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馴染みのある世界を違う角度から見る楽しみ ──『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』原作者・小森陽一インタビュー

オズランド 笑顔の魔法おしえます。

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波瑠&西島秀俊が共演、遊園地の知られざる舞台裏を描いた“お仕事エンターテインメント”『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』が、10月26日(金)より全国公開。原作は、多くの作品が映画・ドラマ化されている人気作家・小森陽一の「オズの世界」(集英社文庫刊)。不慣れな地で奮闘する新米社員・波平久瑠美を波瑠が、“魔法使い”と呼ばれる風変わりなカリスマ上司・小塚慶彦を西島秀俊が演じるほか、岡山天音、橋本愛、中村倫也、濱田マリ、柄本明らが共演する。映画の公開を前に、原作者・小森陽一氏にお話を伺いました。
馴染みのある世界を違う角度から見る楽しみ ──『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』原作者・小森陽一インタビュー
──これまでは、海上保安庁やハイパーレスキュー隊など硬派な職業を扱うことが多かったですが、今作は遊園地が舞台で、肩に力が入らず明るい気持ちで読み進みました。
小森:よく言われるんですけど、今までそんなに力が入る作品でしたかね(笑)。僕が、ちょっと無理をしていたのかもしれません(笑)
──そうなんですか?てっきり海の男など、そういった職業が好きなのかと思っていましたが…
小森:実は僕、海が嫌いなんですよ(笑)。編集者さんに「言うな」って言われるんですけど、船も苦手。巡視船に100回ぐらい乗っているんですが、毎回、船酔いするんですよね。たぶん、海が好きだったら、遊ぶことに夢中になって、作品のテーマとしては見られなかったでしょうね。そんな、僕が嫌いな海で、こんな風に仕事をしている人がいるんだなと思ったのがきっかけなんです。
──今作で遊園地を舞台に描こうと思ったのは?
小森:舞台となったグリーンランド(熊本に実在する遊園地)は、僕自身、小さい頃から遊びに行っていて、学生時代には学生同士で、結婚して子供が生まれてからは娘を連れて遊びに行っていた、馴染みのある遊園地なんです。ある日、たまたまプライベートで知り合った人が、この遊園地で働いている人だった。お酒の席で、グリーンランド時代のエピソードを聞いたんですけど、それがめちゃくちゃ面白かったんです。遊園地の裏側ってそんな感じなんだ…って。後日、その人を改めてランチに誘ってもう一度話を聞いたけど、やはり面白かったので、その席で、これを題材にしたいと本人に伝えました。自分にとって馴染みのある世界を違う角度からみれたという落差と、こんな風に観客の楽しみを支えてくれていたんだという驚きがありました。
──その方はもしかして小塚さん(劇中では西島秀俊)のモデルになった人ですか?
小森:その通りです。
──映像にはなっていませんが、小説では象やウルトラマンなど仰天エピソードがたくさんあります。どの辺までが実話なんですか?
小森:小説で書いているエピソードはほぼリアルです。もちろん多少脚色はしているけど、(創業から)50年の間にあったいくつかのエピソードをもとに書きました。象もウルトラマンも爆弾騒ぎも全部本当です。ウルトラマンは10年以上前の話ですが、あのハプニングは新聞にも載ったし、僕は実際に立った40mのウルトラマンを見てましたから(笑)。他にももっとすごいエピソードがいくつかあったんですが、さすがに書けないほど破茶滅茶なものでした(笑)。

