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ヒースは白いピエロの衣装で去っていった〜『Dr.パルナサスの鏡』テリー・ギリアム監督インタビュー

Dr.パルナサスの鏡

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悪魔から“不死”を手に入れるために娘を差し出す約束を交わしたパルナサス博士が、欲望を映しだす鏡の向こうの幻想世界で、悪魔と最後の賭けに出るファンタジー『Dr.パルナサスの鏡』(配給:ショウゲート)。『未来世紀ブラジル』や『バロン』など、カルト的人気作を世に送り出してきたテリー・ギリアムの集大成であり、ヒース・レジャーの最後の作品としても話題の本作が、いよいよ1月23日より公開。 このほど、プロモーションのために来日したテリー・ギリアム監督に独占インタビューを敢行しました!
画像:『Dr.パルナサスの鏡』テリー・ギリアム監督インタビュー

2007年、ロンドン。劇場仕立ての馬車で巡業している、パルナサス博士を座長とする旅芸人の一座。彼らの出し物は、鏡を通り抜けた人間が、自らの心に秘めた欲望を具現化させた世界を体験できる「イマジナリウム」。ある日、橋の下に吊されていた謎の青年トニーを助けたことから、事態は思いがけない方向へ...。

画像:『Dr.パルナサスの鏡』 画像:『Dr.パルナサスの鏡』 画像:『Dr.パルナサスの鏡』 画像:『Dr.パルナサスの鏡』 画像:『Dr.パルナサスの鏡』 画像:『Dr.パルナサスの鏡』テリー・ギリアム監督インタビュー 画像:『Dr.パルナサスの鏡』テリー・ギリアム監督インタビュー
──独創的で摩訶不思議なイマジナリウムの世界観が、ギリアム監督作品のファンにはたまらない作品になっていると思います。自身の作品の満足度としてはいかがなものですか?
ギリアム監督:本当に、我ながらいい出来だよ!素晴らしいものを作れたと思ってる。これまでは、そんな風に言える作品が少なくて、自分の作った作品を理解できないことだってあるからね(笑)。でも、『Dr.パルナサスの鏡』は心から大好きで、満足している。参加してくれた皆のおかげなんだ。
──今回はオリジナル脚本ですが、最初から自分の集大成のようなものを作ろうと思ったのですか?
ギリアム監督:最初からそういう思いだった。たまには自分自身(の作品)から盗んでみようと思ってね(笑)。フェデリコ・フェリーニやイングマール・ベルイマンもある時、自分たちの集大成のような作品、つまり『フェリーニのアマルコルド』や『ファニーとアレクサンデル』といった作品を撮っているから、自分もやってみたいと思っていたんだ。
──スクリプトとイマジネーションを具現化していく作業は、かなり時間がかかったのでは?
ギリアム監督:・・・・覚えてないなぁ(笑)。今回は撮影のラストカットで脚本が書き上げられたというぐらいだからね。普段はもうちょっとカチカチに作るけど、今回は、現場で起こる色んな状況で書き直していったんだ。
──トニー役はヒース・レジャーのほうから希望したようですが、そのことでトニーのキャラクター設定が変化していったのですね?
ギリアム監督:間違いなくそう言えるね。撮影中、彼は色んなアイデアを持ち寄ってくれたんだ。彼は監督も志望していたから、練習のように思っていて、ある意味、自分の頭の中で『Dr.パルナサスの鏡』を監督している気持ちだったんだと思う。シーンの場所を変えたり、トニーという役についても色んなアイデアを出してくれたよ。結局、僕が無視したんだけどね(笑)。残念ながら見れなくなってしまったけど。
──『ブラザーズ・グリム』の頃までさかのぼりますが、彼と初めて会った時、どんな印象を受けて、本作で再び一緒に仕事をしてどんなことを感じましたか?
ギリアム監督:彼は最初に会った時からエネルギーに満ち溢れていている人だった。それでいて、知的でアイデアも満載、何処でも何でも出来るタイプだね。俳優としても、身体や声を使うことが出来て、肉体的に恵まれていたと思う。でも、あまり自分のことを話したがらないし、インタビューも好きじゃなかったみたいだ。成功に伴う宣伝活動よりむしろ、自分の技を磨くことに専念したかったんだ。『ブロークバック・マウンテン』での成功の後、1年ぐらい混乱した時期が続き、苦しんでいたと思う。人と同じ一年の間に、何年分もの経験をして生きたんだね。しかしその後、ヒースらしいヒースに戻って、走り出したところだった。
──劇中では活き活きしていましたね。残念ながら遺作となってしまいましたが、それがギリアム監督の作品だったことが嬉しいです。彼が撮影時に演じた最後のシーン、セリフはどこだったんですか?
ギリアム監督: セリフで言えば、パブの前で(警察と挌闘しながら)『メッセンジャーを撃つな』(※)と言っている所だね。そして、本当のラストカットっていうのが実は、馬車に乗ったヒースが、通りの角を曲がって消えていくシーンなんだ。俳優っていうのは、いつ登場して、いつ去るのかを心得ているんだね。白いピエロの衣装に身を包んだヒースが、ボロボロの馬車で消えていく。爆発しながらね。派手に大砲を撃って「バイバイ、プラネット」って告げているような、全く見事なラストカットだったよ。
※日本語字幕では「僕は何も…」
──最後になりますが、監督の作品を観ていると、どうしてこんなにもわくわくするようなイマジネーションを表現して、面白い映画が作れるのかが不思議です。クリエーターとしてメッセージを下さい。
ギリアム監督: やり方って言うとコツも含めて難しいんだな。僕が描く世界は、決してリアルに見せたい訳じゃなく、ファンタジーはファンタジー、単純に僕の世界観にすぎないからね。ただ、ひとつ言えることは、自分のアイデアや発想を信じることかな。そして、アーティストになりたいなら、キャリアを築こうなんて忘れた方がいい。特に、映画はやめたほうがいいよ、お金がかかりすぎるからね(笑)。
──ありがとうございました。では、これから鑑賞する方へ向けてメッセージをお願いします。
ギリアム監督:『Dr.パルナサスの鏡』は、1月23日公開だから、24日じゃなくて23日(初日)に見に来てね♪
今年70歳になるギリアム監督。この日のファションは写真を見ての通り、派手な原色カラーのシャツに、妙に可愛いキャラクターTシャツ、そして、真っ赤な水玉の靴下。ブッ飛んだ芸術家でなければできない格好と思うが、夕方から行われたジャパンプレミアでは、同席したリリー・コールのファッションを引き立てるかのように、シックな装いに変わっていた(⇒ジャパンプレミア・レポート)。

