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宮崎あおいの表情の変化にグッときた〜『ソラニン』三木孝浩監督インタビュー

ソラニン

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若手漫画家・浅野いにおの人気コミックを映画化した『ソラニン』は、夢と現実に葛藤しながら生きる若者たちをリアルに描きだした青春ストーリー。宮崎あおいを主演に、高良健吾、桐谷健太、サンボマスターの近藤洋一らが出演し、劇中バンドROTTI(ロッチ)としてホンモノの歌と演奏を披露することでも話題の本作。演出したのは、これまでミュージックビデオやライブ映像を数多く手掛け、本作が長編デビュー作となる三木孝浩監督。不透明な日々に揺れる主人公たちの喪失と再生を、丹念かつ活き活きと描きだした三木監督に、原作への思いや出演者の魅力を語って頂きました!
画像:『ソラニン』三木孝浩監督インタビュー

【『ソラニン』ストーリー】
自由を求めて会社を辞めた芽衣子(宮崎あおい)と、フリーターをしながらバンドを続ける種田(高良健吾)。未来に確信が持てず、寄り添いながら東京の片隅で暮らす二人。だが、芽衣子の一言で、種田はあきらめかけた想いを繋ぐ。種田はバンド“ロッチ”の仲間たちと新曲「ソラニン」を完成させ、レコード会社に持ち込むが、反応のないまま日々は過ぎていく。そんなある日、種田がバイクで事故にあってしまう。遺された芽衣子は─


──長編映画初監督作品になりますが、どんな縁からこのお話がきたのですか?
三木監督:元々、僕がソニー・ミュージックでミュージックビデオを撮っていた時に、IMJエンタテインメントの久保田さんとお話させて頂く機会があって、その時に「いつか映画監督をやりたい」って僕が話していたんです。それを覚えていた久保田さんが、僕が独立するタイミングで「音楽を題材にした『ソラニン』の映画化の話があるけどやってみない?」って声をかけて頂いたのが最初ですね。
──原作が人気漫画で、思い入れの強い人たちも多かったと思います。表現する上で苦労されたのでは?
三木監督:原作のファンの方から「違うだろ!」とは言われたくなかったので、原作の世界観を壊さずに映像化したいという思いがありました。そこで、イメージを踏襲しつつ、どこまで映画としてプラスアルファできるか考えたんです。
僕自身も浅野さんの原作が好きで、クライマックスのライブシーンの高揚感とか、「漫画でここまで描けるのか」って思っていたんですけど、でも、ライブで感動した経験はいっぱいあっても、それは演奏する人がいて自分自身がその場にいないと体験できない感動だと思うんです。それが映像で表現できれば、原作をリスペクトしつつ、漫画とは違った感動を描けるんじゃないかと思って、ライブシーンは力をいれて描きましたね。
──原作者の浅野いにおさんとは話し合われたのですか?
三木監督:はい。でも、基本的には全部任せてもらえました。浅野さんの希望は、バンドメンバーの演奏に嘘がないこと、加藤はデブであること(笑)。その2点でした。
画像:『ソラニン』 画像:『ソラニン』 画像:『ソラニン』 画像:『ソラニン』 画像:『ソラニン』 画像:『ソラニン』
──確かに、加藤は原作のままのキャラクターでしたね。
三木監督:最初に色んな候補があったんですけど、中々フィットしなくて難航してたんです。近藤さん(サンボマスター)とは以前、ライブの撮影でご一緒したことがあったんですけど、最初に原作を読んだときに、もう近藤さんしか思い浮かばなかったんです(笑)。引き受けてくれないだろうなと思ってたんですけど、ダメもとでオファーしたら意外と快く引き受けてくれました。
──近藤さんが画面に登場しただけで、何か面白いこと、いいセリフを言ってくれるんじゃないかと期待してしまいました。初めての演技なのにすごいと思いました。
三木監督:本人も、バンドとして同じような経験をしてきたので、加藤というキャラクターとシンクロする部分があったんですね。それをセリフに転化させているので嘘がない。そのリアリティさが、役者さんがやるのとはまた違ったんだと思います。
──宮崎さんや高良さんを演出されていてどう感じましたか?
三木監督:皆さんそれぞれ活躍されているので、演技に関しては全然心配してなかったんですけど、アプローチの仕方が違ったので面白かったですね。宮崎さんは脚本を読み込んで咀嚼して現場に臨む。一方、高良君の場合はフラットに現場に身を置いて、そこで感じるものをそのまま出すタイプだったので、対照的で面白かったです。宮崎さんは、これまでのお芝居では芯のある強い女性の役が多かったけど、どこにでもいる、迷いも不安もある女の子を演じる宮崎さんも見てみたいなと思っていました。

