただ、周りからの期待値が上がった部分もあるので、自分にとっても良い転換期というか、もうちょっと大人になろうかなと(笑)。
──ちょうどデビューしてから17年、人生の半分を役者として過ごしてきましたね。
渡辺:会社の人間みたいに役職が変わることもなく、ずっと役者という役職なので、何で変えていくかというと、自分自身で自分の中身を変えていくしかないですよね。人生は長いのか短いのかわからなくなっているけど、役者は、頑張れは人生の終わりまで出来る仕事だと思うので、その頑張りを怠らずにやっていけたらいいなと思います。
──最後に、この作品の見どころ、メッセージをお願いします。
渡辺:現代は色んな答えがたくさんあって、それを拾っていくのは簡単だけど、自分自身で頭や手足を使って物事を解決していくこと、そして自分の利益だけじゃなく他者を思って行動することの大切さを感じます。この作品は、今ちょっと薄くなりつつある、他者との繋がりや共生を描いています。企業と地域の物語ではありますが、人が生きていく中で大切なものが詰まっているので、地元の人じゃなくても企業の人じゃなくても伝わるものがたくさんあると思います。この作品を観て、自分の人生に希望を持つ人が増えてくれたら嬉しいなと思います。
2019年6月19日
『ある町の高い煙突』
2019年6月22日(土)有楽町スバル座ほか全国ロードショー(ユナイテッド・シネマ水戸、シネプレックスつくば 6月14日(金)先行公開)
公式サイト:https://www.takaientotsu.jp/