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お化け屋敷のアミューズメントパークとして楽しんで〜『富江 アンリミテッド』井口昇監督インタビュー

富江 アンリミテッド

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伊藤潤二の傑作ホラー漫画を実写化した映画『富江』シリーズ。毎回設定を変えて恐怖を演出する人気シリーズの第8作目『富江 アンリミテッド』は、美しい姉・富江を事故で失い、トラウマを抱えた妹・月子が体験する恐怖を描いていく。この最新作を演出するのは、『ロボゲイシャ』『片腕マシンガール』などでカルト的人気を集め、国内外から高い評価を受ける鬼才・井口昇監督。シリーズ初となる姉妹の設定で心理的恐怖も倍増、さらに、殺すほど増殖していく富江と、次々と襲いかかるショック描写で、シリーズ史上最も原作に近く、最も恐ろしい作品に仕上げた井口監督にお話を伺いました。
お化け屋敷のアミューズメントパークとして楽しんで〜『富江 アンリミテッド』井口昇監督インタビュー
『富江 アンリミテッド』 『富江 アンリミテッド』
──本作はシリーズ8作目になりますが、どんな経緯でメガホンをとることになったのですか?
監督:3〜4年前に一度お話はあったんですけど、諸事情があって頓挫してしまったんです。その後、プロデューサーからまたお話があって、僕的には、伊藤潤二さんの漫画も大好きですし、悔いもあったので、リベンジのつもりで引き受けることになりました。
──脚本も担当されていますね。
監督:映画の『富江』自体が既に7作ありますから、あらゆる富江のパターンが出てしまっているんです。原作はかなりグロテスクというか、クリーチャーが出てきたり、富江が化けもの化するという描写が多いんですが、今回は新しいアプローチとして、そういったグロテスクな描写を原作に近い形で映像化しようと思い、脚本を書く時もビジュアルありきで書きました。

新鮮な富江像として、原作にもない「もしも富江がヒロインの肉親・姉妹だったら…」って考えた時に、広がりがあるんじゃないかと思って、ビジュアル面と2つの柱で考えていきました。
──伊藤潤二さんからは何かメッセージはありましたか?
監督:先にメッセージはなかったんですけど、既にご本人が完成した映画を観てくれていて、「ようやく原作の富江が見えた。嬉しかった」って言ってくれたので、僕としては嬉しかったですね。漫画の映像化はハードルが高いし、グロテスク描写が多いと規制の問題もあったので、チャレンジしてよかったと思いました。
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──主演の女優さんたちの起用は?
監督:荒井萌さん演じる月子については、謎めいて現実感のない富江と対峙しているキャラクターとして、人懐っこい、親近感のある人にしたいと思っていました。富江と月子はルックス的にも間逆なので、富江がありえない漫画チックな芝居をするなら、月子は現実感のあるリアルな芝居をするというギャップも考えてました。
──富江役の仲村みうさんは本当に妖しかったですね。
監督:「富江」シリーズが映像化される度に一番のお題となるのが、「富江を誰にするか」ってことなんですね。今回も色々と名前が挙がったんですけど、仲村みうさんとお会いした時に、まず驚いたのが、彼女は富江と全く同じところ(左目の下)にホクロがあったんです(笑)。気を引くためにわざと描いてきたのか?と思ったんですよ。本人に聞いたら、キョトンとして、「自分のホクロです」って言うので、ビックリしました。「この人は富江をやるために生まれてきたんだ。僕自身、この人を富江として撮る宿命なんだ」と思いましたね(笑)。

富江の原作自体を彼女は知らなかったので、天然な感じもあったし、実際に幽体離脱の練習してたり、オカルトの本が好きだったりとか(笑)。仲村さん自体がミステリアスな感じだったので、これは面白いんじゃないかと思って、あえて今までの実写版の富江よりも妖しい感じにしようと思いました。富江がどういう存在で、何を考えて何を目的としているのか知ろうとしてドツボにハマっていく…というお話なので、富江については、あえて答えを出さなくていいと自分の中で決めて開き直りましたね。

