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歌舞伎の絵巻物のような殺陣シーンを描きたかった──『ミロクローゼ』石橋義正監督インタビュー

ミロクローゼ

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「バミリオン・プレジャーナイト」「オー!マイキー」などのテレビ番組で、その独特の世界観と映像美が高く評価されている石橋義正が、本格的な実写映画に取り組み、監督・脚本・美術・編集・音楽を担当した映画『ミロクローゼ』。既に約30の国際映画祭で上映され、アメリカのニューヨークアジア映画祭では、主演・山田孝之が日本人初のライジング・スター・アワードを受賞。北米最大級の映画祭ファンタジア・フェスティバルでは最優秀監督賞を含む4つの賞を受賞するなど、各国で絶賛された本作が、いよいよ11月24日(土)よりシネクイントほかにて公開される。この公開を前に、石橋監督を直撃。本作にかける思いを伺いました。
歌舞伎の絵巻物のような殺陣シーンを描きたかった──『ミロクローゼ』石橋義正監督インタビュー
──何がきっかけで『ミロクローゼ』を作ろうと思ったのですか?
監督:普段から色んなアイデアを集めたりメモしたりするんですが、大きなきっかけとなったのが、殺陣のシーンを作りたいと思ったことでした。高知の絵金祭りに行ったんですけど、これは絵金と言われる絵師が描いた歌舞伎絵をロウソクの炎で見るという祭りで、これが強烈なインパクトがあったんです。絵巻物のようなシーンをスローモーションで撮り、歌舞伎のような画を描けないかと考えました。
──歌舞伎が発端なんですね。監督・脚本・美術・編集・音楽の全てを担当されていますが、構想からどのくらいの時間がかかったのですか?
監督:プランニングから撮影まで4年ぐらいかかってます。資金調達もあるので、ひたすら考えてたわけじゃないけど、割と最初の段階でデザインのラフやビジュアルイメージは考えて、シナリオになっていく中で、衣装のイメージやセットのデザインを同時にあげていきました。ダンスのシーンなどはシナリオ上でもイメージしないといけないので、音楽も同時に作ったり。準備段階から作り出していた感じなので、何から先に手を着けたのか覚えていないくらいです(笑)。
──オブレネリ ブレネリギャーのエピソードから始まり、3つのストーリーにしたのは?
監督:色んなアイデアを考える中で、オブレネリ ブレネリギャーのエピソードは、何もない平凡な人をナレーションでヒーローのように描く、“おとぎ話”の構成で話を作ったら面白いんじゃないかと思いました。あと、最近は原作ものを映画化することが多いんですけど、僕の子供の頃からの憧れの存在だった「映画」というものが、だんだん夢がなくなっている感じがしていたんです。映画は映画として作って、そこから新しい展開が出来るような、映画発信の作品を作れないかと思って、バラエティ性のあるものにしようと思ったんです。ブレネリギャーは今後、映画から絵本になるような、そんな展開が出来れば夢があって良いなと思いました。
──印象的なオープニングクレジットから、突然ファンタジーなブレネリギャーのエピソードが始まり、驚きました。
『ミロクローゼ』
監督:“ミロクローゼ”とは“太陽”の象徴で、映画でも随所に出てくるんですけど、オープニングでも太陽をドンと出して、そこに向かってクレジットが飛んでいく。サウンドにもこだわったので、大きい劇場で聞くとインパクトがあると思います。それが終わった瞬間に、この“子供”が登場するというギャップをやりたかったんです(笑)。この始まりでこれか!っていう期待の裏切りを狙いました。
──ちなみに“ミロクローゼ”って何語なんですか?
監督:造語です。“弥勒菩薩(みろくぼさつ)”と、“魅力的な女性”から発想した造語で、太陽の意味と、恋する相手の総称を“ミロクローゼ”としています。“ミロクローゼ”という登場人物はマイコさんが演じているんですが、タモンにとっての“ミロクローゼ”はユリであって、ベッソンにはいないんですが、彼がアドバイスする、恋をする人たちの相手が“ミロクローゼ”になります。
──最初に思いついたという(タモンの)殺陣のシーンは圧巻で、まさに歌舞伎や絵巻物のようでした。
監督:最初は全部CGでやろうと思ったんですけど、色々考えたあげく、幅30mのセットを作って役者に一斉にリアルタイムに動いてもらい、ハイスピードカメラで撮っていくという、シンプルな作り方にしました。
──座布団が飛ぶタイミングや人が倒れるタイミングとその形、奥行きなど、もの凄いこだわりが見えました。
『ミロクローゼ』
監督:すごくこだわりました。手前で演じている人はもちろんですけど、奥の人たちのポジションがいい状態でないと、あのシーンを作る意味がなかったんです。平面的に見えながら奥行きがあり、その奥の方の動きにも注目して楽しめるシーンにしたかった。座布団などはリアルに飛んでますけど、茶碗や小物はCGで付け足しています。アクションは、歌舞伎のような絵を作りたかったので、とにかく大げさに、歌舞伎の動きを意識してもらいました。

