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移民の物語にリアリティを与えるものとは──『サンバ』オリヴィエ・ナカシュ監督インタビュー

サンバ

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全世界で驚異的な大ヒットを記録した『最強のふたり』のオリヴィエ・ナカシュ&エリック・トレダノ監督と、主演オマール・シーが再びタッグを組んだ最新作『サンバ』。本作は、ビザのうっかり失効でフランスから退去命令を受けた主人公と、彼を救おうと尽力する“燃え尽き症候群”の女性、彼らの陽気な仲間たちとの交流をユーモアたっぷりに描いたヒューマンドラマ。映画の公開を前に、プロモーションで来日したオリヴィエ・ナカシュ監督に話を伺いました。
移民の物語にリアリティを与えるものとは──『サンバ』オリヴィエ・ナカシュ監督インタビュー
──『サンバ』のアイデアは、いつ頃からどんな風に考えていたのですか?
監督:元々の構想は、具体的ではなかったけど『最強のふたり』の前から考えていたんだ。『最強のふたり』の公開のあと、「フランスに捧げるサンバ」という本が出版されて、それがたまたま僕たちが考えているアイデアと話のスタートが同じだったから、その本をもとに映画化しようと思った。でも、不法滞在を扱う流れは本に基づいているけど、燃え尽き症候群のアリスなど、キャラクターはオリジナルで自分たちのアイデアを盛り込んでいったんだ。
──前作『最強のふたり』の大ヒットを受けて、作品作りに対する意識は変わりましたか?
監督:『最強のふたり』が東京国際映画祭でサクラグランプリを受賞したという連絡が来たのが、フランスで公開されるまさにその日だったんだ。遠い日本から嬉しい知らせが届いて、何か良い兆候だと感じたし、事実、その後いろんな国で大ヒットした。この大ヒットは、僕たち(共同監督:エリック・トレダノ)の今後のキャリアを灯台のようにずっと照らしてくれる存在になった。

前作のヒットはもちろんプレッシャーだったし、これからどうしたら良いのか考えたこともあったけど、幸い僕らは2人(共同監督)なので心強かった。このまま自分たちがやってきたことを信じて続ければ良いんだって前向きに考えたんだ。オマール・シーとは5回目の仕事だったけど、もっと彼を撮りたかったし、僕とエリックとオマールは一緒に成長してきたようなものなので、これからも一緒にやっていきたいって思ったんだ。
──監督からみたオマール・シーの魅力とは?
監督:オマールは、生まれながらに太陽のような人で、本当に光り輝いている。彼がスクリーンに現れたり、映画のプロモーションで色んな所に行っても、ものすごく人を惹きつける魅力があるんだ。もともとテレビで活躍していたコメディアンで「俳優じゃない」って本人も言ってるけど、天性の魅力を感じて彼を起用し、そこから役者としてキャリアを積んでいったんだ。僕らは彼を想定して脚本を書き、彼を起用して撮影が出来るのはすごく幸せなことだと思う。今回も、オマールの笑顔の魅力から、サンバという人物を掘り下げていったし、編集中も何度も観ているけど、本当に飽きないんだ(笑)。素晴らしい人だと思う。
──オマールを想定して脚本を書きつつ、深刻な社会問題もテーマにしていますね。どんなリサーチをしたのですか?
監督:ただ構想を練って議論しただけでなく、実際にジャーナリストのように調査研究して脚本を作り上げていったんだ。現実を描いていながら嘘をつきたくなかったので、燃え尽き症候群のクリニックに足を運んだり、不法滞在者や移民の支援をしている現場に行って、そこで見たもの、出会った人たちにインスピレーションを受けて作りあげていったんだ。その中でウィルソン(タハール・ラヒム)のような人にも出会った。映画では、移民の収容所とかゴミの分別所とか、誰も撮影したことがないような場所も出てくる。パリの大都市にもこんな現実があったんだって分かってもらえたら嬉しいと思う。
──アリスを演じたシャルロット・ゲンズブールは最近ヘヴィな役柄が多かったですが、久々に可愛らしい彼女が見れました。
監督:『ニンフォマニアック』よりは服を着てるよ(笑)!

シャルロットは、フランスのアイコン的な存在でリスペクトされているんだ。きわどい役を演じたとしてもイメージが崩れるわけじゃない、すごく特別な存在だよね。いつか一緒に映画を撮りたいと思っていて、『最強のふたり』よりも前に、彼女にこの映画の構想を話したんだ。実際の彼女は大スターなのにすごく親しみやすかった。「私はそんなに面白い人じゃないし、出来るかしら」なんて言ってたけど、とにかく自分たちを信じて任せて欲しいってお願いしたら、OKしてくれたんだ。

オマールはテレビで活躍して、コミカルさが人気を博していて、一方のシャルロットは大女優で儚く脆い印象。2人の共演による科学反応も楽しみだったけど、すごくうまくいったと思う。ちなみに、オマールはラブシーンが初めてだったから、シャルロットとのキスシーンの現場は面白かったよ(笑)。あまりに緊張してたから、僕が代わりにやろうと思ったけど、ばれちゃうからやめたんだ(笑)。
──『最強のふたり』も『サンバ』も、重いテーマを扱いながらもユーモアたっぷりに人間関係を描いていますね。こういった作風へのこだわりとは?
監督:サマーキャンプがきっかけかもしれない。エリックと僕が出会ったのがサマーキャンプで、大人になってからは面倒をみる側として今も携わっているんだ。3週間ぐらいの生活の中で子供たちの世話をしていると、最初は仲が悪かったのにいつのまにか仲良しになっていたり、友情関係が変化していく。人が共同生活し、対話することによってその関係が変化していくのを目の当たりにして、興味を持っていったんだ。

ヨーロッパでは経済危機や政権への不満など、暗くて不安な状況でもあるし、社会問題って必ずアイデンティティの問題に行き着いて、結局は自分と違う他者を排斥したりする。でも、他者だと思っていた人でも、相手をよく知って話し合えばこんなに明るくなれる。僕たちは常にそういった、人間を通じて希望がもたらされるような映画を作りたいと思ってるんだ。

ちなみに、フランスは70年代に建設現場などで移民を呼び寄せ、彼らの子供が今のオマールの世代なんだ。フランス生まれのフランス人だけど、そういった二世が俳優として活躍していることによって、リアリティのある移民のストーリーが語れるようになったんだ。アルジェリア出身のタハール・ラヒムも人気だし、彼らのおかげでこういった映画が撮れるのだと思ってる。
──最後に、日本の観客へ向けてメッセージをお願いします。
監督:『最強のふたり』の時も日本からいろんな感想をもらったけど、1万キロも離れていて文化的な違いもあるのに、たくさんの人が感動してくれた。こんなに距離が離れていても、ユーモアさえあれば通じる。政治よりも効果的だよね(笑)。今回の映画でも、日本の皆さんがどう反応するのかとても楽しみにしています。
2014年12月24日
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『サンバ』
2014年12月26日(金) TOHOシネマズシャンテ・新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー