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「俺は日本映画の奴隷になってない」──園子温監督『TOKYO TRIBE』インタビュー

TOKYO TRIBE

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累計250万部超、90年代のストリートカルチャーを牽引した井上三太による伝説的コミックを、園子温監督が実写映画化した『TOKYO TRIBE』。近未来の"トーキョー”を舞台に、ストリートギャングたちが大暴れするする本作は、映画全編に敷き詰められたHIP HOPミュージックにあわせて、登場人物全員がラップに挑戦。フリースタイルラップを謳歌しながら、アクション上等で闘いまくるという新ジャンル、<バトル・ラップ・ミュージカル>を確立した。映画の公開を前に、園子温監督を直撃。園監督が「映画」に寄せる思いを伺いました。
「俺は日本映画の奴隷になってない」──園子温監督『TOKYO TRIBE』インタビュー
──今回は、伝説の漫画「TOKYO TRIBE2」を原作として映画化することになりました。意外といえば意外だったと思います。
監督:日活から企画を持ちかけられた時、ストリートファッションとかヒップホップに全然興味ないんで、これは出来ないと思ったんです。でも、本物のラッパーたちに会って話をして、彼らが本当に新宿や練馬を拠点にして、そこを守っているって聞いて、役者じゃなくて彼らがそのまんま出たら面白いものになるんじゃないかと思った。ラップのミュージカルなんて史上初だし、これをオープンセットでやったら無茶苦茶面白いものになると思って、やる気になったんです。
──強面の本物のラッパーたちが現場に集まった…
監督:現場で鉄則作りましたよ(笑)。「1.お互いケンカしない、殺し合わない」「2.ブルーレイが発売されるまでは、ヤバいものに手を出さない」とか(笑)。みんなちゃんと守ってくれました(笑)。映画って待ち時間長いけど、皆、じっと我慢して待ってくれたし、休憩時間に上半身裸で体操始めるんですけど、体に素晴らしい文言が描かれているので(笑)、ここはロスの刑務所か!って思いました(笑)。『ワイルド・スピード』に負けないくらいゴリゴリした男達が出ている映画になったので、嬉しいですね。
──もともと興味がなかったヒップホップを、演技としてどうジャッジしたのですか?
監督:そこは丸投げですね。今さら勉強したって追いつかないし、勉強して近寄ろうとしても、そのリスペクト感はきっと格好悪いし裏目に出る。だから、距離を大事にしたんです。

実は「距離」って大切で、これまで、距離があるからこそ上手くいった映画っていっぱいあるんです。例えば、『ゴッドファーザー』が何故良い映画になったかというと、フランシス・フォード・コッポラ監督がマフィアを嫌いだったから。マフィアをリスペクトしてる人が撮ったらダメな映画になったと思う。『仁義なき戦い』の深作欣二監督も、ヤクザに興味がなかった。だいたい、ヤクザを尊敬している人がVシネでヤクザを撮ると、めっちゃ格好付けてダサくなるんです。尊敬してないからこその距離感が、緊張感もあって逆に格好良く映っちゃうんですよね。だから今回は「知らないものは知らない」で放りだした(笑)。

彼らはヒップホップのプロだし、音楽の総指揮にBCDMGもいたので、各々でジャッジしてもらいました。もちろん、リリック(歌詞)はある程度、物語や世界観に沿ったものを伝えて、彼らに任せました。
──主演の鈴木亮平さんは、完璧な肉体に仕上がってましたが、監督からのリクエストだったんですか?
監督:この映画は男の子が大好きなものが詰まっているけど、女の子が大好きなものって何だろう…って考えて、亮平君には「女の子がウットリするような肉体に仕上げておくように」とは言いました(笑)。街角で、「格闘技やってる?」とか「プロレスラー?」とか言われるようになったって喜んでいましたね。やる気が感じられて良かったですよ。
──ほかの出演者の起用はどのように?
監督:ブッバファミリーは、初めてだけど会いたい人、もう一度会いたかった人をどんどん呼びました。叶美香さんは、映画で出たら面白いと思ったし、竹内力さんとの夫婦ってすごくいいなって思いました。染谷君は、今回の肉食系の男達が汗をかいている中で、一人だけ、天上から舞い降りてきたような、土地にしがらみのない放浪の旅人のような存在で、語り部となって欲しかった。