逆に、月子は、観ている人の感情移入の拠りどころなので、僕の中では答えを出していました。思春期の孤独な女の子の話で、僕の解釈としては一種の自傷行為というか、妄想のなかで自分の一番嫌な状況を想像して、今の自分とのバランスをとっている、そんな女の子の話だと解釈してます。
──現実感のない富江にはどんな演出をしたんですか?
監督:漫画でも富江のポーズがあるんですけど(走る時の肘の角度や、髪をかき上げる仕草)、今の女の子は絶対やらないであろう仕草は漫画のままでしたね。日常であまり「ウフフッ…」と笑う人はいないですけど、そういったポーズや笑い方を演出しました。雰囲気とか佇まいについて仲村さんと話した後は、彼女の中から出てくるキャラクターに任せたところはありますね。
『富江 アンリミテッド』
──後半になるほどグロテスク描写満載で暴走していきますが、現場の雰囲気はどんな感じでしたか?
監督:時間と予算がない撮影だったので、慌ただしかったですね。後半では僕もアドレナリン出しまくっていた感じです。役者さんたちも、こっち側のテンションに同調してくれたところがあって、川上麻衣子さんは今回、ホラー映画初出演らしいんですけど、ご自身から色んなアイデアを出してくれたので、頼もしかったし有り難かったですね。“解体”シーンでは、本当に豚の内臓を使っていることもあって、凄い異臭のど真ん中で耐えてもらったので、役者さんの根性は感謝してます。
──クリーチャーというか、“化けもの”も形を変えて次から次へと…(笑)
監督:今回出てくる“ムカデ富江”というのは、原作にはないんですけど、伊藤潤二さんっぽいんじゃないかと思って(笑)。原作にも“ゴミ箱富江”とか“巨大富江”とか出てくるんですけど、造型の西村さんからのアイデアで、“ムカデ富江”が出ました。どうせ映像化するなら、想像を超えた気持ち悪い生きものを出しちゃっていいんじゃないか、「富江」はそこまで自由な発想になっても許される作品だと思ったので、あえて振り切ってやりました。あと、原作になくてやってみたかったことの1つが、“弁当箱富江”(笑)。
──あれは…。一番気持ち悪かったけど面白かったです(笑)。
監督:ギャグすれすれというか、ギャグなんですけど(笑)。ちょっと生理的に嫌な部分も入れてみたかったんです。食べものと気持ち悪いものが一緒になっているって嫌ですよね。だから今回は、血飛沫が天ぷらに飛ぶとか…生理的に嫌な場面をあえて入れました。人間にとっての恐怖の概念って色々あると思うんですけど、心理的な恐怖のほかに色んな意味のホラーや恐怖要素が入るといいなと思って、「お化け屋敷のアミューズメントパーク」、そんな感覚で楽しんでもらえたら嬉しいです。
──最初にも『オーメン』的なシーンもありましたが、監督はどんなホラー映画が好きなんですか?
監督:ホラー映画全体が好きですけど、洋画のほうが好きでしたね。『サスペリア』とか『悪魔の墓場』とか、イタリアのホラーやゾンビものが好きです。日本でも、中川信夫さんの『地獄』とか、後は、この作品を見た人によく言われるんですけど、大林宣彦さんの『HOUSE ハウス』とか、ジャパニーズ・アイドル・ホラーみたいなことも意識としてはありましたね。

今回は、そういったホラー映画の見せ場が数珠繋ぎになっていればと思って、遊び心も出していたつもりです。富江がどう変化していくのか、期待している人が楽しめればいいなと思っています。
──話は変わってしまいますが、これまでの『ロボゲイシャ』や『片腕マシンガール』などは海外でも人気が高いですが、その後、制作環境はどんな変化がありました?
監督:正直、すごく変わりましたね。『片腕マシンガール』を作っている時は、各タレントプロダクションの対応が冷たかったので、キャスティングに苦労していました。海外で上映された後は変わりましたね。今度、新しいホラー映画を撮るんですけど、とてもバカバカしくて無茶苦茶なホラー映画なのに、大手のプロダクションが普通にオーディションに来るのでビックリしましたね。数年前までスプラッターやホラーは“ゲテモノ”って解釈されることが多かったんですけど、そこの部分は理解されるようになったと正直思っています。
──次のホラー映画も楽しみにしたいところですが、ほかに、今後の作品作りとしてはどんなものを考えていますか?
監督:もちろん映画ファンからスタートしているので、いろんなジャンルを作ってみたいと思っています。ホラーやアクションをいっぱい作ってきたので、実はそろそろ人間ドラマを撮ってみたいと思ってますけど。ラブストーリーとか難病ものとか(笑)。でも、お話が来る作品全部、ホラーとかそっちばっかりなので…(笑)。
──確かに、監督には奇想天外なストーリーや奇抜なアクションを期待してしまいます。
監督:有り難いことではありますけどね。難病モノもやってみたいと思います(笑)!
『富江 アンリミテッド』
──最後に『富江 アンリミテッド』をご覧になる方にメッセージをお願いします。
監督:ホラー映画として、カップルで普通に楽しんでもらいたいですし、やはり10代の女の子にも観て欲しいと思いますね。お化け屋敷的に楽しんでもらった後、心の中に残る何かがあると思います。あと、女の子たちを魅力的に撮ることも考えていたので、そういうところも見て欲しいです。
2011年5月12日
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『富江 アンリミテッド』
2011年5月14日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
公式サイト:http://www.tomie-unlimited.com