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今起こっていても不思議ではない状況を目指した ──『スターシップ9』アテム・クライチェ監督インタビュー

スターシップ9

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汚染により死にゆく地球の代わりを見つけるため、一人で恒星間飛行を続けるヒロインと、彼女が初めて接触するエンジニアの青年の運命を描いた近未来アクションドラマ『スターシップ9』が8月5日(土)より公開。メガホンをとったのは、映画専門誌VARIETYにて「注目すべきスペインの若手映画製作者の一人」に選ばれた俊英で、『ヒドゥン・フェイス』『ゾンビ・リミット』の脚本家で、本作が長編初監督作となるアテム・クライチェ。映画の公開を前に来日した監督にお話を伺いました。
今起こっていても不思議ではない状況を目指した ──『スターシップ9』アテム・クライチェ監督インタビュー
──この映画のアイデアとテーマについて聞かせてください。
監督:閉鎖された空間に置かれ、自分ではその状況や自分の人生をコントロールできないというストーリーに興味がありました。この映画では宇宙船にいるエレナが酸素不足に直面し、エンジニアの青年アレックスと出会い物語が展開していく。上層部にあるテーマは「愛」です。しかし途中から違う層のテーマが出てきて、二つの視点が重要になります。映画に登場する科学者は、アレックスとエレナにとって悪者と捉えられるかもしれないが、彼なりの使命感を持って人類が宇宙で生き延びるための方法を模索し、エレナもまた自らが置かれた状況を知らず、違う使命感を持って生きている。人間としての葛藤もまた重要なテーマです。
──劇中に登場する様々なガジェットやシステムは、現代において、ありそうでなさそうなギリギリの技術だったと思います。
監督:東京には全部あるんじゃないかな(笑)。東京は僕にとって近未来すぎて、トイレの操作を理解するのに5分もかかったんだから(笑)。

この映画は、通常のスペイン映画と比べても、SF映画と比べても非常に予算が少ない映画で、撮影も5週間半で撮らなければならなかった。だから撮影前に色んなことを皆で話し合って調査しました。舞台は、遠い未来の話ではなく、非常に現実に近い未来と考えていたから、技術的には今あってもおかしくないものをイメージしました。
『スターシップ9』
──近未来が舞台でも、どこか身近でリアルな視点で観れました。
監督:私たちが作りたかったのは、今起こっていても不思議ではない状況の映画なので、そう思っていただけたなら嬉しいです。主人公であるアレックスの家には、紙で出来た本や昔ながらのおもちゃが存在する一方、仕事では近未来的な装置に囲まれています。東京の地下鉄でも、iPhoneを操作してコミュニケーションしている人を見かけますが、家に帰ると紙の本に囲まれていたりしますよね。そういった風景はマドリッドでも変わりません。そういった現実に則した舞台にしたかったのです。

ロケ地はコロンビアのメデジンでしたが、私が描いた近未来は、格差が激しく、両極化した社会が存在する世界です。それを表現するにもメデジンは最適でした。そこで一人で生きるアレックスと、宇宙船で孤独に生きるエレナ、孤独なもの同士が出会いストーリーが展開していく状況設定としては最適だったと思います。
『スターシップ9』
──主人公のエレナは、宇宙船の中で両親しか知らずに育ちました。主演のクララ・ラゴさんは、そういった無垢さがあってすごく良かったです。キャスティングと演出について聞かせてください。
監督:クララは、私が一番最初に書いた脚本の長編映画『ヒドゥン・フェイス』に出演していた女優です。自然体で勘の良い女優で、彼女の世代の女優の中では一番だと思っています。最初に台本を渡したとき、役作りが難しくて「どこにすがって役を作ったらいいのか分からない」と言っていました。エレナは普通の人間が成長していく過程で体験する、愛や失恋、人との関わりが一切ないところで生きてきて、人生とはどういうものなのかを全く知らない女性です。役作りが難しいからこそ、彼女の自然さ、純粋さが活きるんじゃないかと思いました。そういった面が出ていると思うし、フィジカルな面でも適役だと思いました。役作り以外に、彼女が持っている素質が合っていたのだと思います。
──今作は初監督作品になりますが、オリジナル脚本で作り公開されるのは非常に恵まれていると思います。日本では最近、漫画原作やドラマの集大成の作品が多く寂しい状況だと思っていたのですが、スペインではいかがですか?
監督:僕は長編映画の脚本を2本書いてから、初めての長編映画を自分の脚本に基づいて監督できたわけですが、とても恵まれているし幸運だったと思います。日本がそういった状況なのは知らなかったけど、ハリウッドでは同じ現象が起きていると思います。ヒットしたコミックや小説、脚本でも必ずヒットを担保できるような著名な脚本家の作品に基づいて作られる。収益性が確保できることが前提になっています。スペインでは、まだそこまでいってない。自分の脚本で監督するのは確かに簡単ではなくて、才能があるのに作品を作れずにいる人もたくさんいます。しかしオリジナル脚本が出来たら制作者側が関心を示してくれて、まだニッチだけど、そういう市場は存在しています。
──最後に日本の観客にメッセージをお願いします。
監督:自分の作品を日本で公開できるというのは非常に嬉しいです。日本の観客に気に入ってもらいたいです。この映画のテーマは世界中どこの国でも理解してもらえるテーマだと思います。

今回、初来日して東京に魅惑されました。東京で何か出来ないかと考えながら歩いています。近いうちにまた戻って来たいです。

2017年8月3日
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『スターシップ9』
2017年8月5日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
公式サイト:http://starship9.jp/