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白紙の状態の東京駅、特別な経験をしているという高揚感があった── 『すべては君に逢えたから』本木克英監督インタビュー

すべては君に逢えたから

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来年100周年を迎える東京駅を舞台にした映画『すべては君に逢えたから』 。本作は、人間不信に陥ったウェブデザイン会社社長、仙台と東京の遠距離恋愛、母親と過ごすクリスマスを夢見る少女、余命三ヶ月を告げられた新幹線の運転士、気になる先輩に告白できない大学生、49年前の果たされなかった約束…それぞれが抱える思いが、クリスマスをきっかけに動きだすというストーリーで、10人の男女の“愛”を描いたロマンティックな物語。出演は、玉木宏、高梨臨、木村文乃、東出昌宏、本田翼、市川実和子、時任三郎、大塚寧々、小林稔侍、倍賞千恵子など、フレッシュな面々からベテラン勢が揃う。11月22日(金)の公開を前に、メガホンをとった本木克英監督にインタビュー。JR東日本協力のもと実現した東京駅での撮影など舞台裏を直撃しました。
白紙の状態の東京駅、特別な経験をしているという高揚感があった──  『すべては君に逢えたから』本木克英監督インタビュー
──本作は、東京版『ラブ・アクチュアリー』と東京駅開業100周年という企画が発端になっていますが、どのような経緯でメガホンをとることになったのですか?
監督: ロンドンが舞台の『ラブ・アクチュアリー』、ニューヨークが舞台の『ニューイヤーズ・イヴ』があり、その東京版という着眼点がしっかりしていて、日本映画では珍しい複数の物語が進行するラブストーリーという企画に惹かれました。あと、東京駅で撮影できることも魅力的でしたね。撮影現場は過酷を極めるだろうと思いましたが、僕も商業映画の監督なので、そこは職人として取り組みました。まずは撮り切ったことに満足しています。
『すべては君に逢えたから』『すべては君に逢えたから』『すべては君に逢えたから』
──様々な年代や環境の違う男女のストーリーなので、デートムービーに最適だと思いました。
監督: 最近は「バイオレンス」とか「屈折した気持ち」とか「日本人のプライド」みたいなものが多いなとは思っていたので、たまにはこういうストレートで穏やかな作品も良いですよね。あと、疲れている時など、こういったキラキラしたものって目を奪われると思うので、その辺もかなり意識しました。
──6つのラブストーリーが同時進行するのに、バランスをとるのは難しかったのでは?
監督: シナリオも膨大な量があったので、絞っていくのは大変でしたし、演出も、すべての話にエネルギーを注ぎ込んで、全力投球しなくてはならないので、監督としては苦労しましたね。恋愛ドラマって理屈ではなく、本当にその2人が愛し合っているように見えないと終わりなので、言葉に表さなくても、この2人は付き合ってるとか、2人はここで恋に落ちたとか、そういった瞬間のカットは、しっかり捉えようと思いました。
──本作は、映画史上初めてJR東日本の全面協力によって東京駅での撮影が実現しました。
監督: 僕が助監督の頃、数十年前までは限定的に撮影できたんですけど、構内で撮影したのは初めてですね。東京駅は、伝統と新しいテクノロジーが融合していて、アートとしても素晴らしい奇跡的な造形物です。これが背景に出来るというのは、映画監督としてはビジュアル的な演出に苦労しないというのもメリットだったし、人がいない白紙の状態の東京駅に、キャストやエキストラを気持ちよく配置するっていうのは、特別な経験をしているという高揚感はありました。