ところで、ギリアム監督は普段、いったいどんな作品を観ているのか気になる!!
…ということで、最近観た映画でお気に入りの作品を聞いたところ、『カールじいさんの空飛ぶ家』と『A SERIOUS MAN(原題)』(コーエン兄弟の新作)と答えてくれた。

ヒース・レジャーの急逝という悲劇に見舞われながらも、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルといった豪華な代役によって完成された本作。ひとつの役を4人が演じていても、ギリアム監督のミラクルマジックによって全く違和感なく物語が展開していき、奇妙なことに幻想世界がより効果的に演出される結果に。監督に言わせると、それも全て「ヒースが演出してるんだ。」という。そして、悪夢のようでありながら、わくわくするおとぎ話のような世界の幕が降りると、エンディングでお決まりのクレジットは、「ヒース・レジャーへ捧ぐ〜」…ではなく、"A film from Heath Ledger and friends"(ヒース・レジャーとその仲間からみなさんへ)というがまた感動的だ。

『Dr.パルナサスの鏡』は、1月23日よりTOHOシネマズ 有楽座ほか全国にて公開。ギリアム監督の願い通り、初日に観に行きましょう!
2010年1月21日
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『Dr.パルナサスの鏡』
2010年1月23日(土)TOHOシネマズ 有楽座ほか全国ロードショー
公式サイト:http://www.parnassus.jp/