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映画は歴史的な出来事を学ぶ力強いツール ── 『THE PROMISE/君への誓い』テリー・ジョージ監督インタビュー

THE PROMISE/君への誓い

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ナチスによるホロコーストの約20年前、150万もの人々が犠牲になったアルメニア人大量虐殺事件を題材に、悲しみの歴史に翻弄された男女3人の運命を描いたヒューマンドラマ『THE PROMISE/君への誓い』が、2月3日(土)より新宿バルト9他にてロードショー。“20世紀最初のジェノサイド”に正面から向き合ったのは、『父の祈りを』の脚本を手掛け、2004年には監督としてルワンダ虐殺の実話『ホテル・ルワンダ』を発表した名匠テリー・ジョージ。悲劇を前に葛藤する人間を描き続けてきた才人が、いま再び歴史的な惨劇に光を当てて深い感動を呼び起こす。映画の公開を前に、初来日したテリー・ジョージ監督にお話を伺いました。
『THE PROMISE/君への誓い』テリー・ジョージ監督インタビュー
──これまでのキャリアで民族や宗教の対立、虐殺をテーマに描いてきました。このテーマに興味を抱いたのは?ご自身が北アイルランド出身であることが関係していますか?
監督:元々アイルランド人はストーリーテリングが好きな民族なんだと思う。ジェイムズ・ジョイスやオスカー・ワイルドなど、これまで様々な作家を輩出してきたからね。私自身、北アイルランドで育ったが、まさにその時期は北アイルランド問題が勃発していた時代で、それがどういう感じだったのか描きたいと思うようになり、ジム・シェリダンと組むチャンスを得た。ジムと組んだ『父の祈りを』は主人公に何が起き、どのように無実の罪を着せられたのかを語っているが、観客は彼らを通して事件を知る。映画は、政治的・人道的な出来事について学ぶ力強いツールだと思う。

同じジャンルで、デヴィッド・リーン監督の『アラビアのロレンス』や『ライアンの娘』、ほかにも『アルジェの戦い』『シンドラーのリスト』『キリング・フィールド』『ミッシング』など、主人公にストーリーを語らせ、観客はそれを通して自分が想像だにしなかった凶悪な事件や歴史的な出来事を肌で感じ学んでいく。これは映画のなかで一番重要なジャンルだと思う。
──撮影にあたりどのようにリサーチしましたか?
監督:どの作品を撮るにしても、かなり徹底的にリサーチします。今回も、アルメニアに関する書籍を読みあさり、実際にアルメニアに足を運び学者の話を聞いたり虐殺記念館を訪れました。トルコのイスタンブールにも行ったが、トルコではタラート・パシャ(事件を主導したとされるオスマン帝国の政治家)がヒーローとされており、記念碑も建てられている。ドイツにヒトラーの記念碑があったらどう思うだろうか?と思いながら眺めていました。タラート・パシャはドイツに亡命後、ベルリンのシャルロッテンブルクでアルメニアの青年によって暗殺されたが、その場所も訪れた。モーセ山はもうクルド人の地域だが、ISISの危険があったので、さすがに行けなかったけどね。

歴史・史実を描く時は、正確さを期すためにも細心の注意を払って準備にあたっている。史実に則していないと言われたら終わりだからね。今回のあらすじはフィクションだが、タラート・パシャやヘンリー・モーゲンソー(米外交官)、フルネ提督など実在の人物が出てくる。そういう部分も描けるように徹底的に下調べして準備したんだ。
──映画のエンディングにもありましたが、トルコ政府は今日までこの虐殺については認めていないという立場ですね。この作品の製作を発表するとき、または完成後など、抗議や妨害はありましたか?
監督:完成までは、とにかくあまり注目を浴びないように撮ったんだ。宣伝も一切せず、撮影中は武装した警備員に立ってもらい撮影を進めた。やはり暴力の歴史を描くわけだから、色んな感情が沸き起こる。とにかく細心の注意を払って撮影した。

