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映画『コーヒーをめぐる冒険』ヤン・オーレ・ゲルスター監督 オフィシャル インタビュー

コーヒーをめぐる冒険

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2013年、ドイツ・アカデミー賞9部門にノミネート、作品賞・監督賞を含む主要6部門を獲得した映画『コーヒーをめぐる冒険』。本作は、歴史あるベルリンの街を舞台に、大学を中退し人生・一時停止中の青年のある“ツイてない”一日を、モノクロ映像で追ったドラマ。行く先々で出会う、どこか普通じゃない人たちと、ちょっと奇妙な出来事を通り抜けたことで、次の道へと続く扉がぼんやりと見えてくる。そんな誰にでも身に覚えのある、何をすれば良いのか分からない不安な時期から抜け出す瞬間が、力の抜けたユーモアにアイロニーがピリッときいたタッチで繊細に描かれる。3月1日(土)の公開を前に、ヤン・オーレ・ゲルスター監督のオフィシャルインタビューが到着しました。
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──本作でのベルリンの街の見どころを教えてください。
監督:他の大都市と同じように、ベルリンにも複数の見どころがあります。絵ハガキの題材になっているブランデンブルク門や戦勝記念塔、チェックポイント・チャーリーなどです。しかし、ベルリンの本当の魅力はそこから少し外れた住宅街などに多くあると私は思っています。ベルリンに来たいという友人には、「中心地からちょこっと外れたところも見てください、それでこそ本当のベルリンがわかります」といつも言っています。例えばクロイツベルクやミッテ、プレンツラウアー・ベルク等の地区は素晴らしいと思います。
──本作でキーワードになっている「コーヒー」ですが、どうしてコーヒーを象徴的に取り上げたのですか?
監督:私にとってコーヒーは、1日の始まりの象徴です。起きて、仕事に行く前に新聞を読みながら飲みます。ニコにとっても、普通なら数ユーロ払って簡単に買えるはずだったのに、それが出来なかったことによって大変な展開の1日になっていくのです。

脚本を執筆している時の構想としては、コーヒーショップのシーンでニコが社会とのコミュニケーションで問題を抱えているのを象徴的に描こうと思いました。彼はシンプルな普通のコーヒーが飲みたかっただけなのに、コーヒーショップ店員がアラビカかコロンビアかと選択を迫ります。それが彼には難しくて、欲しかったコーヒーが手に入らず、そこから困難な1日が続いていくのです。本作のコーヒーに関しては、見る人によって様々な解釈をしてくださっています。観客によっていろいろな角度から見ることが出来る余地のある映画が大事だと思っています。
──監督は、ニコと同じ年くらいのとき、どんな青年でしたか?
監督:自分のことを語るのは非常に難しいことです。ニコと同じ年代だった頃は、確信が持てない不安定な時期だったと思います。歳をとるとともに色々学び、環境は良くなっていきますが、当時は自分に自信が持てませんでした。
──初監督作品ですが、本作を制作するにあたって、大変な思いをされたことはありましたか?また、撮影中の大変だったシーンや、印象に残っているエピソードがあったら、教えてください。
監督:私は映画学校に通っていましたが、どちらかというと生産性の低い学生で、あまり短編作品も作っていませんでした。卒業制作で本作に取りかかったときに一番困ったのが資金集めでした。プロデューサーのところへ行くと、「あなたは学校でどんな映画をつくったのですか?見せてください」と言われます。真面目な生徒たちはそういう時に見せられる作品を持っていますが、私はそうではなかったので、お金を集めるのに苦労しました。しかし幸運なことに、脚本が良かったので、読んで納得してもらうことが出来ました。

撮影に関しては、ほとんど問題は起きませんでした。ひとつ挙げるとすれば、監督は2〜3年に1本しか作品を作りませんが、キャストやスタッフたちは年に5〜6作仕事を抱えています。つまり、経験が少ない人間が、監督としてチームをリードしなくてはいけないのです。私は唯一、その状況を危惧していました。その分、一緒に仕事をする人たちに敬意を払い取り組み、そして楽しいプロジェクトにすることが出来ました。

