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鈴井貴之監督インタビュー「ちょっとした“人生の雨宿り”。立ち止まって思いつく事があると思う」

銀色の雨

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北海道発のヒット番組「水曜どうでしょう」(HTB)でカリスマ的な人気を誇る“ミスター”こと鈴井貴之監督が、浅田次郎の短編小説を映画化した『銀色の雨』が、シネマート新宿ほかにて公開中。父を知らずに育った高校生と、引退を勧告されたプロボクサー、そしてスナック勤めの天涯孤独な女が、奇妙な共同生活を通してそれぞれの傷を乗り越えていく姿を描いた感動作。監督4作目となる本作で初めて北海道を飛び出し、鳥取県米子市を舞台に、懐かしさと温もりに満ちたドラマを撮り上げた鈴井監督に、単独インタビュー!映画に込めた想いを語って頂きました!
画像:『銀色の雨』鈴井貴之監督インタビュー
──作品を拝見しました。とても優しい映画でした。
鈴井監督:ありがとうございます。地味な映画なんですけど(笑)。今の時代性を考えると、華美で派手な展開のほうが受け入れられやすいと思うのですが、昔はこういう映画もいっぱいあったと思いますし、こういう映画を観てもらいたいと思ってるんです。映画だけじゃなく、僕らが作っているものは、最終的に仕上げて頂くのは観客の皆さんだと思っているので、余白というか隙間があって、そこに思いをめぐらせてもらえたらと思います。『自分たちの観た思いを反映させることができるものづくり』を意識しています。
ですから、僕の作品の多くはラストシーンで、「あの後、いったいどうなるんでしょう」と言われるんですけど、十人十色でいろんな考えがあると思うので、それは皆さんの思った通りでいいんです。
──4作目にして初めて北海道を出ましたね。どうして米子で撮ろうと思われたのですか?
画像:『銀色の雨』
鈴井監督:過去3作は北海道在住なので北海道を舞台にしましたが、 北海道にこだわること自体が中途半端だなと思い始めたんです。「一生、北海道なのか?」って考えると、もしかしたら海外が想定されることもあるかもしれませんし、宇宙の話かもしれない…と。ものづくりで自分の中に手かせ足かせをする必要もなく、その都度自分の中で合致するものがあれば、どんな条件・状況でもトライするべきではなかろうかと思い、一度フルフラットにしようと思いました。
その後、この『銀色の雨』に関しても撮影場所として、全国各地が候補地としてあったんですけど、米子へ実際に足を運んだ時に、北海道在住の僕にとっては珍しいもの、例えば、瓦屋根とか路地など僕の中のイメージとしてある、いい塩梅の町並みがあったんです。
──原作とは、かなり設定が変わってますが、どんな所に重きを置いて変えていったんですか?
鈴井監督:今を生きている人たちにとって、どれだけ伝えられるものがあるかという所ですね。日常的・現実的であるということ。原作は昭和40年代の大阪ミナミのヤクザの話で、そのままの設定では、非日常の世界になってしまうので、そこは大幅に変えなくてはいけないと思いました。日常的で、マンションの隣に住んでいる人がこういう状況かもしれない、誰もが自ら抱える問題、孤独感とか独りよがりとか、行き場のない憤りみたいなものを表現するのにはどうしたらいいだろうか、と考えていきました。
──原作者の浅田次郎さんはどんな反応でした?
鈴井監督:浅田先生にとって自分の作品が映画化されるということは、大事に育てた娘を “嫁がせる”という気持ちだそうです。嫁いだ先で幸せに暮らしてくれればいい、だから、自分の作品としての「銀色の雨」と、映画の『銀色の雨』は見方が違うものという考えでした。
でも、見事にそれを超えた作品であるというコメントを頂いたので、安心しました。
──キャスティングはどのように決まっていたんですか?
画像:『銀色の雨』 画像:『銀色の雨』 画像:『銀色の雨』
鈴井監督:始めに中村獅童さんが決まりました。岩井章次(中村獅童の役柄)という、今で言うと古くさいかも知れないですけど男らしい男、寡黙だけど、その人の生き様が滲み出てくる俳優さんを探していたんです。素晴らしい俳優さんは沢山いますが、そういった見地で検索するとなかなか少ないんですよね。最近は、草食系とか甘い感じが多いですからね。そこで、中村獅童さんが、“岩井章次”と合致するものがあったので、獅童さんしかいないと思いました。
そこから、他のキャストを探っていく中で、和也の役柄は、あまりイケメンじゃない普通の子がいいと思っていて、50〜60人のオーディションの中から仮で決めていたキャストがいたんですが、オーディションの最後に会った賀来君はルックスは良く、役のイメージとは違いましたが、大人たちを相手にオーディションをした時に見せた、ちょっとした不安な顔というか仕草みたいなものに惹かれて、大逆転で決まりました。
──確かに賀来さんの、不安を抱えた高校生の雰囲気はよかったですね。獅童さんはこれまで、ギラギラした役柄が多かったので、「こんな柔らかい表情をする人なんだ」と思いました。演出していかがでした?
