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まるで違う映画を観たかのような様々な反応があった ──『まともな男』ミヒャ・レビンスキー監督インタビュー

まともな男

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2016年スイス映画賞において最優秀脚本賞を受賞し、スイスで絶賛を浴びた映画『まともな男』が、11月18日(土)より公開。“まともな男”を自称する中年会社員トーマスが、妻と娘、上司の娘・ザラの4人で旅行に出かけるが、旅先でザラが「レイプされた」と告白したことから、事態収拾のため奔走する姿を描く。原題は『NICHTS PASSIERT(何も起こってない)。何事もなかったことにしたいトーマスの偽善的な行動や自己保身を目の当たりにし、“嫌な共感”を生んでしまう衝撃の問題作。公開を記念して初来日したミヒャ・レビンスキー監督にお話を伺いました。
まるで違う映画を観たかのような様々な反応があった ──『まともな男』ミヒャ・レビンスキー監督インタビュー
──今回が初来日とのことですが、来日した感想はいかがですか?
監督:東京は世界の中でも最も大きな都市のひとつということは知っていましたが、すごく驚いています。ベルリンなどの大都市はもっとうるさいけど、東京はとても静かで落ち着いているんです。こうしてインタビューを受けていても、静かで声のトーンも落ち着いているので、とても心地が良いです。
──『まともな男』は、主人公が良かれと思ってとった行動からどんどん悪い方向に転がっていく様が面白かったです。タイトルにも皮肉が込められ、深刻なテーマも入っていますが、これをコメディとして捉えられると戸惑いますか?
監督:意図的にコメディなのかそうじゃないのか分からないようにしているけど、実際に試写会などでは、誰かが笑い始めると、皆が一気に笑い始めるということがあった。その場の雰囲気で、コメディになったりそうじゃなかったり変化するのかもしれません。
──最初からそういう反応を狙っていたのですか?ヒューマンドラマにもスリラーにもなり得たテーマだったと思います。
監督:最初の想定としてはブラック・コメディだったけど、撮影が進むにつれて、女の子をはじめ役者たちが真剣に捉えて演じていたし、シーンごとに、これはコメディなのかそうじゃないのかディスカッションし、あえて笑いのシーンを排除していきました。撮影が進むにつれて、ちょっとづつ認識が変わっていったんです。

ジャンルが曖昧なのは、個人的には良い事だと思っていて、すぐに展開が分かってしまうものよりは、ジャンルが分からないことによって最後まで楽しんで観ていただけるんだと思う。この映画を観た人の受取り方もすごく多面的で、まるでそれぞれが違う映画を観ているかのようだった。ただ、多面的な要素がある故に、タイトルにしてもポスターにしても、これがどんな映画なのか伝えるのが難しかったかな(笑)。
『まともな男』
────主人公のトーマスは、上司の顔色を伺って自己保身に走ってしまいますが、日本では一定数いるサラリーマン像だと思います。スイスでもそうですか?
監督:日本で取材を受けて驚いたのが、主人公のこういった態度に「分かる、そういうことってあるよね…」といった反応が多かったこと。一方、スイスでは、もしかしたらそういう一面もあるけど、本人は自覚していないんだと思います。反応としては「ギョッとする」とか「こんな奴が本当にいるのか?」というのが多かったから。
──実際にトーマスのヒントとなった人物が身近にいたわけではない?
監督:モデルがいるわけじゃないけど、彼を構成している一部は私自身の中にもあるんだと思う。いなかったらそういう人間を主人公に出来ないからね(笑)。
──これまでいくつか作品を発表していますが、前作から6年のブランクを経ての新作となりました。
監督:前作の長編映画(『Will You Marry Us?』)が好評で、その後、たくさんのオファーがあってどれも真剣に考えていたけど、脚本に満足しなかったり、予算を確保出来なかったんだ。ポジティブなことで言えば、私生活で大きな変化があり、僕は2人の子どもの父親になった。仕事以外のことに集中していたんだ(笑)。
──お子さんは男の子ですか?女の子ですか?
監督:娘と息子です。
──映画では、トーマスと娘の関係、そして娘の友達との関係が描かれます。ご自身が親になったことによって、脚本に変化が生まれたりしましたか?
監督:娘はまだ7歳で幼いし、映画に影響が出たかどうかと言えば、たぶん出てないと思う。ただ、子供たちに接するなかでいつも心がけているのは、「皆に対していい顔をする必要はない」とか、「嫌だと思ったことはちゃんと“ノー”を言うこと」を教えている。そういう面は、もしかしたらこの映画とリンクしているのかもしれない。
『まともな男』『まともな男』
──トーマスたちは雪山にスキー旅行に行って事件が展開していきますが、雪国の暗さというか閉塞感が物語の世界観に合っていたと思います。展開としては夏山のキャンプでもビーチでもあり得た話かもしれませんが、あえて雪山にした意図は?
監督:スイスでは、冬の時期に余暇を過ごすとなると、雪山のコテージで過ごすのが一般的です。雪山にしたのは、閉ざされた空間であるというのがポイントで、トーマスは一人で問題を抱え、この問題をやり過ごそうとする。周囲に人がたくさんいたならば、責任や罪といったものが彼一人の中にとどまらなかっただろうから、閉ざされた雪山が良いと思ったんだ。とは言え、そこはあまり緻密に計算し尽くしたわけじゃなくて、役者のスケジュール次第では、夏のキャンプ場になっていたかもしれないよ(笑)。


2017年11月19日
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『まともな男』
2017年11月18日(土)より 新宿K‘s cinemaほか全国ロードショー
公式サイト:http://www.culturallife.jp/matomonaotoko