種田役は、台詞で言うと難しいこともあったんですけど、例えば「音楽で世界を変えようと本気で思ってた」っていうのも、クサい台詞だけど、それを高良君が演じることで台詞がさらっと入ってくる。そこのハードルはすんなり飛び越えてくれたので、すごいなと思いました。
── 原作に忠実にするという意味では、種田が死んだと知った時に、芽衣子が驚くとか泣き崩れるとかいったシーンもなかったですよね。映像化するなら「入れようよ」って言いそうなものですが、やはりあえて入れなかった?
三木監督:表現としてはそういうやり方もあったけど、原作はそこのエモーショナルな部分に重きを置いていなくて、その後も続くそれぞれの人生とどう向き合っていくか、というのを丁寧に描いているんです。だから、そこをエモーショナルに描いてしまうと原作の方向とちょっと違ってくるので、最初から入れるつもりはなかったですね。

自分の毎日を思い起こすと、大きな出来事ってほとんど起こっていなくて、日々の感情の揺れの中で落ち込んだり、そこから回復したりを繰り返している。そこを丁寧に描くことで、些細なことでも物語にできるっていうのが着眼点でした。種田の事故とか大きな出来事はあるれけれど、描きたいのは日々をどう生きていくかっていう所なので、映画でもそこは忠実に映画化したかったですね。
──映画の登場人物のなかで、監督自身はどのキャラクターが近かったですか?
三木監督:僕は…ビリー(桐谷健太)の立ち位置かな(笑)。ビリーって、仲良くやりつつも、自分の思いを一番表現出来ていないキャラクターで、内に秘めて終わっちゃう感じなんですよね。本当は芽衣子のことが好きなんだろうな、と思いつつ、それを出さない点が男としては共感できるというか(笑)。個人的にはビリーが共感出来て好きですね。
──ラストのライブシーンは撮影でも最後に撮ったのですか?
三木監督:そうですね。物語のピークなので、撮影でもライブシーンに山場を持っていきたかったし、宮崎さんのクランクアップもそこにしたかったんです。ライブ当日は、芽衣子が歌いながら種田の思いを理解して気持ちを吐き出していく、歌の中でその表情の変化があったので、撮りながらグッときましたね。ライブシーンの編集には慣れているんですけど、感情の変化を活かしたかったので、あえてカット割しないで表情を長回ししました。本人たちにも撮影というより本当のライブ演奏と感じてもらえたのがよかったと思います。
──監督自身、映画を一本撮り上げてみて変化したことは?
三木監督:「こんなにも一つの物語を2時間の枠で表現するのは難しいものなのか。でも面白い!」と感じました。もちろんまだ1本目なので、自分の中では反省点も多いですけど、次もまたやりたいと思いましたね。
──今後どんな題材を扱っていきたいですか?
三木監督:やっぱり音楽が好きなので、音楽にかかわるものをやりたいですね。もちろんそれ以外も!
原作の世界観を壊さずに映像化することにこだわった本作は、ロケ地も原作と同じ和泉多摩川を舞台として撮影されたという。多摩川河川敷のシーンや商店街、芽衣子と種田の住むちょっと古びたアパートなど、漫画のひとコマが思い浮かぶような映像の切り出し方やトーンが印象的で、原作ファンも納得のいく絵作りとなっている。そして何と言っても、最大の見どころとなるのが、監督も「グッときた」というクライマックスのライブシーン。芽衣子を演じる宮崎あおいの表情がどんな変化をみせるか、この感動のシーンは、是非劇場でチェックして下さい。

三木監督に、これまで監督自身が影響された作品、『ソラニン』を撮る上で参考にされた作品などを伺いました!

『ソラニン』これこれレコメSPECIAL

三木監督:自分が映像作家として影響を受けた作品や、今回、映画『ソラニン』を撮るにあたって見直した作品です。
王立宇宙軍 オネアミスの翼
ギルバート・グレイプ
時をかける少女
金髪の草原
2010年3月19日
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『ソラニン』
2010年4月3日(土)新宿ピカデリー、渋谷シネクイント他全国ロードショー!
公式サイト:http://solanin-movie.jp/