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岡田将生と魅力的な4人の父親たち…「これが一本目で良かった!」藤井道人監督『オー!ファーザー』インタビュー

オー!ファーザー

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『重力ピエロ』『ゴールデンスランバー』と映画化される原作が次々とヒットを記録する伊坂幸太郎の同名小説を映画化した『オー!ファーザー』が、5月24日(土)より公開。本作は、主人公の高校生・由紀夫(岡田将生)が、ある日奇妙な事件に巻き込まれてしまい、彼のピンチを救うため“4人の父親”が大奮闘するサスペンスコメディ。伊坂作品ならではの、巧妙に張り巡らされた伏線と、一筋縄ではいかないキャラクターがユーモアを生み、最後には家族の絆を見つめる爽やかな感動作だ。監督・脚本は、これまでインディーズ作品などで活躍してきた藤井道人。映画の公開を前に、藤井監督にお話を伺いました。
岡田将生と魅力的な4人の父親たち…「これが一本目で良かった!」藤井道人監督『オー!ファーザー』インタビュー
──「オー!ファーザー」の映画化は、奥山和由プロデューサーの企画からスタートしたそうですが、奥山氏との出会い、脚本・監督を担当された経緯を教えてください。
監督:僕が大学生の頃、奥山さんが『TAIZO〜戦場カメラマン・一ノ瀬泰造の真実〜』という映画の講演で大学に来られました。僕の後輩がそこで奥山さんと知り合い、奥山さんが文章を書ける人間を探しているとのことで、後輩が僕を紹介してくれたんです。その後は、映画のための企画作りの時に、原作から簡単なあらすじを作る仕事を奥山さんの下でアルバイトとしてやっていました。

『オー!ファーザー』も同じ流れで、「企画書と一緒に脚本の第1稿ぐらいあったほうが…」という程度で、まだ原作にもなっていない新聞連載の時に声がかかりました。だから、最初は“脚本家”として書いた記憶がなくて、伊坂先生のファンだったし、クレジットに載らなくてもいい、いい作品に携わりたいという一心で書いていました。
──第1稿の脚本から決定稿まで、どんな部分を軸に描きましたか?
監督:「オー!ファーザー」は、一番最初に脚本に起こした時は4時間半もある大作になりました。さすがにそれでは怒られてしまうし、でも、伏線が凄く張り巡らされているので、一つを切ると後半で物語が繋がらなくなるんです。原作に出てくるドッグレースの設定を変えたり、“プリズナー”のシーンの配置など、ロケ地やキャストが決まってから脚本を書き替えたところもありますが、原作の世界観を損なわないこと、ただの「要約」にならないこと、そして、由紀夫の成長記としての物語にするということは、第1稿からブレずに描きました。
──伊坂氏は最初、映画化には難色を示していて、東日本大震災を機に映画化の話が進んだそうですね。伊坂氏からはどんな思いを託されましたか?
監督:「小説家が出来ることは、苦痛や悲しみを忘れられる一瞬を提供すること」という想いから、とにかく「エンターテイメントにして欲しい、「オー!ファーザー」ならそれが出来るんじゃないか」ということでした。

脚本化の際は、メールでキャッチボールさせていただきましたが、大幅に変更されることもなかったし、「楽しみにしています」と言われていたので、それが最大の原動力になりました。あと、“家族の絆”って各家庭で色んな捉え方があるので、そこはあまり重くはならずに、“チームワーク感”として描こうとは思いました。そこも気に入ってもらえたと思います。
──そして、脚本どころか監督まで手がけることに…
監督:まさに青天の霹靂でした。僕自身はインディーズという分野で監督をやっていて、色々経験してから、いつかはこういった作品(商業用長編映画)へ…とは思っていましたが、まさか今こうなるとは(笑)。言い表せない感情で、「よっしゃー!」というんじゃなくて、「カメラはどこだ?ドッキリか??」って感じでした(笑)。

