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モラルが問われる時、あなたならどうする──『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』ジェド・ドハティ(プロデューサー)インタビュー

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

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アカデミー賞女優ヘレン・ミレンと、今年1月に亡くなったアラン・リックマンが共演した映画『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』。戦場から遠く離れた会議室で様々な関係者が干渉しながら戦争をする── 本作は無人偵察機ドローンをテーマに現代の戦争の闇を巧みに描き、何が正義かを突きつけ同時にモラルも問う衝撃の軍事サスペンス。本作は、アカデミー賞俳優コリン・ファースと、ソニー・ミュージックUKの元会長兼CEOのジェド・ドハティが立ちあげた映画製作会社「レインドッグ・フィルムズ」の第一回作品。映画の公開を前に来日したジェド・ドハティにお話を伺いました。
モラルが問われる時、あなたならどうする──『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』ジェド・ドハティ(プロデューサー)インタビュー
※インタビューにはネタバレが含まれています。ご注意ください。

──本作はコリン・ファースと設立したレインドッグス・フィルムズの第一回作品です。何故このテーマを選んだのですか。
ジェド:レインドッグス・フィルムズは2012年に設立しましたが、既にコリンは映画業界で成功し、私も音楽業界で成功を収めていました。だからこそどんな作品を作るか、選ぶ余地がありました。社会的なものでも政治的なものでも、世の中のためになる作品であるべきと話し合いました。コリンの父親は人権やアメリカの歴史を教える職業に着いていて、コリン自身もその影響で社会的な問題やヨーロッパの難民問題に興味があり、そういった意味でも社会的な内容に流れていったと思います。この『アイ・イン・ザ・スカイ』も次回作(『ラビング 愛という名前のふたり』)も、ともに情熱の持てる作品だったので、このテーマを選びました。
──あなたやコリン・ファースはプロデューサーとしてどのように関わっていたのですか?
ジェド:コリンは脚本の開発にも関わっていて、撮影の直前まで手を加えていました。常に最新の情報を作品に反映させるためでもあります。映画に登場する英国の女性テロリストは、実際にイギリスで「ホワイト・ウィドウ」と呼ばれた女性テロリスト、サマンサ・ルースウェイトをモデルにしています。コリンはほぼ全てのキャスティングやオーディションにも携わっていました。アラン・リックマンの台詞などコリンのアイデアが採用されたものもあります。彼は普段、カメラの前に立っているので、カメラのこちら側で仕事をするのが楽しかったようです。
──主人公のキャサリン・パウエル大佐をヘレン・ミレンが演じました。このポストに女性を配役したのは、特別な意図があったのですか?
ジェド:コリンもギャヴィンも私もフェミニストで、もっと女性に大切な役を与えていくべきだと考えています。ヘレンの役はもともと男性の設定でしたが、ギャヴィンのアイデアで女性になりました。素晴らしいアイデアだと思います。今までの戦争映画で重要なポストに女性が配役されたことがなかったので、この作品は今までと違う意味合いのある作品に仕上がったと思います。

また、キャサリン・パウエル大佐を女性に変えたことで、観客は「彼女は少女を犠牲にしないだろう」と推測すると思いました。実際はその逆で、テロリストを捉えるためには容赦しません。そのギャップを楽しんでもらいたいと思っていました。各国での反応もポジティブで、彼女のバックグラウンドを描かず、軍の高官の女性として描いたことを賞賛されました。
──現代の戦争を描くに当たって重要視したことは?
ジェド:ドローンは機械としても兵器としても注目されています。昔から大砲や弓矢など遠隔から殺害する武器はありましたが、ドローンはその使い方が正しいか否か議論があり、モラルが問われています。この映画では感情を押しつけるのではなく、そういったことを考えてもらいたいと思いました。例えば、心理学で「トロッコ問題」というものがあります。あなたは線路の分岐器のレバーを握っていて、左に切り替えると5人が死に、右に切り替えると1人が死ぬ。多くの人は一人が死ぬほうを選ぶが、その一人が子供だったら?さらに、その一人があなたの子供だったら?難しい判断を下さなければならない時、モラルが問われる時、あなたならどうするか。そういったことを観客に考えてもらいたいと思いました。

あとは、出来るだけ現実に忠実になるように調査を重ねました。元英国軍、米軍のドローンパイロットなど、実際に一緒に確認しながら脚本を書きました。劇中でドローン操縦士を演じるアーロン・ポールが上官に対して「ノー」というシーンがありますが、あれも法律的に可能なことです。たとえ大統領に命じられたとしても、彼がスイッチをコントロールしている場合は、彼には断る権利がある。命令系統についても、パキスタンやアフガニスタンであれば、特有の戦地なのであそこまで確認をとらなくてもいいが、今回は友好国が協力し合っているものの、誰に確認をとって良いか分からない状態。結局一番上まで承認を得るが、実際に起こったらそうなるでしょう。そういったことも軍事的コンサルタントに確認しながら、真実を描くように心がけました。実は出資者を募っている時に、「最後のシーンで少女を生かさないと出資しない」と言う人もいました。しかしあのシーンで彼女が死ななければ、真実を曲げることになるから、我々はストーリーを変えなかったんです。
──この映画では様々な登場人物に感情移入することが出来て、自分の中で葛藤しました。あなた自身が共感できる人物、またこの立場にだけはなりたくないと思うのは?
ジェド:言い質問だね(笑)。個人的には英国の閣外大臣(ジェレミー・ノーサム)のポジションが共感できるかな。彼は正しいことして皆をハッピーにしたいけど、それは不可能なことで、そのジレンマに悩んでいる。ヘレン演じる大佐に、被害を50%に下げろと命令されるムシュタク・サディック伍長は嫌だな(笑)。あのシーンはヘレンがあまりに真実味のある演技だったので、伍長を演じたバボー・シーセイも嫌がっていたんだ。それぞれの人にも感情移入ができるので、これはギャヴィンのすごいところだね。個人的にはどの立場にも立ちたくないけど(笑)
2016年12月26日
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『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』
2016年12月23日(金)よりTOHOシネマズ シャンテにて先行公開!2017年1月14日(土)より、全国公開
公式サイト:http://eyesky.jp/