鈴井監督:確かに最近、獅童さんはギラギラした役が多かったかもしれませんが、僕は、彼の本質は違うだろうな、と思っていたんです。
寡黙な役を絶対にやりきって下さるだろうと思っていました。
僕は演出の時にきっちり段取り、「このシーンはこういう設定でこんな心情なので、この台詞をきっかけに、ここからここまで動いてください」と、全部理由を伝えますが、後半では皆さん充分に理解して下さって、全く何も言わなくていいぐらい役になりきっていましたね。
画像:『銀色の雨』鈴井貴之監督インタビュー
──監督の著書「ダメ人間」を拝見しました。映画とリンクしている部分もあるのかなと思いました。
鈴井監督:そうですね。和也はまったく僕だと思いますね。「ありがとう」も「ごめんなさい」も言わないで、独りよがりで生きてきて、結局壁にぶちあたって悩んで、出口がなくてもがいている。でも、友人とか色んな人たちが、真っ暗闇の中でも“こっちだよ”と手をたたいて導いてくれた。だから何とか生きてこられたところがありますね。
それが、『銀色の雨』の中でも、和也にとっては章次だったり菊枝だったり、周りのすべての人であったり。彼らがやっと視界に見えるようになるというのが大事なんです。そういう人たちって誰にでもいると思いますよ。孤独だ、独りぼっちだ、と思っても、世の中本当に一人ぼっちの人はいないですから。生きている限り絶対誰かとは関わりを持っているわけで、それが見えるか見えないかは生きていく上ですごく重要だと思います。映画の中では、物語が始まった時には見えていないですが、最後は見えてくるんです。雨で紗がかかって視界が悪かったのが、雨が上がって虹が出て、遠くが見えるようになった、そんな感じなのかなと思いましたね。
──監督自身は雨は好きですか?
鈴井監督:嫌いです!雨嫌いで、傘をさすのはもっと嫌いですから、そのまんま雨にあたっています。面倒くさいですから(笑)。
──撮影は雨のシーンが多かったですが、自然の雨を利用したんですか?
鈴井監督:自然の雨は粒子が細かくて映らないんですよ。照明をしっかり当てて絵にしないといけないんです。ですから、雨が降ってても雨を降らせる必要がありましたね。山陰地方の冬(撮影は2008年12月頃)は天候が不順で、めまぐるしく変わるので、最初は大変でした。終いには雪にも降られましたから。
──TEAM NACSも揃ってましたね。
鈴井監督:今回は登場する予定はなかったんですけど、大泉くんが「社長の映画に我々が出ないわけにはいかないだろう」と、スケジュールを無理矢理調整してくれて、一日だけ米子に来てくれました。
画像:『銀色の雨』鈴井貴之監督インタビュー
──大泉さんの場面の最後のセリフは、本当にいつもあんな感じですか?(←映画をチェック)
鈴井監督:あのセリフは完全に彼のアドリブです。本当にあんなことしたら、許しませんから(笑)。
──最後に、これから『銀色の雨』を見る方にメッセージをお願いします。
鈴井監督:今回は、“人生の雨宿り”をテーマに掲げました。今の世の中、頑張って前に進んでいくことばかりが大切なことではなく、精神的に辛かったりするときは、「今、頑張らなくてもいいんじゃないの?ちょっと休もうか」という、“人生の雨宿り”が必要だと思います。止まない雨はないですから。長いのか、すぐに止む雨かは分かりませんが、濡れてまで目的地へ走って行かなくても、そこで立ち止まる事で色々思いつく事があると思っています。
僕も個人的に、前へ前へ進んでいくのが全てだと思っていたのですが、「立ち止まってもいいんじゃないの?」と感じた事があったんです。そういう思いを込めたつもりなので、今、人生の雨宿りが必要な人たちはこの映画を見て気が楽になってくれれば嬉しいです。
11月27日、朝の便で北海道を発ち、TV&ラジオの収録やインタビューで大忙しだった鈴井監督。夕方から始まったこのインタビューでは、そんな疲れを見せずに映画に込めた想いを謙虚ながらもアツ〜く語ってくれました。「監督の著書「ダメ人間」読みましたよ。」と言ったら、照れくさそうに俯いたのが印象的でした。
<衣裳協力>
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2009年12月7日
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『銀色の雨』
シネマート新宿、シネマート六本木、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国ロードショー中
公式サイト:http://www.giniro-movie.com/