映画に登場する、アイドルの話も本当です。絶頂期のアイドルが夜に到着して、彼女たちのためにプライベートでスタッフを集めて遊具を動かした。何故そんなことが出来たのか、本人にも聞いたし、集まったスタッフの話も聞きました。その辺も実話を結構まぶしています。
──女性が主人公の物語ですが、女性目線で物語を書くのはどんな感じでしたか?
小森:苦しかった(笑)。ひたすら苦しかったです。
──書き始めから、久瑠美ちゃんが主人公だったのですか?
小森:最初は小塚が主人公で、3分の1ぐらいまでは書き進めていました。でも、地方の遊園地を舞台に、その遊園地が好きで働いているというのは、どうしても話が広がらないんですよね。それならば、外側から違うものを持ってこようと思ったのが、久瑠美の誕生です。だから、久瑠美は創作上の人物。実在してはいませんが、彼女の成長を、四季を通して描けたと思います。
──その久瑠美を、映画では波瑠さんが演じました。
小森:不思議なご縁なんですけど、波瑠さんの髪が長い時に出演していたドラマ「マリア様がみてる」を偶然見ていて、「オズの世界」で東京から来た若い女の子の造形を考えた時に、その時の波瑠さんのイメージがすぐに浮かびました。髪が長くて色白で目が鋭いというか特徴的。だから、主人公に波平久瑠美という名前をつけたんです。当て書きというよりも、イメージでしたね。だから、波瑠さんが決まったと聞いた時はびっくりしました。まさかご本人になるとは(笑)。本当に偶然なんです。
──一方で、小塚役を西島秀俊さんが演じられました。これまではクールな役柄が多い印象ですが、満面の笑顔で登場したので、ドキドキしました(笑)
小森:最初に聞いたときに、(小説より)年齢が高い設定なんだなって思いました。キャスティングに関しては僕からのリクエストはありませんし、基本的に小説と映画は絶対に一緒にはならないので、映画は映画として面白いものを成立させてほしいといつも思っています。今回も特別なリクエストをしていないけど、ただ一つお願いしたのは、「かわいい映画にしてください」ということでした。現場で初めて西島さんにご挨拶した時の、まあ、なんたる笑顔の温かいこと(笑)!その笑顔を見たときに、小塚にピッタリだなと思いました。
──脚本は、20代(執筆当時)の脚本家・吉田恵里香さんが担当されました。こういう発想はなかったな、と思うことはありましたか?
小森:「この台詞は僕が逆立ちしても出てこないな」って思うことはいっぱいありましたね。小塚の「キュンとすんだろ」って台詞なんて、オッサンには書けない。キーワードが出てこないですもん(笑)。そういうのを楽しませてもらいましたね。面白かったから、脚本を頂いた時も、直して欲しいと思うこともありませんでした。吉田さんともシナハンで一度お会いしたんですけど、ほわんとした雰囲気のある方で、この人が書いたら面白いんだろうなって感じました。それはプロデューサーのセンスだと思いましたね。
──作品を書くときに拘られていることはありますか?
小森:キャラクターに関してはあまり考えてはいませんが、職業に関しては、なるべく自分で体験することにこだわっています。たとえば、巡視船に乗ってみるとか、向こうの方に余裕があればそこで働いてみるとか。現場で話を聞くと、プロフェッショナルな話がどんどん出てくるから面白いんです。集英社さんで書いた「天神」という航空自衛隊の物語では、パイロットの方がどんな空を見ているのか、わからないと書けないので、実際に戦闘機に乗りました。
──乗れるものなんですか??
小森:乗れるものではないので、大きな力が動いたのかもしれません(笑)。もちろん訓練もしました。そこで体験することによって、自分の自信になるし、嘘じゃないものが書ける。物語を書いていると、迷うこともいっぱいあるけど、自分の背骨となるような拠り所があると、毎回そこに立ち返ることができるんです。今回の遊園地は、実際に働いてはいないですが、何度も行っていて感覚的に自分の中に拠り所として存在していたので、その空気感を出そうと思っていました。
──ご自身の原案が、映画や漫画など、文章だけじゃない媒体へ展開されることが多いですね。
小森:僕はたぶん、日本でめちゃくちゃラッキーな人間の一人だと思います。この話は画があったほうが伝わりやすいとか、文字のほうが良いとか、そういうのをある種選べるところにいると思うので、ありがたいし、そこが強みだと思ってます。
──小森先生ご自身は、芸術大学卒業後、東映に就職されていますね。今後、ご自身の作品をもとに映像作家としての道は考えていますか?
小森:映画監督になりたかったんですよね(笑)。自分の作品に限らず、他人の作品だったらどうなるんだろうと思うし。いつかは挑戦してみたいと、声を大にして言いたいですね(笑)。
──今後、“小森監督”としてお会いできるのを楽しみにしています!最後に、これから映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。
小森:遊園地ってとても楽しい場所ですから、おじいちゃんやおばあちゃん、大人も子供も、若い子たちにもオールラウンドで伝わる物語だと思います。そして、皆が楽しいと思っているその裏側で、それを必死に支えている人たちがいるんだと感じられる作品でもありますので、遊園地の見方が変わるんじゃないでしょうか。そういうのを味わいながら2時間を過ごして欲しいですね。

2018年10月23日
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『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』
2018年10月26日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
公式サイト:http://ozland.jp