この映画を初めてお披露目したのがトロント映画祭で、2回の上映で計3,000人が鑑賞した。ところが、その5日後にはIMDbで55,000件の票が入り、その全てが0点だった。こんなことは初めてだ。その1週間後には86,000票になり、うち26,000票は10/10点、ほかに7点ぐらいの票もあった。どうもトルコで組織的なキャンペーンが行われたらしく、評論家に対してレビュー撤回しろというコメントや、広告を入れないなどの脅迫があったそうだ。Twitterでもキャストに対して脅迫ツイートがあったよ。

その一方で、2017年4月に一本の映画が公開された。『THE PROMISE』で描いていることと真逆の作品で、善良なるトルコ将軍がいて、彼はアルメニアのテロリストと戦ったというストーリー。ある記者が調べたところによると、その背景にいる制作会社はトルコのエルドアン大統領の息子が関わっているらしい。1000〜1500万ドルの予算で錚々たるキャストが参加していたが、欧州では公開されず、アメリカで突如2週間程度公開された。しかし監督と脚本家は、自分たちが撮る予定だったものと違い、編集で内容をいじられたとして「名前を取り下げてくれ」と言っているそうだ。キャストも沈黙している。フェイクニュースを映画化したようなもので、学者の間でも色んな論争が沸き起こっていた。というわけで、私はしばらくトルコには行けないな(笑)。
──メインキャストの3人(オスカー・アイザック、クリスチャン・ベイル、シャルロット・ルボン)の起用についてお聞かせください。
『THE PROMISE/君への誓い』『THE PROMISE/君への誓い』『THE PROMISE/君への誓い』『THE PROMISE/君への誓い』
監督:一番最初に決めたのは、クリスチャン・ベイル。制作陣から「ムービースターが必要だ」と言われたからね。彼に脚本を送ったら、読んですぐに共感してくれた。彼が決まるとあとはスムーズに決まっていく。ミカエル役は、色んなアルメニア系俳優を検討したが、どうしてもこの役に必要とされるだけの幅や底力を持っている人がいなかった。そんな中でオスカーの名前が出てきた。『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』や『エクス・マキナ』でオスカーの芝居を見ていたから、幅のある役者だと思っていた。オスカーはヒスパニック系だけど、アルメニア人にも見える説得力のあるルックスだ。完璧にこなしてくれるし文句は言われないよね。

クリスチャン・ベイルとオスカー・アイザックが揃い、次に配役したのがシャルロット・ルボン。我ながら、なかなかの発見だったよ(笑)。クリスチャンとオスカーに拮抗するだけの女優を添えないといけないから、最初はエミリー・ブラントも検討したが、私はできるだけあまり見られていない女優をキャスティングしたかった。プロデューサーと話し合い、イメージしていたのは、『ドクトル・ジバゴ』のジュリー・クリスティーのような女優だ。シャルロットを知ったのは、スティーブン・スピルバーグのインタビュー記事だったが、それでフランスのCanal+(放送局)で彼女が出演しているナイトショーを見た。ものすごい存在感を放っていたので、オスカーや他の俳優とオーディションをしてもらい、最終的に彼女に決めた。彼女の役柄はコスモポリタンな役柄で、クリスチャンとオスカーが恋い焦がれる女性だ。充分な信憑性をもって伝わってくると思うよ。

もう1人、私にとってブレイクスルーだったのが、ミカエルの婚約者マラルを演じたアンジェラ・サラフィアン。ミカエルが最終的に愛するようになる女性だということを説得力をもって演じてくれた。彼女もまたミカエルを愛しているというのが伝わってくるし、この4人のキャストがいて素晴らしい“四角関係”が出来た。観客は、それぞれの関係を感じてくれると思うよ。


2018年2月1日
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『THE PROMISE/君への誓い』
2018年2月3日(土)新宿バルト9他にてロードショー
公式サイト:http://www.promise-movie.jp/