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子どもたちの生きる力をシェアしたい ── 『子どもが教えてくれたこと』アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督インタビュー

子どもが教えてくれたこと

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病気と闘いながらも今を懸命に生きる5人の子どもたちの日常を追った感動のドキュメンタリー『子どもが教えてくれたこと』が、7月14日(土)より公開。監督は、自身の娘を病気で亡くした過去を持ち、娘との日々を綴った著書がベストセラーとなったジャーナリストのアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン。自らの経験をもとに、子どもたちの持つ力を見事に映し出した本作は、フランスで23万人を動員する大ヒットを記録し、多くの人々の心を掴んだ。本作の公開を前に来日したアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督にお話を伺いました。
子どもたちの生きる力をシェアしたい ── 『子どもが教えてくれたこと』アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督インタビュー
──どのような思いから、この子どもたちの姿を伝えようと思ったのですか?
監督:私自身の個人的な体験からです。娘の病気、そして彼女の死を通して私たち家族は言葉では言い表せない体験をしましたが、そうした体験をしたのは決して私たちだけではなかった。病気の子どもを持つ家族は、子ども達の生き方に勇気づけられ、支えられているんだということを一つの作品として描きたいと思うようになりました。もし自分自身がそんな体験をしていなかったら、このような映画を撮ろうと思わなかっただろうし、たとえ病気の子どもをフィーチャーしたドキュメンタリーを撮ったとしても、こんなに明るく輝くような作品にはなっていなかったでしょう。
──ご自身の体験を綴った著書はベストセラーになっています。あえて映画監督として「自分が撮らなければ」と思ったのは?
監督:やはり自分が同じような体験をしているので、私なら語れる、いや語るべきだと思いました。映像にしたのは、子どもの言葉を文章にするのは意味がないと思ったんです。彼ら自身が、自発的に自分の言葉で語っているのを表現するのは、やはり映画しかないと思いました。
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──5人の子どもたちはみな明るくて個性的でした。キャスティングについて教えてください。
監督:最初から、明るく輝いた映画にしようと具体的に考えていたわけじゃないので、キャスティングの基準として「明るい子を」ということはありませんでした。ただ、病気だけれど自分の世界観、人生観を語れるような子を探してもらったら、たまたまこの5人の陽気な子たちになったんです。もちろん悲しい時もあるけど、子どもって長いこと悲しんでいることが出来なくて、結構すぐに笑ったり元気になったり(笑)。それが子どもの本質ですよね。
──5〜9歳の子どもたちが中心でしたが、年齢も考慮しましたか?
監督:もしティーンエイジャーだったら見方が変わるから違った印象の映画になっていたでしょうね。やはりこの年齢が、一番語ってくれると思いました。
──みんな同じ病院で一緒に遊んでいるような錯覚になりましたが、それぞれが知り合いだったわけじゃないんですね。
監督:フランスの地方の色んなところに住んでいる、知らない者同士の子たちです。撮影当時は私だけが繋がっていたの。病気という共通項があるけど、“生きる喜び”というものまた彼らの共通項。それが、ほかの子のシーンに移っても呼応し合って統一感が出ていたのね。彼らがそういう印象を与えてくれたのだと思う。
──子どもたちは好奇心旺盛で、カメラもすんなりと受け入れる印象がありますが、ご家族を説得するのは難しかったですか?
監督:皆さんが快諾してくれました。ご家族も、自分の子どもが映画に出て有名になって欲しいとか、そういう思いは全くありません。大変な闘病生活を送りながらも、子どもたちが自分の人生を満喫し、精一杯生きようとしている姿を家族として知っているけど、これを家族以外の人にも伝えたいという思いが強かったんだと思います。この子たちが私たちに伝えてくれるメッセージは普遍的なもの。世界中の人々が「幸せとは何だろう?」と胸に迫るものがありますからね。
──撮影中に、これは撮るべきかと悩むシーンはありましたか?
監督:それは私が考えるというよりも、子どもたちが決めるの。正直、「来て!」と言われても「これは撮っていいのかな…」と思ったこともある。苦しむのを見るのはあまりに辛いし、こんなことあっちゃいけない…ってどこかで思うから。でも彼らは真実を撮って欲しいと思っている。それに、苦しい瞬間を見たからこそ、それを乗り越えた時に光り輝く印象を受けますよね。夜があるから太陽を喜べるようにね。

個人的なエピソードだけど、シャルルとの対話は印象的だった。彼の入浴シーンを撮るのは本当に辛かったの。撮るべきか悩んだけど、彼にとってはそれが日常。「ちゃんとカメラ回ってる?」って聞くんです。その後シャルルは私の娘について聞いてきた。「あなたの娘が亡くなった時、どうして亡くなったって確信したの?」って。大人はこんな質問しないわよね(笑)。私はすごく動揺したし、カメラマンや看護師も凍り付いていたわ。でもシャルルとしては、自分の日常を真摯に私に見せているから、当然、私も真摯に答えてくれるだろうという気持ちがあったと思う。人はどんな風に死ぬの?もしかしてホラー映画みたいに死ぬの?って想像していて、純粋に質問したのね。私はそれに真摯に答えて、シャルルも満足してくれた。心と心が誠実に通い合った瞬間だったわ。
──子どもたちが発する言葉にハッとさせられる事が多かったです。真摯に向き合ってこそ引き出せるのですね。
監督:でも私が引き出したんじゃないの(笑)。彼らが自発的に言っているのを、私が聞くだけ。彼らの目線で聞くように意識はしていたけど。彼らは常に色んなことを考えていて、大切なものがたくさんあり、言いたいことが山ほどあるの。無理強いしても何も出てこないけど、自由にさせていると本音がポロリと出てくるのね。
──それぞれの子どもたちとカメラとの距離感は考えましたか?
監督:大人同士だと適切な距離感があってなかなか撮りにくいこともあるけれど、子どもって、「ちょっと離れて」とか「もっと近くに」って正直に言ってくれる。この映画はあまりクローズアップがなくて、ちょうど手を取れるくらいの距離で撮っているの。それでも、アンブルは「隣に座って」と女の子同士でおしゃべりするタイプ、テュデュアルは私を前に座らせてお話するタイプ。それぞれ必要としている距離感が違っていたわ。
──この作品はフランスで大ヒットしましたが、この状況をどう受け止めていますか?
監督:想像を絶するアドベンチャーだったわ。子どもたちの生きる力をシェアしたいという気持ちから作り、たくさんの人たちが観て受け止めてくれた。生きる力をシェア出来たということ。監督は私だけど、このドキュメンタリーの美しさは私だけが作り出したものではない。子どもたちに感謝したいという気持ちが大きいです。
──この作品を通して勇気づけられる方が多いと思います。同じような環境にある子どもたち、特にそのご家族や医療に携わる方に、何かアドバイスがあればお願いします。
監督:子どもを信頼して欲しいです。病気は子どもの人生の一つの出来事だから、彼らを信頼して真実を伝えて欲しいですね。ご両親には、頑張って勇気を持ってと言いたい。ひとつアドバイスを送るなら、あまり遠くの未来のことを考えず、今この瞬間を生きてくださいと言いたいです。


2018年7月13日
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『子どもが教えてくれたこと』
2018年7月14日(土)より、シネスイッチ銀座ほかにて公開
公式サイト:http://kodomo-oshiete.com/