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同じくらいにぶつかり合うからこそ楽しい関係でいられる──『婚前特急』前田弘二監督インタビュー

婚前特急

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5人の彼氏を持つ24歳のOLが、友人の結婚をきっかけに、“ほんとうの相手”探しに奔走する姿を描いた『婚前特急』。『蛇にピアス』『GANTZ』のほかTVドラマやCMで活躍する吉高由里子を主演に迎え、5人の彼氏にはSAKEROCKの浜野謙太、加瀬亮、青木崇高、吉村卓也、榎木孝明。この個性的なキャラクターたちが織りなす恋愛模様を、毒気も交えつつコミカルかつキュートに描いたのは、これまで短編映画を中心に制作し、国内外から高い評価を受けてきた前田弘二監督。自らの企画をもとに、本作で劇場長編映画デビューを飾った前田監督にお話を伺いました。
──登場人物のキャラクターが立っていて、テンポもよく楽しませて頂きました。脚本も手掛けられていますが、5人の彼氏を査定する女性を主人公にしたのは?
監督:この話は4年前に思いついたんですけど、ノールールというか、自由な価値観をわかりやすく打ち出すキャラクターを描きたかったんです。彼氏が何人もいるってわかりやすいですよね。最初は7人だったんですけど(笑)。

『婚前特急』『婚前特急』
映画では、主人公が行動を起こしてドタバタが生まれていくんですが、感情が前に出るキャラクターじゃないと行動を起こさないと思うので、プライドが高く、勝ち気でわがままな女性にしました。個人的には、「こんな人好き」と誰もが共感できるキャラクターよりは、「普通、こういう人苦手なんだけど…」というところから、何か価値観を揺さぶるものを見出せるキャラクターにしたいと思っていました。
──その勝ち気な主人公チエに吉高由里子さんを起用したのは?
監督:チエは土足で人の心に踏み込んでいく、一歩間違えると面倒くさい嫌なタイプ。全部うまくいかなくてずっと怒っているので、イメージは良くないんですけど、吉高さんはそれをポンっと軽やかにひっくり返してくれて、「あ、ありかも…」と思わせてくれる魅力がありました。繊細が故に空回りして大胆な行動をとるし、真剣が故に滑稽に見えてくるというキャラクターなので、感情を繊細に演じつつ、行動はコミカルで、狂気じみたところも軽やかに乗り越える、そういうチエの魅力を活かしてくれそうだったのが吉高さんでした。
──一方で、タクミを演じたSAKEROCKの浜野謙太さんは、役者ではないけどいい味出していましたね。どんな発想でハマケンさんに辿り着いたのですか?
監督:役者さんで探そうと思ったんですけど、なかなか辿り着かなくて(笑)。5年ぐらい前にSAKEROCKでハマケンさんを見たことがあって、いいなとは思っていたんですけど、役者じゃないし(笑)。でも、実際に会って「この人だ」と思いました。ふてぶてしいけど、どっかで許せちゃう、頭では嫌だと思いながらも、チエと同じく何か価値観を揺さぶられるというか、自分のものさし以外の見方もあると思わせてくれる感じが欲しかったんです。あと、チエとエネルギーが対等でありたかった。どっちかが弱くてもダメで、同じくらいにぶつかりあって、同じくらいだからこそ楽しくいられるものだと思うので。
──そんな2人がぶつかり合うケンカシーンは、思わずリキんでしまいました。
監督:壁が壊れるシーンとかあったので、怪我が怖かったですね(笑)。アパートの壁をひとつぶち抜いて、壊れるような壁を一枚入れたんですけど、本人たちも怖かったと思います。熱が入る芝居だったし、ケンカシーンからワンカットで撮ったので、失敗できませんでした…。
──これまで自主映画を撮られていますが、この劇場公開デビューとなる『婚前特急』では、携帯ドラマも手掛けるなど大きなプロジェクトになっています。プレッシャーとかありませんでしたか?
監督:プレッシャーはもちろんありましたけど、自分で考えた企画でもあったので、のびのびと出来ました。自主制作の映画って全部自分のお金で作るので、お金がないと出来ることが制限されてしまうんです。今回は…言い方悪いですけど、今まで出来なかったことが出来たりして楽しかったですね。ありがたいことです。
──監督はもともと美容師から映画監督に転身していますね。いつ頃から映画を撮りたいと思ったのですか?
監督:その辺、ちょっと曖昧なんですけど…。(三重県で)3年ぐらい美容師として働いた後、東京に出たんです。目的もなく行き当たりばったりだったんですけど、新宿TSUTAYAでアルバイトを始めた時、そこで自主映画を撮っていた山田広野さんと出会って、「僕の映画に出ない?」って誘われました(笑)。翌々日に撮影で、物語もそこで考えて、その日に撮ってその日に上映するというものでした。リリー・フランキーさんの「スナック・リリー」というイベントで上映したんですが、これが面白かったんですよね。それで、「こんな簡単なんだ!」って勘違いしました(笑)。

最初は、監督というよりも先に脚本を書き始めたんですけど、その流れで役者さんと知り合うようになりました。『婚前特急』にもチエの年上の後輩役で出ている宇野祥平君と出会って、彼もまた東京に来たばかりだったんですけど、「俺主演で撮ったらええやん」みたいなことを言い出して(笑)。軽い気持ちで撮り始めたら、楽しくなってどんどん欲が芽生えてきたという感じでしたね。
──最初は役者として映画に関わったんですね。
監督:役者と言えるのか微妙なんですけど(笑)。山田広野さんはよく、TSUTAYAで働いてる人を捕まえては映画を撮って、もう200本以上撮っていると思うんですけど、ステップワークが軽いんです。それが、「僕にも出来るかも…」という勘違いを生んだので(笑)。
──他に影響された監督や映画はどんなものですか?
監督:いろんな映画が好きですけど、日本では森崎東さんとか好きですね。スクリューボールコメディとかやヌーベルバーグも好きでよく観ていましたね。
──今後撮ってみたいテーマなどは?
監督:やっぱり色々な喜劇を撮ってみたいです。これから映画としてやれることがたくさんあるんじゃないかと思っているので。ラブコメとか、いくつか考えてますけど、海外でもしっかり作ってる作品も観ながら、もっと作っていきたいと思います。
──最後に、『婚前特急』をご覧になる方にメッセージをお願いします。
監督:スクリーンの中、常識を飛び越えて暴れ回るチエを通して、スカッとできると思うので、是非楽しんでください。
2011年4月1日
『婚前特急』
2011年4月1日(金)より、テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
公式サイト:http://konzentokkyu.com