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中丸シオン×高橋真悠×小中和哉監督 映画『VAMP』インタビュー

VAMP

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「ほんとにあった怖い話」などで、Jホラーに大きな影響を与えた脚本家・小中千昭と、『平成ウルトラマンシリーズ』をはじめ幅広い作品を世に送り続ける小中和哉監督。小中兄弟タッグによる“耽美的ダークファンタジー”映画『VAMP』が、8月23日より開催の「夏のホラー秘宝まつり 2019」にて上映。自らを“ヘマトフィリア(血液耽溺者)”と呼び、生きるに値しない男たちの血をすする謎の美女・苓(れい)と、父親から虐待を受け続ける女子高生・美以那(みいな)を軸にした物語は、美しきヴァンパイア・ストーリーとエロティックなラブシーン、そして激しいアクションなど多彩な魅力を併せ持つエンターテイメントに仕上がっている。映画の公開を前に、主演の中丸シオンさん、高橋真悠さん、そして小中和哉監督にお話を伺いました。
中丸シオン×高橋真悠×小中和哉監督 映画『VAMP』インタビュー
──まずは監督に質問です。今作は、監督のお兄さんである小中千昭さんとのコラボ作品となっていますが、どのような経緯で制作されたのでしょうか?
監督:最初は、一緒にホラー映画を作ろうと思って始めたんですが、基になったのは、兄が書いたヴァンパイア小説・アンソロジーの中にある短編でした。今回、中丸さんが演じた苓の原型のような、血を飲まないと生きていけないヘマトフィリア(血液耽溺者)が日常の中にいて、彼女が二代目となる若い女性ヴァンパイアと出会うというイメージの物語です。それを膨らませて一本の映画にしようと。最初は、人を殺すことをためらわない異常心理というか、現実にもそういう事件が多いので、そういった人間のダークサイドに分け入った話がヴァンパイア映画の形式で語れないかと思い企画書を書いていたんです。次第にキャラクターが見えてきた段階で、現実の事件がどうのっていうのはどうでも良くなってきたんですけど、最初の発想はそういうところもありました。
──中丸さんと高橋さんは、この脚本を受け取ってどんな感想を持たれましたか?
高橋:最初にいただいた時は、まず私自身が映画に出られるということが嬉しくて、客観的には読めませんでした(笑)。数日経って冷静に読んだ時、ただ怖いだけじゃなく色々な要素があって、その中に人間のリアルな心というかドラマ的な部分が印象に残っているので、そこを大事に演じたいなと思いました。
中丸:監督から2年ぐらい前に「こういうお話を作ってるよ」と脚本を読ませていただいたんです。ヴァンパイアの物語で、女子高生と大人の女性のお話というくらいしか分からなかったけど、読んだ時は本当に衝撃を受けました。あまりの容赦のなさにビックリしました(笑)。監督とは「ウルトラマンネクサス」とか、主に子ども向けの作品でご一緒していたので、このように衝撃的な作品を撮ろうとされているのかという驚きが大きかったです。役を作っていく段階で、綿密に脚本を読んでいくにつれ出てきた疑問などは、監督とディスカッションしていきました。
──演じる前と後では印象が変わりましたか?
高橋:私は、シオンさんが演じた苓への印象が変わりました。脚本を読んだ時はあまり感じていなかったけど、シオンさんが演じる苓を目の前で見たら、すごく人間らしいというか、苓を見て苦しいという気持ちが芽生えてきました。すごくミステリアスで何を考えているか分からないけど、一瞬人間らしさを垣間見たというか…。
監督:やっていること自体は酷いことだから、文字で読むと同情の余地がないんだと思います。実際に、中丸シオンが気持ちを込めて演じたことで印象が変わったんでしょうね。同じく高橋さんが演じた美以那も、父親から虐待を受けているということはありつつも、直接父親には反撃できず、行きずりの男を殺そうとしたり、行為自体は酷いものですが、高橋さんが演じることで、観客が美以那に寄り添うことが出来る。(役者が演じることで)文字で読む以上に入りやすくなったんだと思います。
──中丸さんと高橋さんは、最初にお互いどんな印象を抱いていましたか?
