ニュース&レポート

皆、ホドロフスキーのことが大好き──『ホドロフスキーのDUNE』フランク・パヴィッチ監督インタビュー

ホドロフスキーのDUNE

  • Facebookでシェアする
  • ツイートする
『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』など、寡作ながらも世界中に熱狂的なファンを持つ映画作家アレハンドロ・ホドロフスキー。彼が1974年に企画した映画『DUNE』は、フランスのカリスマ作家メビウス(ジャン・ジロー)、SF画家のクリス・フォス、『エイリアン』脚本家ダン・オバノン(特撮)とデザイナーのH・R・ギーガーが参加し、キャストにサルバドール・ダリ、ミック・ジャガー、オーソン・ウェルズ、デヴィッド・キャラダイン、ウド・キア、音楽にピンク・フロイドとマグマを配しながらも、幻に終わったSF大作。未完成ながらも、後のSF映画に多大な影響を与えた“夢の企画”が、ドキュメンタリーとして息を吹き返した。叶わなかった夢と映画への情熱を語るホドロフスキー監督にカメラを向けたのは、本作が長編デビュー作となるフランク・パヴィッチ監督。10月に行われた東京国際映画祭で来日したパヴィッチ監督に、『ホドロフスキーのDUNE』完成までの経緯を伺った。
皆、ホドロフスキーのことが大好き──『ホドロフスキーのDUNE』フランク・パヴィッチ監督インタビュー
『ホドロフスキーのDUNE』ホドロフスキーのDUNE『ホドロフスキーのDUNE』
──なぜホドロフスキーの『DUNE』のドキュメンタリーを撮ろうと思ったのですか?
監督: もともと『エル・トポ』や『ホーリー・マウンテン』などホドロフスキー作品が好きで、彼自身にも興味をもっていた。後に彼が『DUNE』を撮るはずだったと知って調べてみたら、オーソン・ウェルズにサルバドール・ダリ、ピンク・フロイドなど錚々たるキャストやアーティストが絡み、紙の上ではすべて完了していたと聞いて、「これはドキュメンタリーを作らないと!」と思ったんだ。
──ホドロフスキー自身のドキュメンタリーではなく、『DUNE』の企画ありきだったわけですね。
監督: そうなんだ。ドキュメンタリーは対象が小さいほどより深く掘り下げられるからね。ホドロフスキーについてとなると、12時間ぐらいの映画になっちゃうし、対象を狭くすることによって、より深く追求できると思ったんだ。
──ホドロフスキー監督とはどのようにコンタクトをとって進めたのですか?
監督: インターネットでたくさんリサーチをしたんだ。2010年の前半に、彼のエージェントがスペインにいると知って、まずはエージェントにメールを送った。すると数週間後にホドロフスキー自身から返信があったんだ。恐ろしくなってすぐにはメールを開けられなくて、一週間ぐらい放っておいたよ(笑)。「NO」と言われたら夢が打ち砕かれるから、もう少し「映画を作るぞ!」という気分でいたかったんだ(笑)。勇気を振り絞ってメールをみたら、「今、パリに住んでいるから、来てくれ」とあって、すぐにパリに行った。最初のミーティングは15分ぐらいで、すごく熱心に自分がやりたいことを話したら、彼は僕が今まで何をしていてどんな作品を撮ったのか全く聞かず、すぐに「YES」と言ってくれた。僕の情熱や、僕が敬意をもって彼の人生の大切な一部を描くだろうことを感じてくれたんだと思う。
──制作途中で、本作の演出について話し合ったことは?
監督: ホドロフスキーは、自分の映画を撮っている時は自分のビジョンを実現するために、他の人の意見は聞かない人なんだ。だから、実は心配だった。僕の映画ではあるけど、彼の人生、しかも彼の人生にとってとても大事な部分の話なので、どこまで彼が関わってくるのか心配だったが、全く何も言わなかった。完成するまで全く観ていなくて、カンヌのプレミア上映で初めて観たんだ。ドキュメンタリーの対象人物が完全に信頼してくれて、我々に全部任せてくれたのはとてもラッキーな事だと思う。カンヌでは、自分が思い描いていたビジョン、絵コンテが現れ、それが目の前で動いているということにも圧倒されていたよ。
──では、H.R.ギーガーやクリス・フォスらが当時どう思っていたかも、カンヌの上映で初めて知った?
監督: これからギーガーに会うとか、クリス・フォスにインタビューするといった話はしていたので、誰に会っているのかはだいたい分かっただろうけど、内容は全然知らせていない。約30年以上会ってない人たちとフィルムの中で再会したんだ。若かった“魂の戦士”たちが、白髪頭になって当時を振り返っている。ホドロフスキーはこの映画が完成して初めて観たので、感動していたようだ。

