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韓国の新しいノワール作品を目指した ── 『名もなき野良犬の輪舞』ビョン・ソンヒョン監督インタビュー

名もなき野良犬の輪舞

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『シルミド』『力道山』『ソウォン/願い』など数多くの映画に主演する名優ソル・ギョングと、ボーイズグループZE:Aのメンバーで、「ミセン-未生-」『弁護人』に出演し役者としても高い評価を得てきたイム・シワンが共演する映画『名もなき野良犬の輪舞』が、5月5日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。本作は、自分以外の誰も信用することなく生きてきた豪腕ヤクザの受刑者ジェホと、刑務所へ入所してきた野心的な新入りヒョンスを軸に、裏社会に生きる男たちの非情な運命を描いたドラマ。映画の公開を前に、メガホンをとったビョン・ソンヒョン監督にお話を伺いました。
韓国の新しいノワール作品を目指した ── 『名もなき野良犬の輪舞』ビョン・ソンヒョン監督インタビュー
──前作『マイ PS パートナー』はロマンティック・コメディでしたが、今作ではガラリとジャンルが変わりましたね。
監督:前作でロマンティック・コメディを撮ったので、次の作品は男らしい骨太な作品を撮りたいと考えていました。まず先に、ノワールというジャンルを決めて全てが始まりました。毎回スタイルや構成には気を遣いますが、韓国で未だかつてなかったような新しいノワール、ドライでスタイリッシュな作風を目指しました。
──主人公二人のコントラスト、友情と裏切り、時間軸、ユーモアとハードボイルドのバランスが巧みで完成度も高く、ラストまで食い入るように観ていました。様々な要素の中で最も拘ったのは?
監督:内容で最も気を遣ったのは、二人の主人公の感情の動きです。この物語は、二人の感情の動きなくしてはストーリーが成立しません。お互いがそれぞれ少しずつ間違った選択をすることによって、あの結末を迎えるんです。
──ジェホを演じたソル・ギョングさんのカリスマ性と哀愁が素晴らしかったです。監督自身が脚本を書かれていますが、ソル・ギョングさんを想定していたのですか?
監督:僕が映画の道を志した時は、ちょうど韓国映画のルネサンス期で、その先頭を走っていたのがソル・ギョングさんでした。尊敬していたし、いつか一緒に仕事をしたいと夢見ていた俳優です。

でも、脚本を書いていた時に彼を想定していたわけではありません。むしろ、一般的にギョングさんに対して皆が抱いていたイメージ、素朴なおじさんや時代に翻弄されて狂気を帯びていく姿ではなく、違うソル・ギョングを見せたいと思い、彼にオファーしました。この映画では、普段あまり着ないであろうスーツ、そしてあまり見たことのないオールバックの髪型など、どこまでも格好良く、セクシーさが感じられるキャラクターにしました。

シナリオを渡した1週間後くらいに連絡があり、お酒を酌み交わして話し合い、OKをもらった時は嬉しかったです。
『名もなき野良犬の輪舞』

──対するヒョンスを演じたイム・シワンさんからは、どんな魅力を引き出そうと思いましたか?
監督:映画の中でヒョンスが成長していく姿を描きたいと思いました。ヒョンスは、少年っぽさと男性的な強さを持ち合わせているキャラクターで、美しさも必要です。単なるハンサムというだけじゃなく、例えるなら、80〜90年代の香港映画のレスリー・チャンのような美しさをイメージしていました。

この映画で、ギョングさんとシワンさんは、いくつかの賞を獲りました。ギョングさんの演技が上手いというのは韓国国民全てが知るところですが、僕が驚いたのはシワンさんでした。現場では、僕が考えていた演技と違う演技を何度か見せてくれました。例えば、本編の序盤で初めてジェホとヒョンスが顔合わせするシーンでは、ヒョンスが緊張しその後溶け込んでいくという想定だったけど、シワンさんは余裕の笑顔を見せました。とてもヒョンスらしいと思ったので採用しました。彼なりにヒョンスというキャラクターを消化し、自分がすべきことを果たしてくれたのです。
『名もなき野良犬の輪舞』

──原題の「不汗党」、英題では「The Merciless」で、直訳すると“無慈悲”ですが、日本語タイトルは『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』となりました。日本語タイトルにはどういう印象を受けましたか?
監督:最初は“輪舞”という意味がわからなかったのですが、とても日本らしいタイトルだと思いました。韓国語のタイトルは、最初に自分が仮でつけたものがそのまま残ってしまい、実はあまり気に入っていないんです(笑)。他に考えつかなかったというか…。むしろ、日本タイトルのほうが良かったなと思いました(笑)。
『名もなき野良犬の輪舞』

──監督の映画人生の中で、指標となった監督や作品はありますか?
監督:マーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノ、ジョニー・トーから多大な影響を受けています。ただ、ジャンルにとらわれることなく色んな作品を観てきましたが、監督としてこれといった目標があるわけではありません。自分自身、映画監督は1つの職業に過ぎないと思っていて、一生映画監督を続けようと思っているわけじゃないんです。いつか辞める日もくるかもしれない。でもその時は、ちゃんと皆に職業意識があった監督だったと記憶して欲しいと思っているので、今はただ、上手く作品を作っていきたいと思っています。
──監督として、ジャンルに拘っているわけじゃないと思いますが、できればまた今作のような硬派な作品を撮って欲しいと思いました。次回作について可能な範囲で教えてください。
監督:『キング・メーカー(仮)』という政治ドラマになります。選挙に関わる人々が、互いに食うか食われるかの戦略を練るというものです。確定ではありませんが、ソル・ギョングさんとは「また一緒に仕事をしたい」と言っていたので、叶うかもしれません。
──それは楽しみにしています!最後にメッセージをお願いします
監督:楽しんで観て欲しいのはもちろんですが、小さな願いを一つ言うならば、見終わった後、この映画について語り合う時間が少しでも長く続く、そんな作品になっていれば嬉しいです。


2018年5月2日
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『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』
2018年5月5日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
公式サイト:http://norainu-movie.com/