高橋:私が最初にシオンさんという存在を知ったのは、この映画にも出ていて、私の所属する無名塾の先輩でもある渡邉翔さんが、「俺の大好きな女優さんがいる」と言って教えてくれたのがシオンさんでした。その時は、舞台のチラシを見せてもらって、めちゃめちゃ綺麗な人だな…って思いました。その後、「ファミリーヒストリー」(NHK/小中監督が演出した再現ドラマ)で共演させていただいて、そのときは一緒にいる時間が全くなくて、軽く挨拶する程度だったんですが、とても気さくな方でした。
中丸:写真のイメージで、すごく「怖わそうな人」だと思われるんですが、私、とても抜けたところがあって…、年上なのに頼りがいがないというか…(笑)。
高橋:でも、「美人で気さく」って、最強だと思うんですよ!シオンさんがまさにそれなんです。
中丸:今回共演させていただいて、すごい女優さんだなと思いました。役としてお互いあえてディスカッションをせずに、テスト、本番とぶっつけでやったんです。そしたら彼女から役の苦しみとか悲しみが、私の心の映像のなかにビュンビュンと飛んできたんです。アクションシーンやラブシーンもあったんですけど、特殊なシーンでも動じないし、さすが!無名塾で鍛えられたんだなと思いました。
監督:僕からみると、二人とも役に入り込むという意味で似たタイプだと思うんです。シオンさんも役柄に入り込むタイプですが、今回は美以那の視点で物語が展開していくので、高橋さんはそれ以上に入り込まなければならなかった。高橋さんは現場に入る時は美以那になった状態で、いつもの高橋さんと違うオーラを放っていたので、俳優陣もそういう気持ちにさせるような存在でした。いつもはそれをシオンさんがやっているんだけど、今回は高橋さんが率先してやっていました。
──監督は、なぜお二人を起用しようと思われたのでしょうか?
監督:シオンさんは「ウルトラマンネクサス」でヒロインを演じましたが、あの作品は、1クール目の最後に、彼女が主人公の腕の中で血まみれで死んでいくという、「朝から子どもにこんな画を見せるな」と言われるくらいの異色作なんです。その中でヒロインとして綺麗に登場するんだけど、実は自分は死んでいて、悪に操作されているマリオネットであると自覚して狂気に陥っていくというヒロインだったんです。そういった狂気のお芝居が必要だったので、オーディションでは色んな女優さんに気が狂っていく芝居をしてもらいましたが、その中で最も輝いていたのがシオンさんでした(笑)。
中丸:ヒロインなんて、私には絶対向いていないって思っていたんです。声も低いし…。でもちょうどその頃、他の作品で、薬物中毒の金髪少女を演じていたので、台本を頂いてビックリ(笑)。「よしっ!」って思いました。
監督:なかなかシオンさんの潜在的な能力を活かせる作品がなかったんですが、今回はちょうどいい作品だったので、シオンさんにお願いしました。高橋さんは、「ファミリーヒストリー」でご一緒した時に、無名塾にこんな女優さんがいるんだと思ったと同時に、『西の魔女が死んだ』も観ていたので、あの子が今、こんなに成長したんだと思い、ちょうど『VAMP』の脚本を用意してた時期だったので、この役をお願いしたんです。
──撮影で大変だったことはありましたか?
高橋:大浦(龍宇一)さんとのシーンですかね…。実際に殴られたりはしないですけど、自分の体に男性が馬乗りになって、あの気迫で来られるというのは、やはり美以那としてというより、自分自身が傷ついた…というとおかしいですけど…。でも、いくら想像しても美以那の人生には追いつかないというか、想像出来ないし、これは私自身の心で傷つくしかないって思って臨んでいたので、相手の役者さんの熱量をただただ吸収するというか…。やっている最中は辛くはなかったけど、現場から離れて家に帰った時、グッタリしました(笑)。
中丸:今日のような健康的な可愛らしい感じじゃなくて、撮影の年の夏は、日に日にカリカリになっていって…大変だったと思います。
──それは、役作りというわけではないんですか?
高橋:私、基本的にいつも具合悪そうに見えるって言われるんです(笑)。体質的にガリガリになってしまうので、役作りのために痩せたわけじゃないんですけど、自分では意識してなくても、心がすり減っているので、それとともに顔に出ちゃったのかもしれません。撮影が終わった後、色んな人に「何があったの?」て心配されました(笑)。でも、それは私にとっては嬉しいことでした。何より、楽しかったんです。
中丸:私は、大変だったことというより、楽しかったというか、撮影中は昼夜逆転するシーンが後半続いて、スタッフさんも含めてハイになっていく感じはありました(笑)。堀内(正美)さんとの2人のシーンが結構印象的で…。
監督:堀内さんも役を膨らませる人で、縛られている状態で「この人がこの状態だったら“プレイ”だと思うでしょ?」って堀内さんから出たアイデアで、「さすが先輩。スゴイですね!そこまでは気づきませんでした」っていうシーンもありました(笑)。
中丸:だから大変というか、無茶苦茶楽しめたというか、先輩が「本気で叩いて」って言うから、「失礼します!」て本気でやらせて頂きました(笑)。