でも、終電が終わるのが午前1時頃。構内のすべてのお客様が出てから、我々スタッフとキャスト、エキストラ合わせて200名ほどが入って構内を再現する。最初はワクワクしながら臨んでいたんですけど、現場は過酷でした(笑)。3時半頃には夜が明けてきますから、約2時間半の間でどうやって組み立てていくのか、制限時間の中でどれだけのカット数を撮れるのか。現場に入った瞬間に焦っていて、毎日戦争のような状態でしたね(笑)。
──そういった現場で、自分自身やスタッフが過酷な状況下にいる時、どうやって気持ちを切り替えるんですか?
監督: 割り切りを早くすることですね。映画は永遠に残るものなので、効率も関係なく1カット1カットに時間を掛けて取り組みたいところですが、今回は条件も制限もあるのでそうはいきません。でも「割り切る」って悪いことではないので、限られた時間のなかで大事なものは何だろうと考えて、効率型に意識を変えることですね。結果、良い方向に向いたと思います。あと、基本はやはり、やらされているのではなく、自分はやりたいようにやっているという意識がないとダメですね。作品が世に出て、うまく行かなかった時、誰のせいにも出来ませんから。
──撮影用に東北新幹線を動かしたそうですね。運転士役の時任三郎さんが、実際に運転席で操作するシーンもありました。
監督: たぶんああいうカットも初めてかもしれません。もちろん運転はさせてもらえないので合成ではあるんですが、実際に仙台の利府にある新幹線の車両基地に行き、運転席に時任さんが座って撮影しました。外の景色は別途、カメラマンだけ乗り込んで車窓を撮影したものです。僕はあまり詳しくないけど、鉄道ファンってすごく多いので、バッヂひとつにも、機器のさわり方や所作にも手は抜けなかったですね。ひとつ間違えるとすぐネットで非難を浴びますので(笑)、そういったシーンはJR東日本の社員協力のもと、リアリティに徹してやったつもりです。
──キャスティングは監督自身も携わっていたのですか?特に熱望したキャスティングは?
監督: ある程度決まっていて、やはり芝居もちゃんと出来る方をキャスティングしています。その中でも木村文乃さんとは仕事してみたかったし、やはり僕は松竹出身ですから、倍賞千恵子さんとご一緒できればいいなと思っていました(笑)。
──木村さんも東出昌大さんも本格的な恋愛モノは初めてになりました。キャストそれぞれの演出はどのように?
監督: 2人とも余計な芝居をしないで魂を前面に出してくるので、演出しやすかったですね。木村さんは、東京駅での過酷な撮影でも集中力をなくさなかった。東出君は最初、あまりに朴訥としていて大丈夫かな?と思ったんですが、小器用な芝居をしないように注意して見ているぐらいでした。時任さんと大塚寧々さんは、あらゆる役柄をこなしてきたので、ほとんど何も言うことなかったです。玉木宏さんも、劇中の前半では嫌な役柄ではありますが、気持ちがだんだん変わっていく微妙な変化を表現してくれました。
──我ながら、ここは何度見ても素敵だなと思うシーンをあえてあげるなら?
監督: 木村さんと東出君の、東京駅前のクリスマスツリーのシーン。あまりにもベタすぎるかな?と思ってたけど、基本的なラブストーリーの撮り方になっていて、短時間ながらよくやったな…と(笑)。あと、芝居が素敵だという意味では、仙台での木村さんと東出君との会話のシーンかな。つきあいも長くなり、お互いの鬱積した思いをぶつけ合う場面で、男は喋らず、女性は正論ばかりという(笑)、とてもリアルな感じになっていると思います。
──監督はこれまで松竹映画で仕事をしてきましたが、今作はワーナー作品です。現場での進め方などで違いを感じましたか?
監督: 撮影に関しては「本木組」としてやらせてもらったので、現場は変わらなかったです。でも、撮影後に、仮の音楽を入れ、編集して繋いだだけのものを観客に見せる「リクルーテッド試写」というものがありました。アンケートをとってそれを作品に反映させるもので、最初は抵抗があったんですけど、意外と面白かったですね。皆さんすごく目が肥えていて、色んなところを細かく見ているので、感心しながらアンケート用紙に目を通していました。やはり恋愛映画に一番手厳しいのは、30〜40代の女性だというのもよく分かりました(笑)。
──監督自身も、王道のラブストーリーは初めてとなりましたが、今後こういった作品を多く手がけることになりそうですか?また、自らの企画や脚本など考えているものはありますか?
監督: これまで喜劇を多く撮ってきたんですが、松竹の助監督時代に諸先輩から「喜劇さえ撮れれば、どんなジャンルであれ対応できる」と言われていたので、(ラブストーリーは)いつか挑戦したいジャンルではありました。ゲイリー・マーシャル監督(『ニューイヤーズ・イヴ』)なんかは堂々と「ロマンティックなものを描きたい」と言いますが、日本ではそう言う監督は少ないですし、僕もビリー・ワイルダーのようなロマンティックコメディも好きなので。

自分で企画や脚本をやることもありますが、やはり僕はなるべく大勢の力を総合してやったほうがいいなとは思っています。監督ってコケると大変キツいし(笑)、いつ撮れるか分からないので、機会があれば色んなジャンルに挑戦してみたいですね。
──最後にメッセージをお願いします。
監督: いまの日本映画では珍しい作品ですし、日本人が本来持っている優しさや穏やかさ、愛情を素直に描いた作品なので、それが映画の中から伝わればと思います。様々な年代のストーリーなので、観る方が自分のこととして登場人物を捉えてくれたら嬉しいです。
2013年11月22日
『すべては君に逢えたから』
2013年11月22日(金)新宿ピカデリー他 全国ロードショー