一本の映画を作るのはもちろん大変なんですが、今回は、これだけのお金とスタッフとキャストを任されるという責任感へのプレッシャーがメンタルに直結して、クランクインのXデーまでどんどんやつれていきました(笑)。でも、クランクインしてからはもう夢のように日々が過ぎていきましたね。
──キャストは、伊坂作品3作目となる岡田将生さんをはじめ、忽那汐里さん、そして4人の個性的な父親も錚々たる面々が揃いました。
監督:スケジュールもタイトでしたが、まさに理想のキャスティングになりました。特に、岡田将生さんがキャスティングされてから一気に決まっていったので、岡田さんが参加してくださらなかったら、僕はたぶんこの場に立てていなかったと思います。彼は、作品において監督を信頼してくれて、僕の思いや演出をも的確に判断し、体現するのが非常に上手い俳優さんでした。主演としての風格、たたずまいも素晴らしい俳優さんですね。

忽那さん演じる多恵子は漫画っぽいキャラクターで、普通にやるとすごく腹立たしい女の子になると思うんです。でも忽那さんはそれを爽やかに嫌気なくやってくださり、素晴らしかったです。4人の父親は、“冬彦さん”の佐野史郎さん、演出家の河原雅彦さん、映画界では僕の憧れの村上淳さん、芸人の中でもずば抜けてお芝居の上手い宮川大輔さんという、それぞれジャンルの違う方々が一同に集まってくださったので、現場はすごく大変でしたし緊張しました。

キャストの皆さんが、「いい映画を作ろう」という共通認識があったし、どこか僕を「男にしてやろう」という思いもあったようで、初監督である僕をとても尊重してくれました。皆のお芝居を一気に見るというのは難しい作業ではあったんですけど、すごく魅力的な俳優さんばかりで、これが一本目で良かったなと思うくらい勉強になりました。
──監督自身について伺いますが、映像の世界に入ったのはどんなきっかけがあったのですか?
監督:チャーリー・カウフマンが大好きで、脚本を学ぶために、大学で映画学科の脚本コースに入学したんです。でも、一向に脚本が上手くなる気配がなく、何故だろう?と悩んだ時、空想で描いているから台詞が生きてこないんだと気づいて、自分で映像を撮るようになりました。その後、色んなご縁で映像の仕事をやらせてもらっています。

監督としてはミシェル・ゴンドリーやアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が好きです。イニャリトゥ監督は、映画だけじゃなく、彼が手がけるコマーシャルなども凄くセンスが良くて好きです。
──これまでインディーズで発表した作品や、監督自身がYoutubeにあげた映像作品は、『オー!ファーザー』と全然毛色が違って驚きました。イニャリトゥ監督が好きというのが納得できるというか…
監督:伊坂先生にも「暗い」って言われました(笑)。僕自身は、暗くて重いものを撮りたいわけではなく、人間のどうしようもなさっていうのが好きなんですよね。人間って完璧じゃないって部分を、ヒューマンドラマとして描いてきました。コメディもほとんど撮ったことがなくて、『オー!ファーザー』は、名目上はサスペンスコメディですけど、僕の中ではやはりヒューマンドラマとして描きました。今までの作品は、劇場を出て気分が重くなることが多かったですが(笑)、今回は先輩スタッフや俳優さんのおかげで、皆さんに楽しんで頂ける作品を作ることが出来ました。
──最後に、この作品をどんな方に楽しんで欲しいですか?
監督:やはり父子や母子、家族で見て欲しい映画だと思います。特に、思春期の女子高生とサラリーマンのお父さんみたいな、絶対なさそうな組み合わせとか(笑)。難しい話でもないし、とにかく楽しんでもらいたいという気持ちを伊坂さんから託されて作りました。家族の素晴らしさ、面倒くささ、愛おしさなど色んな感情が交わって家族なんだと感じ取れると思うので、多くの人に、気楽に観て楽しんで頂きたいと思っています。
2014年5月21日
『オー!ファーザー』
2014年5月24日(土) 角川シネマ新宿 テアトル梅田他 全国ロードショー
公式サイト:http://www.oh-father.com/