ニュース&レポート

架空じゃない!? 映画業界あるある話も ── 『破門 ふたりのヤクビョーガミ』小林聖太郎監督インタビュー

破門 ふたりのヤクビョーガミ

  • Yahoo!ブックマークに登録
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイートする
  • Facebookでシェアする
すぐにキレるイケイケやくざと、口だけは達者なぐーたら貧乏の建設コンサルタントが活躍する、黒川博行の小説≪疫病神≫シリーズ。2014年に直木賞を受賞したシリーズ5作目「破門」を、『毎日かあさん』『マエストロ』の小林聖太郎監督が映画化した『破門 ふたりのヤクビョーガミ』が、1月28日(土)より公開。主人公の凹凸コンビを佐々木蔵之介と横山裕が演じるほか、共演に北川景子、橋爪功、國村隼ら関西出身の俳優が結集し、怒涛のアクションと関西弁の掛け合いで、映画製作をめぐる巨額の資金の行方を追う。映画の公開を前に、小林聖太郎監督にお話を伺いました。
架空じゃない!? 映画業界あるある話も ── 『破門 ふたりのヤクビョーガミ』小林聖太郎監督インタビュー
──原作は、黒川博行さんの直木賞受賞作です。黒川さんの原作を手掛けるのは2度目になるんですね。
監督:そうなんです。たまたま、お話をもらった時に作っていたシナリオが、黒川さんの原作で、2015年に、WOWOWで放送された「連続ドラマW 煙霞(えんか) -Gold Rush-」だったので、縁を感じたというか、すごく偶然で「こんなこともあるんだな」って思いました。
──同じ原作者の作品が2本続くと、世界観を掴みやすいですか?
監督:物語は違っていても、似た設定があったりするので、そういう部分は黒川さんの好きな世界観があるんだなと思います。例えば銀行名が同じだったり、腐った人間ばかり出てくるとか、共通したものがあって、そういうところが面白いです。それは『後妻業の女』を観ていても思いました(笑)。
──「破門」は、原作ではシリーズの5作目にあたります。いきなり5作目を描くというのは難しそうです。
監督:二人の関係がゼロから始まるわけじゃないというのは、一番悩みどころでしたね。二人の出会いも描くという選択肢はあったんですけど、どうしても長くなりますし。映画製作の話を含めると3時間半ぐらいになってしまうので、“どうやら腐れ縁が続いているらしい”ところから始まることで落ち着きました。
──物語は、映画製作のお金の流れを発端に詐欺が展開していきますが、“映画業界あるある”みたいなことはあるのですか?
監督:ありますよ(笑)。この5年くらいで、僕の知り合いのプロデューサーが2人も詐欺で逮捕されてますし(笑)。映画を作るっていう名目で金を騙し取った疑いで、本人は否定してますけど。
──騙すつもりはなかったと…?
監督:純粋に…っていうと純粋の定義が問題になりますけど(笑)、映画を作りたかったことは間違いないと思うんです。ただ、借金を返さないと映画を撮れなくて、借金を返したらお金がなくなって、また別にいくつも借金をして…という自転車操業が多かったりして、でも、映画が完成したら詐欺じゃなくなるんですね(笑)。そういう意味では“映画界あるある話”だとは思いました。
──劇中で、映画製作にあたり「ヤクザをリサーチするのは難しい」と言うセリフがありますが、実際もやはり難しいのですか?
監督:“コンプライアンス”ですよね(笑)。実際に今回もコンプライアンス上の問題があるから、ヤクザを取材するなというところから始まっているので、同じですね(笑)。でも、僕自身は現状のリサーチは時と場合によると思います。黒川さんも小説を書くときにヤクザを取材しないって言ってました。黒川さんの場合はコンプライアンスの問題じゃなく、ただヤクザが嫌いだからみたいですけど。
──佐々木蔵之介さんは最初から主演に決まっていたそうですね。これまであまりヤクザな印象はなかったんですが、スタイリッシュで「イケイケなやくざ」が素敵でした。
監督:この作品のプロデューサーが、『ソロモンの偽証』や『超高速!参勤交代』で蔵之介さんと組んでいて、ちょうど『ソロモンの偽証』の撮影の時期に、「破門」で黒川さんが直木賞を受賞したんです。2人でその話をして、すぐに企画して原作権をおさえたと後から聞きました。
──桑原というキャラクターについては、佐々木さんとどんな風に話し合ったのですか。カラオケで桑原が英語の歌を熱唱する姿もよかったです。
監督:キャラクターについては、「高級スーツを着て、一見しただけではヤクザに見えないけど、態度や声、眼光の鋭さから、カタギではないことが分かる」という原作にある桑原という男を目指しました。声はいつもより低めにしてもらいました。カラオケのシーンは原作のままなんですけど、歌は変更しました。桑原は、父親が英語教師で、自分も英語が得意だと思っているキャラクターです。原作では「愛しのレイラ」を歌うんですが、桑原と二宮の関係性、物事の二面性を表すような歌(Manhattans「There's no me without you」)にしました。
──桑原の相棒・二宮は、関ジャニ∞の横山裕さんが演じました。新鮮な組み合わせでしたし、桑原とコンビで建設コンサルタントという役柄も意外でした。
監督:まぁ“自称”ですからね。実質ほぼ無職に近いですけど(笑)。二宮は未熟でヘタレな部分と、芯の強さと反骨心を持ち合わせているキャラクターで、横山さんもそれを肌で理解して、自分から色々アイデアを提案してくれました。
──監督の前作『マエストロ』で取材させて頂いたんですが、「大嫌いだけど一緒に仕事をする、解消されないコンビみたいな状態が、一番強靱なコンビだ」と仰っていました。今回の作品はまさに、相性が悪いのに調和しているようなコンビでしたね。
監督:前作と同じ事を言ってしまいますが(笑)、本当にそのとおりです。最初の本読みの時に、佐々木さんと横山さんのテンポが良くて息が合いすぎたので、互いに相手をバディだと思わないように、気をつけてもらいました。2人は一緒に行動しているけど、たまたま利害関係が一致しただけで、心地よい関係ではないんです。
──2人を騙す映画プロデューサー・小清水役は、橋爪功さんでした。最近は落ち着いた感じの役のイメージが強かったですが、今回は走ったり転んだり、嘘ついて刺されたり叫んだり…
監督:嬉々としてやってくれましたよ(笑)。若い頃は悪人の役も多かったらしいですが、最近は“人格ロンダリング”されてるので、今回は悪いほうに引きずってやろうと思いました(笑)。「この物語は小清水というキャラクターにかかっています!」ってお願いすると、「そういうのやめて!プレッシャーかけんといてや〜」って言ってましたが、「わし、このままやと上品になってしまうねん」と言ってサングラスを提案してくれたり、銀行のシーンでも「年やから走られへんねん」って3日くらい前から毎日言っていて、いざ撮影すると全力疾走……走れるやん!って(笑)。色々ツッコミを待つ言葉を吐きながら、楽しそうにしてらっしゃいました。
──劇中で小清水がマカオに潜伏し、桑原がマカオでカジノをプレイするシーンがありますが、撮影はどのように行ったのですか?
監督:マカオで撮影する方向で調整していたんですが、シナリオの検閲があって、「ヤクザがカジノでマネーロンダリングする」という内容に対して、政府やホテル側から撮影許可が下りなかったんです。そもそもの前提として、営業中のカジノで撮影が出来ないという理由もあったんですけど。結局、マカオまでスタッフ5人でロケハンに行って、カジノで12,000円勝って、撮影は実景だけ撮って、カジノ会場はお台場や幕張の宴会場で頑張って捏造しました(笑)。
──今回の出演者はほぼ関西出身の方ばかりでした。関西の方は関西弁に厳しいと聞きますが、今回は、皆さんがネイティブに近い言葉だったのですか?
監督:橋本マナミさん以外は皆、関西出身ですから勿論ネイティブなんですが、一口に大阪弁と言っても細かいことを言えば年代や地方や個人によって、アクセントとかが微妙に違うんです。今回も「これは(私の考える)大阪弁ではない」って言う人も出てくると思うんですけど、あまり追求しすぎず関西人が聞いて気持ち悪くない事を目指しました。蔵之介さんのセリフも京都なまりが2箇所残っていますが、桑原の設定自体が兵庫県北部の出身で、生粋の大阪弁ではない筈なんで敢えて残しました。北川景子さんは神戸出身なので、問題ないと思ったのですが、本人の強い希望があり方言テープを作りました。

