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生きようとするエネルギーが大きなテーマ ── 『エヴェレスト 神々の山嶺』平山秀幸監督インタビュー

エヴェレスト 神々の山嶺

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全世界で翻訳され、大ベストセラーとなっている夢枕獏の山岳小説「神々の山嶺(いただき)」を映画化した『エヴェレスト 神々の山嶺』が、3月12日より公開。本作は、世界最高峰の山に魅せられた2人の男と、その男たちを待つ1人の女性、彼らの交錯する人生を軸に、厳しい山嶺に命を懸けて挑む人々の姿と強い想いを壮大なスケールで描いた感動作。メインキャストに岡田准一、阿部寛、尾野真千子を迎え、実際に現地エヴェレストに飛び、高度5,200m付近やカトマンズでの撮影も行いながら極限に挑んだ。映画の公開を前に、メガホンをとった平山秀幸監督を直撃。エヴェレストでの撮影について伺いました。
生きようとするエネルギーが大きなテーマ ── 『エヴェレスト 神々の山嶺』平山秀幸監督インタビュー
──夢枕獏さんの原作を読んだ時の印象はいかがでしたか。映画化には困難な条件が揃っていると思いますが…。
監督:読んでいる時は映画化のことは考えずに読んで、ものすごく面白い冒険小説だし、エンターテイメントの要素があると思いました。原作には女性や政治の問題もあるけど、全部をやると6時間超えの映画になってしまうので、2時間に収めるには男たちだけの話にした方がいいと思いました。でも、何よりもまずこの映画を作るには、現地エヴェレストに行かなければダメだと思いました。
──とはいえ、監督は本格的な山登りの経験がないと聞きました。前作『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男』ではサイパン島が舞台でしたが、真逆になりましたね。
監督:僻地監督と言われます(笑)。山登りは興味なかったし、高いところも寒いところも嫌い(笑)。でも、だからといって近くの山で撮るわけにもいかない。やるからには、現地に行って限界までやることが、この原作に対しての仁義だと思いました。
──実際にロケハンも含めて、現地に行った時の印象はいかがでしたか?
監督:最初はシナハンというかたちで、シナリオライターとプロデューサー、山屋さん(登山家)と少人数で3,800mの所まで行きました。まずそこで自分の身体が対応出来なければ、その先5,000mや6,000mは無理だし、この企画自体なくなってしまいますから、覚悟してましたが、なんとなく上手くいったんですよね(笑)。シナハンで1回、ロケハンで2回、撮影で1回の合計4回現地に行きました。
──いきなり行って身体が耐えられるものなんですか?普段からトレーニングしているんですか?
監督:身体は丈夫なんですけど、腰が悪いので、それはしんどかったです。でも、スタッフもキャストも含め一人として高山病になったり倒れた人がいなかったのは奇跡的でしたね。綿密なスケジューリングの中でやれることはやったけど、今回大丈夫だからといって、次が上手くいくか分からない。常に綱渡りで、気の緩みも許されない世界ですから。スタッフには、撮影が近づくにつれて「臆病になれ」と常に言っていました。気が緩むと絶対に事故に繋がるので、全てに対して臆病になる必要があると思いました。映画屋は酒飲みが多いんですけど、3,000m過ぎたら禁酒禁煙は徹底して、見事に守り抜きました。
──それはキツイですね…。撮影隊として大勢で山に登って、撮影も長かったと思いますが。
監督:キャスト・スタッフで日本人は30人くらい、あとはネパールのシェルパさんや山屋さんなど含めて、全部で120人ぐらいいました。5,240mのところにあるロッジ── おそらく世界で一番高い所にある人工建造物なんですけど、そこまで撮影もしながら10日間ひたすら歩いて、そこをベースに10日間撮影して、ヒマラヤには全部で3週間ほどいました。
──ロッジではどんな風に生活していたんですか?
監督:お酒も飲めないし、メールで地上との交信もできないから、修行ですね(笑)。電気は自家発電でストーブの燃料も少ない。夜7時には全部落とすので、8時頃には寝袋に入るしかないんです。とにかく夜が長かったですね。夜8時に寝て、ふと目が覚めると9時半。また寝て目が覚めると11時とか(笑)。気圧が高いから熟睡できないんですよ。はやく動きたくてしょうがなかった。
──病気にならないにしても根を上げる人も出てきそうですね。
監督:そういうのもあったと思いますけど、思ったとしてもそれを口に出すと本当に壊れてしまうから、皆苦しくてしょうがないけど、何とか弱音を吐かずに3週間を過ごしたんだと思います。モチベーションを上げるために何かするというよりも、スケジュールを見て「今日はこのシーンが終わった」って「×印」をつけていく。ひとつひとつをこなしていくことがモチベーションになっていましたね。
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──実際に登って撮影してみて、想像以上に大変だったこと、逆に思ったよりも難しくなかった事はどんなことでしたか?
監督:カメラが坐って、「よーいスタート!」とするまでは大変ですね。崖っぷちにカメラが坐るわけですから、山屋さんがまず周りの安全を確保してザイルを張ってカラビナを付けてカメラを置きに行く。そういった一個一個の作業にものすごく時間がかかるんですよ。でも撮影が始まったら、自分たちは映画屋なので、そこからはトントンと進むんですけど、終わって戻るにも時間がかかる(笑)。でも、天候にも恵まれたし、想像していたよりは、楽とまではいかなくても、スムーズには進みましたね。酸素が薄いのは大変でしたけど。
──役者さんの息づかいもドキュメンタリーさながらのリアルさがありました。岡田さんと阿部さんには、役作りについてどんなお願いをしたのですか?
監督:二人にお願いしたのは、あまり前のめりにならず、身体の重心を後ろのほうに置いて欲しいということぐらいですね。地上にいて細かく考えても、山に登ってしまうとあんまり役に立たないんですよ。実際に5,200mまで登って、その風や空気や雪を感じた時に出るものがあるわけで、それを役を通して出して欲しいと思っていました。役が役なので、しんどければ叫んでもらっても良いんです。あと、とにかく自分は“生きる”んだという思いですね。生きようとするエネルギーは原作の中でも大きなテーマですから。
──劇中でも名台詞・名シーンがたくさんありましたが、監督が好きな台詞などはありますか?
監督:台詞と言うよりも、息づかいかな。印象的な台詞は多いけど、それよりも、山にいる彼らの息づかいのほうが僕には印象に残りますね。
──エヴェレストの撮影を経て、監督自身が変わったことは?
監督:この映画に携わらなければ、あんな強烈な体験はできなかった。家族揃って行くような場所じゃないし、映画を撮っていなければ絶対に行くことはなかったですから、滅多に経験できないことを映画を通じて体験できたというのが一番ですね。
──最後に、映画を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
監督:ネパールの撮影が終わって日本で撮影している時に、ネパールで地震がありました(2015.4.25)。現地の撮影でお世話になった方やその家族が被害に遭われています。そういった経緯も踏まえて、この映画に参加したスタッフとキャストの想いが入った作品になっているので、その想いが伝わればいいなと思います。

2016年3月8日
『エヴェレスト 神々の山嶺』
2016年3月12日(土)全国ロードショー
公式サイト:http://everest-movie.jp