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ストップモーション・アニメは「わびさび」に通じる ── 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』ブラッド・シフ インタビュー

KUBO/クボ 二本の弦の秘密

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『ティム・バートンのコープスブライド』『コララインとボタンの魔女』など数々の傑作を送り出してきた製作スタジオ<ライカ>による最新作『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』が、11月18日(土)より公開。ストップモーション・アニメ世界最高峰の技術を持つ彼らが今回テーマに挑んだのは、“古き日本の世界”。不思議な力を持つ少年・クボを主人公に、情感あふれる日本の風景や風習を、息を呑む美しさで描き出し、第89回アカデミー賞長編アニメーション部門やゴールデン・グローブ賞、アニー賞など83ノミネート、27受賞を果たした。映画の公開を前に来日した、アニメーション・スーパーバイザーのブラッド・シフ氏にお話を伺いました。
ストップモーション・アニメは「わびさび」に通じる ── 『KUBO クボ 二本の弦の秘密』ブラッド・シフ インタビュー
──アニメーション・スーパーバイザーとは、この作品においてどんな役割なのですか?
ブラッド・シフ(以下、シフ):簡単に言うと、映画の中で動いている全てのものの責任を負うこと。アニメーターはそれぞれにスタイルや強みがあるけど、個性が違うとブレが生じるので、35人のアニメーターの仕事を、まるで1人の人が作ったかのように仕上げるのが僕の責任です。ストップモーション・アニメのクリエーターは少ないけれど、その中でも最高のオールスターチームを組みました。世界中から最高の人材が揃い、作品毎に成長しているし、スーパーバイザーとして心強かったです。
──日本の文化や風景を、深く美しく、わびさびを加えて描いていただいて嬉しかったです。ご自身は、これまで日本に対してどのような印象を持っていたのですか?
シフ:日本の文化には内在的な美しさがあり、以前から共感するものがありました。日本の美術、映画作りやアニメーション、そして日本食も大好きなので(笑)、脚本を読んだ時は、もっと掘り下げることが出来ると思ってワクワクしました。企画を開発していく中で、美術や神話についてリサーチし、日本文化に没入することが出来たし、全員がリスペクトをもって日本の文化を正しく描かなければと思いました。
──リサーチする中で、新しく知った事はありましたか?
シフ:「だから美しいと感じるんだ」と思わせてくれるものばかりでした。たとえば「わびさび」です。この概念を、この作品に関わるまで知りませんでした。未だ完全に理解しているわけではないけれど、ストップモーション・アニメは元々「わびさび」的な感覚があるものだと思うんです。言い換えれば、不完全なところが美しい。これは「わびさび」に通じるんじゃないかと思っています。
──日本映画も好きだとのことですが、今回の作品では、どんなものを参考にしたのですか?
シフ:日本の方々の動き、型、身のこなしを参考にするために、黒澤映画をたくさん観ました。ただ、黒澤映画ってあまり子供が出てこないんです。クボの持つ純真さ、控え目でありながら遊び心がある少年像、そのキャラクターを掴むために参考にしたのは『E.T.』のヘンリー・トーマスや、『グーニーズ』の少年たちでした。
──ストップモーション・アニメは途方もない作業の繰り返しですよね。
シフ:本当に、映画作りという意味では大変すぎる作業です。今回の作品は特に、スタジオライカ史上類を見ない作品でした。4.9mの巨大な骸骨や、ムーン・ビースト、目玉のクリーチャーにしても、一個だけでも大変なのにね(笑)。

さらには衣装も、江戸時代の日本を舞台にしているので、着物の袖はゆったりしているし、髪も長い。これは大きなチャレンジでした。今までのストップモーション・アニメで、登場人物の衣装が身体にフィットしているのには、 “動かさなくていい”という理由があったんです(笑)。着物だと、動きに合わせて自然な形で袖が落ちないと、クボが人形なんだという印象を与えてしまう。クボの髪は人毛にシリコンを加えて動かしているし、歩く度に動く三味線、水の入ったヘチマ、それら全てを1つのキャラクターとして扱わなければいけないから、本当に大変な作業でした。


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──今回は3Dプリンターも導入されていますね。技術的にパペットと3Dプリンター、そしてCGは、どのように使い分けたのですか?
シフ:パペットは3Dプリンターで作ったパーツを使っているけど、デザイン自体はコンピューターで作業しています。クボの顔は全部3Dプリンターです。まずは2Dのデザインをベースに粘土でモデルを作る。そのモデルをスキャンして3Dでデジタルモデルを作り、そこから顔のパーツを作っていきます。先に役者の声を撮っているので、監督と相談しながらクボの表情、微笑みやしかめ面、哀しい時など全ての感情を考えて、ソフトウェアでデザインしていき、それを3Dプリントします。

顔は、口と眉のコンビネーションで色んなニュアンスを利かせることが出来るけど、やはり目は人の魂、気持ちの窓なので、表情ごとにパーツを代えると同時に、アニメーターがピンセットでこうして目玉を動かし、合わせてまぶたを変えていく。ちょっと目を細めたり、瞬きをするようにね。
──今、実際に動かしたものを見ていても、この人形が映像の中で動いていたんだというのが信じられないくらいです(笑)。
シフ:それは嬉しいコメントです。僕たちスタジオライカでのゴールは、ストップモーション・アニメの幅を広げてレベルアップしていくこと。映画を作る時に重要視しているのはストーリーであって、ストップモーションだという事を忘れて、没入してストーリーを追ってもらいたいんです。そしてストーリーを見ていただくためには、キャラクターが息をしている存在として見てもらわなければいけません。

毎回奨励していることだけど、例えばペンを拾う動作でも、アニメーターが自分自身でペンを拾い、それを参考に動かすこと。それによって自然な動きになります。例えば今回の作品で、洞窟の中でクボが折り紙を拾うシーン。最初はアニメーターが自分で紙を拾う動作を見せてくれたけど、紙を拾い損なった時、「今のは無視してください」と言ったんですが、僕はそれを「採用したらどう?」と言いました。人は紙をきれいに拾えないことだってあるし、不完全だからこそ人間的だと思うんです。頭だけで想像できないことを表現することにより、人間的で、自然で、呼吸しているかのようなキャラクターが生まれるのです。
──先ほど、声を先に撮っていると言っていましたが、作業としてはアフレコのほうが楽な気がしますが…?
シフ:そんなことはないよ(笑)。事前に顔の表情を作る時、そのキャラクターの表情の幅を見極めるためにも、声が先にあるのは非常に大切です。何度も声を聞きながらアニメーターが表情を動かしますが、叫んでいる時の表情や、喋っているときの手の動きなど、あらかじめ声があることによって、自ずと見えてくるものがあるし、生き生きとした生命感が出てくるんです。
──役者さんの表情や動作も作品に取り入れたのですね。
シフ:そうです。レコーディングの時にビデオも回していました。役者によっては身体全体を使って表現する人もいるけど、表情が変わらなかったり、じっと本を読みながら演じるだけの人もいる。その場合はものすごい想像力を使うけどね。マシュー・マコノヒー(クワガタ役)は身体全体を動かしていたし、シャーリーズ・セロン(サル役)もそうだけど、サルだから…参考には出来ませんでした(笑)。


2017年11月15日
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『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』
2017年11月18日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
公式サイト:http://gaga.ne.jp/kubo