それ以外に、時間やお金が足りないというよくある悩みはありましたが、本作に関わった全員で、創意工夫をして乗り切りました。どちらかといえば、撮影よりも編集が苦労しました。エピソードの連続からなる物語なので、どんなリズムで編集していくかを見つけるのが難しかったのです。
──全編を若手ミュージシャン「ザ・メジャー・マイナーズ」のジャズが彩っています。彼らの音楽を採用した、その決め手は何ですか?
監督:編集段階で、作曲家がまだ決まっていませんでした。音楽をどうするか考えていく中で、マイルス・デイビスやチェット・ベイカー、ジョン・コルトレーンなどの古典的なジャズを流し、作品の雰囲気に合うかどうかや、編集のリズムを作るために試していました。もちろん彼らの音楽には著作権がありますから、使用するのには予算的な問題がありました。最終的にこの古典ジャズが本作とマッチすることがわかったので、大御所に代わる音楽家を探しました。私たちが考えている音楽と内容が一致していること、60年代の感覚を持った音楽であることを条件にしました。

編集作業も終わりにさしかかった頃、たまたま友人と入ったバーで、ザ・メジャー・マイナーズが演奏をしていました。彼らはまだ21歳の学生でしたが、とても良かったのでその場で声をかけ、DVDを渡してサウンドトラックを作る気はないかと話を持ちかけました。すると数日後に、やりたいと返事をもらうことが出来ました。2週間後位にデモテープを持ってきてくれて、それが少しの修正だけでとても良いものに仕上がったので、信じられないくらいの短期間で完成させることができました。そしてドイツ・アカデミー賞では音楽賞も獲得することができたのです。彼らは今でもとても良い友人です。本作がきっかけで、彼らにも様々な依頼が舞い込んでいるようです。
──日本語タイトル『コーヒーをめぐる冒険』をどう思いますか?
監督:とても良いタイトルだと思います。実は今、アメリカの配給会社もタイトルを探しているところなので、日本題をオススメしているところなんですよ!『ニコ・フィッシャーのコーヒーをめぐる冒険』なんてタイトルになったら、『インディ・ジョーンズ』シリーズみたいで素敵ですよね。
──本作で、長編デビュー作にして多くの賞を受賞されましたが、監督ご自身に何か変化はありましたか?
監督:この映画で成功し受賞したことによって、自分が変わったかと問いかければ答えはイエスだと思います。2013年はエキサイティングな年でした。しかし今は少し距離を置いて、また新しい次のステップに向かっていかなくてはいけないと思っています。興奮の中にずっといると、竜巻の只中にいるように周りが見えなくなります。そこで、一度冷静になって考えてみると、私個人としては何も変わっていないと思うのです。変わったのはキャリア面です。2本目が作れる環境にいます。資金も以前より入手できる状況です。ひとつの作品が終わって家に帰り、そして次回作を考える、そういう個人的な部分は変わっていません。また新しい撮影に入り、その作品が気に入ってもらえたら嬉しいなと思う日常が戻ってきています。様々な映画監督が様々な作品を作り、その中でうまくいくもの、いかないものが出てきます。

私が大事だと思うのは、常に誠実であることです。自分の持っている全てを注いで作品を作っていこうと思っています。そうすれば何故こういうものができたのかということを正当化できるからです。
──『グッバイ!レーニン』の制作に広くかかわっていたそうですが、具体的にはどんなお仕事をされていたのですか?
監督:『グッバイ!レーニン』に参加させていただいたのは、映画関係での私の初めての大きな仕事でした。ベルリンに来て、Xフィルム・クリエイティブ・プール社で仕事をするようになり、『グッバイ!レーニン』の脚本を読んで感動し、監督のヴォルフガング・ベッカーに出来ることはないかと聞いたところ、ちょうどアシスタントを探していたところで、手伝わせてもらうことができました。

具体的にはキャスティング、ロケハンやリサーチに参加し、実地訓練として映画制作の全てのプロセスに関わることができとても幸運でした。さらにメイキングの撮影にも関わりました。キャスト・脚本、全てが素晴らしい映画で、かけがえのない経験をすることができました。
──日本の観客に向けて、メッセージをお願い致します。
監督:2013年は映画祭で様々なところに行きましたが、本作では残念ながら日本へ行く機会がありませんでした。次回作でそのチャンスがあればと思います。東京をブラブラと散歩してみたいですし、日本の皆さんにもぜひベルリンに来ていただきたいです。まずは『コーヒーをめぐる冒険』を見ることによって、ベルリンの1日を体験していただけたらと思います。

日本には溝口監督や黒澤監督、素晴らしい監督がたくさんいます。なので、日本の観客の皆さんは目が肥えていると思います。そんな方々に私の映画を見ていただけるのは、とても栄誉なことですし、嬉しいです。
2014年2月24日
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『コーヒーをめぐる冒険』
2014年3月1日(土)、渋谷イメージ・フォーラム他全国公開