清野(菜名)をヒロインに決めるのは早かったですね。オーディションで1分もないうちに「君がヒロインだ」って誰にも相談せずに言っちゃって、みんな慌ててましたけど(笑)。あと、彼女がアクションの特訓をしている時に、道場に様子を見に行ったら、そこに凄い身体能力をもったチビがいたんです(ヨン役の坂口茉琴)。高校生の女の子だけど、小学生の男の子にしか見えなくて、ふと「百鬼丸」と「どろろ」みたいな関係性が浮かんで、台本になかったけど登場させました。
──舞台となった街は、東京でありながら無国籍感もありました。オールセットで作ったのですか?
監督:巨大な工場跡地に街を作り上げました。美術の林田裕至(『十三人の刺客』等)さんが、面白いセットを作る方なので、絵コンテなどである程度リクエストを伝えて、後はお任せしました。ただ今回、グラフィティはやめようと思って、Chim↑Pomっていうアートユニットが育てた「天才ハイスクール!!!」の生徒に壁画を描いてもらったんです。グラフィティって、超ロサンゼルスになっちゃってダサイので(笑)。今回の壁画は国籍不明のものになって、成功したと思う。
──今作もそうですが、ここ何作かで、より一層エンターテイメント性が増しているように思います。
監督:『希望の国』あたりから、こだわりを消去して、エンタメを作るって腹を括ってますから、これからもどんどんそうなると思う。3.11以降、みなが楽しく観られる映画を作りたいなって思っていて、『ラブ&ピース』(2015年公開/製作中)なんてその究極で、完成した作品観て、「ついにここまできたんだ…」って思いましたよ(笑)。『TOKYO TRIBE』より遙か彼方、また新しい段階に到達している。

一気に作風が変わるのもすごく好きで、僕は「ピカソ的前進」と言ってるんですけど、これまでの「時代」をかなぐり捨てて前進する。さらにレベルの高いところに到達するには必要だなと思ってます。
──そのパワーはどこから来るんでしょう?
監督:日本映画の奴隷になってないからですよ。日本の映画監督って、優等生的であれとか、ささやかで地味な生活を撮れとか、友情を撮れとか、感動させなさい、泣かせなさいっていう指令が入ったICチップが埋め込まれていて、苦労して堅苦しく映画を撮ってるんですよね。僕はそのチップをプチって取って捨てた(笑)。すごく広がりが出来たし、良い意味で野心を持たないことにしている。年末に良い感じの賞をもらいたいとも思ってないし、そういう自由が獲得されてたうえで、ただただ面白いものを作りたいと思っているんです。
──ところで、取材を受けるとき、いつも黒のストライプのジャケットに帽子でしたが、印象が変わりました。気分転換ですか?
監督:『新宿スワン』(2015年公開/製作中)で、沢尻エリカに「形見」だって帽子を取られたんですよ。俺、天然パーマで、毎日髪の毛が爆発するのが恥ずかしいから、20年間帽子を被ってたんだけど…。忙しくて帽子買う時間もないし、このままでいたら楽になってきた(笑)。何だかオープンな気持ちになって、芸人活動もより活発になって、変顔も出来るようになりました(笑)。
──心境の変化でスタイルが変わったのではなくて、その逆なんですね。
監督:そうそう。沢尻さんには感謝してますよ(笑)。
──映画を撮るのはもうやめると言う話もありますが…
監督:その方向でどんどん動いてますよ(笑)。小説デビューしたし(『毛深い闇』/河出書房新社)、新宿LOFTやリキッドルームでライブデビューしたし、アトリエで絵を描き始めて、個展もやるし、劇団を旗揚げするし。バラエティにも出てタレント活動に励んでますから(笑)。それのどれかが上手くいったらもうさっさと映画なんて……。
──撮らなくなっちゃうんですか!?
監督:映画でメシ食ってるし、家賃も払わなきゃいけないので、堅実な仕事としてやめられないですけど(笑)。万が一もないかもしれないけど、万が一そんなのがあったらいいな(笑)。

でも、そういうのって全部、映画にフィードバックされるんですよ。昔、「東京ガガガ」で路上パフォーマンスやったり、サンフランシスコでホームレスやったり、何回か映画をやめてるんですけど、戻ったときにその後の映画に凄く良い影響を与えて、映画をより豊かにしてるんです。あとは…悪魔に魂を売ってもいいし。楽して金と半端ない名声を手に入れたいな(笑)。
2014年8月27日
『TOKYO TRIBE』
2014年8月30日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー!
公式サイト:http://tokyotribe-movie.com/