彼らへのインタビューは、企画当時から考えていたものだけど、コンタクトを取るととても喜んで応じてくれたんだ。皆、ホドロフスキーのことが大好きだし、自分の話もしたかったんだと思う。『DUNE』の企画は有名な話で、色んな人が色んな解説をしているが、ここで公式の話が出来たと言うことだと思う。
──ダン・オバノンの肉声テープもありましたね。メビウスは2012年に亡くなっていますが、コンタクトはとっていたのですか?
監督: ダンの肉声テープは、当時のダンがどんな気持ちでいたのか知らなかったので、ホドロフスキーにとっては衝撃的だったと思う。ダンやデヴィッド・キャラダイン(レト侯爵役)は製作の前に亡くなったが、そのことが僕の尻に火を付けたかもしれない。ホドロフスキーだって、この映画の企画当時は80歳だったからね。メビウスにももちろんコンタクトをとったけど、癌でかなり弱っていたので、カメラの前に立つ元気はなかった。僕は長い間、メビウスのインタビューが撮れないことが、大きな欠陥になるのでは?と思っていたが、ある時、メビウス自身はフィルム中にいるんだと気づいてからは、インタビューがなくても大丈夫だと思えたんだ。
──『DUNE』の企画は中止となり、ディノ・デ・ラウレンティスが権利を買い、デヴィッド・リンチが監督することになりました。ディノについてホドロフスキー監督は何か言っていましたか?
監督: ミシェル・セドゥーによると、ディノは元々、ホドロフスキーの『DUNE』のチームに参加したがっていたんだ。でもスタジオ側はホドロフスキーを信用していなかったので、ディノがジョン・ギラーミン(『キング・コング』『タワーリング・インフェルノ』)との共同監督という話を持ちかけた。でも、ミシェルはホドロフスキーがそれを受け入れるなんて有り得ないと言って断り、結果、映画自体がダメになった。そこで映画の権利がディノに売られたんだ。分厚い契約書とお金を通して売買されたものだし、ホドロフスキー自身は、アーティストが誰になるか興味を持っただろうが、プロデューサーが誰かは気にしていなかった。だからディノに対して悪い感情を抱いているわけではないと思う。

その後ディノは、『フラッシュ・ゴードン』や『デューン/砂の惑星』(デヴィッド・リンチ監督作)を作ったけど、『フラッシュ・ゴードン』では音楽にクイーンを使い、『デューン/砂の惑星』ではスティングを役者として使ったり、音楽がピンク・フロイドだったところをTOTOを起用した。考えてみれば、それ以前はロックバンドに映画のサントラをやらせようなんてアイデアはなかったと思う。今でも色んな映画でそれが活かされているのは、ディノがそういったホドロフスキーのアイデアをキープしてくれたお陰かもしれない。
──このドキュメンタリー製作の期間に、ホドロフスキー監督は23年ぶりの新作映画『リアリティのダンス』を発表しましたね。カメラを向けているなかで変化を感じられましたか?
監督: 以前は、毎週水曜日になると近くのカフェに出かけて、無料でタロットカード占いをしていたけど、何年も何年も続いたその週間をある日突然止めてしまったんだ。理由を聞いたら、「僕はフィルムメーカーだから」と。それが僕が見た一番大きな変化だった。彼は、アーティストとしてもがいている段階ではなくて、本や漫画も描いてアーティストとして成功している。でも、映画はお金がかかるので、何度トライしても資金繰りが上手くいかなくて撮れなかった。この映画に関わるなかで、やはり自分はフィルムメーカーなんだと改めて思ったんじゃないかな。『リアリティのダンス』を発表したけど、来年また新しい映画を作りたいとも言っていたよ。
──劇中に登場する、『DUNE』のデザイン画や絵コンテが描かれた分厚いアートブック、商品化するつもりはなさそうですか?
監督: 皆が欲しがってるよ!出版してくれって(笑)。基本的にはフランク・ハーバートの物語なので、著作権的に可能なのかは僕には分からないけど、クリアするのは大変だと思う。アートとしても価値あるものなので、高額でも売れるかもしれない。僕は、映画のためにデジタルスキャンしたけど、PCが盗まれたら大変なことになるよ(笑)。
──10月に行われたモントリオール映画祭では、ホドロフスキー監督が全裸でビデオメッセージを贈って話題となりました。
監督: スペインの映画祭で彼が、「モントリオール映画祭に招かれたが、行けないので裸でメッセージを贈ろうと思う」と言っていたので、聞き流していたけど、まさか本当の「裸」とは(笑)。彼の新作『リアリティのダンス』は、精神的な意味で真っ裸になって一番深いところをさらけ出したわけで、それを伝えるためのメッセージだと思う。肉体であれ精神であれ、観客のため、アートのために全てを脱いだ。中途半端なことをしないから本当にすごいよね(笑)。
──監督自身は、このドキュメンタリーが長編デビュー作となり、自分なりの『DUNE』を撮ったと思います。この後、何か次回作の展望やビジョンは見えてきましたか?
監督: この映画には、もの凄く長いこと関わっていて、カンヌでのプレミアを経て色んな国を渡り、ようやく今、日本にやってきた(※第26回東京国際映画祭で上映/日本公開は2014年)。今後もDVD用の特典やボーナスカットの作業もあるから、まだ『DUNE』からは離れられないし、次のことは考えられないんだ。次に何をやるか、これ以上のものが出来るだろうかという気持ちもあるけど、いずれにしても次回作は自分自身のチャレンジになると思う。
2013年11月13日
『ホドロフスキーのDUNE』
2014年6月14日(土)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか、全国順次公開