あと、スローモーションだと、刀で斬ってるシーンで、相手が刀を避けているのがばれてしまうので、実際に刀を当てています。倒れる時も手から落ちない…など、リアルにしたのでみんな怪我してました(笑)。映像で観てると気にならないかもしれないけど、実際はすごいスピードで動いているし、密度を濃くしたかったので、空間も狭い。その中で刀を振り回すので、ハラハラしながら撮影していました。
『ミロクローゼ』 『ミロクローゼ』『ミロクローゼ』
──主演の山田孝之さんは本当に多才な方ですね。起用されたのは?
監督:3つの役を1人で演じるので、演技力が必要でした。あと、タモンには色気も必要です。最近は、スマートな印象の俳優さんが多いので、男らしさと色気のある俳優さんがなかなかピンとこなかった。そんな中で、山田孝之さんは昔ながらのギラっとした男らしさがあって、こういう人を求めていたんだ!と思っていました。本人も「1人3役を1本の映画で出来るのは贅沢なので是非やりたい」と言ってくれました。
──1人3役は最初に決まっていたんですか?
監督:もともと5人だったんですけど、イメージを固めていく中で3人になり、それを1人に演じてもらうことになりました。映画とはまた別のテーマになるんですけど、1人の登場人物の色んな側面を描くのではなく、全くバラバラのシーンを作ることで、最終的に1人の人物像を描くことにチャレンジしてみたかったんです。バラエティ性があって全然違う楽しみが出来るシーンが次から次へとくるけど、観終わったら観客が各々に、山田孝之でもない別の違う人物をイメージできるように。これにはかなり自然な演技力が必要だったんですが、見事にやってくれたので成立しました。
──鈴木清順監督や原田美枝子さんなど、脇役も豪華です。
『ミロクローゼ』
監督:出てくれたらいいな…と思っていたら本当に出てくれました(笑)。清順監督とは、すぐに記念写真撮りました(笑)。しばくシーンがあったんですが、「入れ歯とろうか?」とか言いながら楽しんで演じてくれました。原田さんも殺陣のシーンを楽しみにしていて、刀を鞘におさめる動作もご自身で相当稽古していたようです。(賭博シーンで)ツボにサイコロを入れるのも、ツボを見ずに入れるのでなかなか入らなくて、リハーサルではみんなで笑い転げてました。
──本作は日本より先に海外で既に評価を受けていますね。製作段階で狙っていたんですか?
監督:作品を作るときは常に意識しています。言葉よりも、ビジュアルやサウンドのほうが伝わりやすいし、現代はどこでも別の国の文化の情報を得られる状態なので、映画の中で日本的な文化が出てきても、すんなりと受け入れてくれます。

海外の上映で意外だったのは、原田さん演じるお竜が賭博でいかさまを問われ、しらを切る時に、耳をほじくるシーンでした(笑)。どこの国でもなぜか異常にウケるんです。
──確かに細かいシーンですが、私もかなりウケました。なぜいきなり耳を…。もちろん台本に書いてあるんですよね(笑)?
監督:書いてあるんですけど、何故入れたか覚えてないんです。そういえば原田さんも何も言わず素直にやってくれたのが不思議です(笑)。
──今作は、作りたいものを全部詰めこんだという監督のエネルギーを感じました。ご自身では、自分の表現したいものが全部かたちになったと思えましたか?
監督:この作品を作った時は、やり終えた感と、全力疾走で完走した充実感がありました。でも、のんびりしている時より動いている時のほうがアイデアは出てくるもので、この作品を作っている時や、完成して海外を廻っている時も、新しいものに興味をもったりアイデアが出てきたりしました。もう次の作品のことを考えてます。
──こだわり抜いて作られると思うので、映画監督としては寡作になりそうですが(笑)、楽しみにしています。次はどんな作品を考えているんですか?
監督:今回は、わかりやすく恋をテーマにして描きましたけど、次は人の人生観に迫るようなものにしたいです。色んな側面から観て、いろんな感じ方出来るような作品で、なおかつ“和”もので、ビジュアルにこだわり抜いた作品にしたいですね。やはりセットや衣装で時間はかかりますけど(笑)。
──最後に『ミロクローゼ』をご覧になる方に、メッセージをお願いします。
監督:『ミロクローゼ』は、映画を鑑賞すると言うよりも、遊びに行くような感覚で観て欲しいです。映画としてじっくり楽しめる部分もありますが、お祭りやアトラクションのような感覚でノリノリで観て欲しいですね。新しい映画の楽しみ方になる思うし、音もかなり凝って作っているので、劇場でこそ楽しめると思います。是非、広いスクリーンと大きい音響で観て欲しいです。
2012年11月22日
『ミロクローゼ』
2012年11月24日(土)シネクイント他全国公開
公式サイト:http://www.milocrorze.jp