黒川さんの原作でも、書き言葉という制約のなかで大阪弁を表現していて、それを自然な話し言葉にどう落とし込むか気を配りました。でも自然な言葉だけでも面白くないので、いいなと思った台詞はそのまま採用したりしています。
──監督のこれまでの作品ほぼすべてに、芸人のテントさんがチラッと出演されていました。残念ながら9月に亡くなりましたが、今作ではポスター出演(小清水の事務所に張られたヤクザ映画のポスター)されていましたね。
監督:気付いていただいてありがとうございます(笑)。完成作品を観てもらえなかったのが残念です。毎回出演してもらおうと思いつつ、そんなに色々なことが出来る人ではないので…。『マエストロ!』ではヤクザ役でしたが、今回ヤクザ役の怖い面々の中で、テントさんが凄みを効かせるとちょっと笑ってしまいそうなので、“静止画”にしました。実は、小清水が貸金庫に隠している通帳に、残高が2,500万円あるんですけど、その一個前の振込先が、テントさんが演じた役“テンドウヤマト”への報酬支払いなんです。事務所の子飼いの俳優で、主演俳優なのに報酬20万円です(笑)。
──最後に、本作を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
監督:息の合ったコンビじゃない2人の関係性を楽しんで欲しいです。あと、僕の知り合いが逮捕されたから…って訳じゃないけど、映画プロデューサーにしても革命家や政治家にしても、大勢の人や社会を動かす人って、どこか詐欺師に近いところがあったりするんですよね。本人にそのつもりはなくても、結果論として詐欺になったり。すごく難しくて面白い問題だなと思います。身近に映画プロデューサーがいる人も少ないと思うんですが、そういう人への愛と憎の両方をもって撮ったので、そのへんも楽しんで欲しいです。うまい話と白地手形には気をつけろ、簡単にハンコ押したらあきませんよ(笑)。
2017年1月30日
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
『破門 ふたりのヤクビョーガミ』
2017年1月28日(土)ロードショー
公式サイト:http://hamon-movie.jp/