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ホラー映画に“憑きもの”!『クロユリ団地』での怪奇現象とは?中田秀夫監督インタビュー

クロユリ団地

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映画『リング』の大ヒットでジャパニーズホラーを世界に知らしめた中田秀夫監督が、満を持して発表した最新作『クロユリ団地』(5/18公開)は、主演に前田敦子と成宮寛貴を迎え、老朽化した団地に越してきた主人公・明日香が、しだいに恐怖と孤独に囚われゆく様を描いていたホラー作品。ドラマ性と様式美にこだわるホラー界の巨匠自らが「集大成」と語り、既に海外での上映も決定するなど注目を集める『クロユリ団地』の公開を前に、中田監督に直撃。今作に込めた想いや、これまでの恐怖体験を伺いました。
ホラー映画に“憑きもの”!『クロユリ団地』での怪奇現象とは?中田秀夫監督インタビュー
──この映画ははじめからストーリーや前田敦子さんの主演は決まっていたんですか?
監督:決まっていなかったです。プロデューサーとどんなストーリーにするか話し合う中で、僕が近年観て泣いてしまったスウェーデンのホラー映画『僕のエリ 200歳の少女』のようなものにしたいと考えました。少年少女の孤独感、結びつこうとしても結びつけない、心に傷を負った者同士の物語を、現代の日本を舞台に撮ってみたいと思い、脚本家の加藤淳也さん、三宅隆太さんと物語を作っていく過程で前田敦子さん、成宮寛貴さんを指名したという流れです。
──W主演となった前田敦子さん、成宮寛貴さんとのコラボレーションはいかがでしたか?
監督:前田さんは、心に傷を抱えている難しい役をみごとに演じてくれました。人気グループを卒業し、これからは映画女優でやってゆくんだという意思を強く感じましたね。撮影したのは前田さんが20歳の頃でしたが、高校を卒業したてのような少女性を持っていて役の雰囲気にもぴったりでした。

成宮くんは以前、ドラマ「なでしこ隊〜少女達だけが見た特攻隊」に出演しているのを観て、いつか一緒に仕事をしたいと思っていました。彼も『女優霊』を観てそう思ってくれていたそうです。期待どおり素晴らしい仕事をしてくれました。
──『リング』や『仄暗い水の底から』に続き、今回もミノル君という特殊な子どもが登場します。監督にとって“子ども”は恐怖のアイコンとして表現しやすいのでしょうか?
監督:多少あるかもしれないですね。『リング』も『仄暗い水の底から』も原作ありきですが、撮影では、小学校にあがるかあがらないかぐらいがちょうどいいと思っています。それ以下だとハンドリングしにくくなってしまうので。今回の田中奏生くんも知性も感受性も豊かな子で、頑張ってくれました。

あと、例えば『リング』に出てきた松嶋さん演じる浅川玲子の子・陽一は胎内記憶があるという設定でしたが、5〜6歳の子どもってまだ「無」の世界から生まれ出でて5〜6年ですよね。胎児になるさらに前、無の世界を“あの世”だと仮定すると、完全に僕らよりはあの世に距離が近い存在なわけです。お年寄りもそうだと思いますが。現実のしがらみの中で生きている我々より、もっと自由で、心霊化しやすいというか、“あの世”との親和力が高いんじゃないかと僕は勝手に理解してます。
──これまで何本もホラー映画を撮られてきて、恐怖表現で観客の意外だった反応は?
監督:僕の場合は、心霊現象の実話を参考にしながらも、あり得ない設定で表現することがあって、『リング』で貞子がテレビから出てくるっていうのはその典型だと思うんですが、これを脚本の字面で読んだ人は最初笑ってたくらいなんです。でも、笑われないためにどうすればいいのか、普段そんなことを信じない人が映画館で1時間過ごすうち、あのシーンで本当に恐怖を感じてもらうにはどうしたら良いか、工夫してあの表現にしました。

その結果、『リング』という作品は現実に飛び火したというか、「映っていないテレビが怖くなった」とか「砂嵐が怖い」とか、ずいぶん言われるようになりましたね。幸いなことに、テレビは一家に一台じゃなくて一人一台になりつつある時に『リング』が出たので、妙に現実味が出てきたんだと思います。狙っていたわけではないので、望外の幸せでした。
──今回の撮影中に不思議な現象はあったんですか?
監督:ありました。画面に幽霊が映ってしまうというのではないけど、祈祷するシーンで、全く音が撮れていなかったというのはありました。バックアップ用に2つのハードディスクを用意していたんですが、祈祷の声が全く撮れてないんです。ボタンを押さなかったのでは?とかじゃなく、大ベテランの録音技師もいたし、僕も自分の声を入れて確認してるので、間違いないんですが、ファイルが入っていなかった。あれは不思議でしたね。
──監督自身、心霊体験は?
監督:金縛りぐらいならあるけど…。実は僕はホラー監督でありながら、基本的には信じていないんです。ただ、「見た」と言っている人は嘘のない目で語るので、その人の話は信じますよ。あと、霊が見える場所というのはもっとアットランダムにあってもいいはずなのに、多くの人が決まった場所で見ているというのは説明が付かないですよね。

例えば『リング2』で謎の声が入っていたのは、テレビで特集が組まれたり思わぬPRになったんですが、地元の方に聞くと、「昔、水死体が流れてきた」とか「自殺の名所だ」とか言われたりするんですよね。撮影のときも僕も実際に岩肌の奥から唸り声を聞いたし、霊感の強いスタッフや女優さんが、あり得ない高さのところでブランコに乗っている女の子を同時に見ていたりしました。いつもなら、僕の中の大槻教授(笑)は理由を探すんですが、こういう時はやはり説明が付かないなと思いますね。

あと、『クロユリ団地』でも霊感の強い女優さんがいて、ふと「監督、今晩気をつけた方がいいわよ」と言われて困りました(笑)。でも、前日に日活のスタッフルームの階段を転げ落ちたので、「昨日転んだので大丈夫だと思います」って言ったら大丈夫だった。自ら「霊感が強い」と宣言してる人に言われたら驚きますよね。見えてても黙っていて欲しいと思います(笑)。
クロユリ団地
──最後に、これからご覧になる方にメッセージをお願いします。
監督:『リング』や『仄暗い水の底から』といったような今までやってきたものと共通する要素を持ちながら、いかに現代の要素を入れるかという事を脚本の段階からずっと考えました。ニュースで流れているような、現代社会が持つある種の歪みというか、人と人が孤立したまま生きたり、隣人と友だちになりたいと思っていても、ちょっとした行き違いやすれ違いのためにかなわない。人同士が結びつけないでいるその隙間に、この世のものではない何者かが入ってくる。図らずもそちらと繋がってしまう怖さや哀しさ、それがこの映画のテーマです。若々しいキャストの方3人と、しっかりエンターテインメントなホラー作品が出来て光栄に思いますし、約20年ホラー作品を撮ってきたので、その集大成となるべく一生懸命つくった作品です。皆さん楽しんで怖がってくれたら嬉しいです。
2013年5月16日
『クロユリ団地』
2013年5月18日(土)崩壊
公式サイト:http://www.kuroyuri-danchi.jp