──お二人の大胆なベッドシーンもありました。
監督:リハーサルもしましたが、ラブシーンに至るまでの気持ちが納得できないと、二人が動けないと思うので、そこは話し合いました。苓が美以那を巻き込んではいけないと思い、拒絶しながらも一緒にいたいという気持ちもある。お互いの気持ちは分かっているけど、最後の一歩を踏み出すまでのやりとりをどうしたらいいのか、演じる側の気持ちを作り上げるためにも、細かく脚本を直していったりしました。
中丸:性別を超えて、お互いがものすごいトラウマを抱えていて、へこんだものを埋め合うようなイメージでした。感情的に難しいけれど、そこに至るまでの原動力が何か、なぜそこに行き着くのかは色々悩みました。ラブシーンでは振り付けとかありましたが、細かいところまではその通りに出来ないものです。何しろ、あんなに“素っ裸”になったのは初めてなので(笑)、お互いどう出たらいいのか、話し合ってやる感じじゃなく、私がキスしようとすると、高橋さんが震えていたり、そういうのを一つ一つ感じながら演じていった感じです。
監督:撮影前にも話していたのは、海外の作品でも有名な女優さんは普通に脱いでいたりするけど、日本映画って脱ぐ女優さんとそうでない女優さんがはっきり分かれていて、ギリギリで処理することが多いじゃないですか。ストーリー上では意味がわかるから問題ないかもしれないけど、観ている側は妙な隠され方をすると不自然さを感じて覚めてしまう。何故洋画ではそれが自然に出来るのに、日本映画では特別視されてしまうんだろうと感じる事がありました。今回は、普通に必要なシーンで必要なだけ脱いで、あえて変な隠し方をしないで済んだのはとても良かったです。
中丸:綺麗に撮っていただきました。
──後半では激しいアクションシーンもありましたが、大変でしたか?
高橋:やっぱり、見せることが難しかったです。殴ったり蹴ったりするのも、どこに向けてどれくらい手を伸ばしたらいいのかとか、戦い方を全然知らなくて、自分では力を入れて強くやったつもりでも、映像では全然見えてなかったりする。お客さんに伝わらなければ意味がないので、客観的に見せなきゃいけないっていうのが難しかったです。
監督:カメラアングルの問題もあるので、そこが分かっているか分かっていないかで違ってきますよね。それはアクション監督の大橋明さんがよく指導してくれたと思います。
中丸:覚えやすいように、稽古の時からカット割りして撮っていただいて、それを観ながらイメージトレーニングして、3日ぐらい練習したと思います。私の場合、アクションの相手役が北岡龍貴さんというアクションの上手な方だったので、何でも受け止めてくださって、とてもやりやすかったです。でもそれまで暗いシーンが多くて、アクションでは身体を動かせるので、楽しかったです。大変でしたけど、怪我もなく(笑)。
監督:芝居をやりきった後の最後アクションだったから、最後のイベントのようなものでしたね。二人とも女優なので、アクションには慣れてなくても、要所要所の芝居で本気度を見せてくれるので、女優さんのアクションとしては良かったと思います。
──アクションシーンやご自身が出ていないシーンも含め、完成された作品を観てどのような感想を抱かれましたか?
中丸:初号を観たときに、すごくエンターテイメント性の高さを楽しんで観られました。思ったよりも、えげつなくないというか…(笑)。あと、監督をはじめ日本を代表する特撮界のスタッフさんが集まったせいか、あんなに酷暑の中で撮影していたのに、映像はものすごく涼しげでヒンヤリした映像になっていたし、音楽も素晴らしかった。最初に脚本を読んだときとは全然違う印象でしたね。
高橋:観終わった後にクラクラしちゃいました(笑)。ゆうばり映画祭でも観ていたので、2回目は冷静に観られました。映画全体はすごく美しいし、シオンさんも、(田中)真琴ちゃんもヴァンパイアとして合っていて、刑事さんもリアルだったし、お父さんも最低なのに不思議と悲しく見えてくる。色んな人が存在する物語として面白かったです。
監督:それぞれの役者さんが、自分が演じる人物の世界があると受け止めて、突き放さずに演じてくれたんですね。それぞれ役を愛しながら演じてくれた感じは出ているじゃないかと思います。
──ゆうばり映画祭で上映された時、観客からどんな反応がありましたか?
監督:夕張は、僕と高橋さんとで出席したんですが、初めてお客さんに観ていただくのでドキドキしていたんですが、感想を言ってもらったり直に接することができてよかったです。年配の方から「ドキドキしながら観ました」と感想をもらったので、結構幅広い世代に受け止めてもらえたんだなと思いました。
高橋:直接感想を言ってくださる方がいたんですけど、一番嬉しかったのが、私の姿を見た女性の方が、「この子本当に大丈夫かな…と思ったんです」と言ってくれたことでした(笑)。誉めているのかどうか分からなかったんですけど(笑)、その方の中では、私がちゃんと美以那として存在出来ていたんだなと、自分に都合の良いように解釈したんです。結構苦しい場面が多いので、そこをちゃんと目を離さずに観てくれた方が、「この子大丈夫かな?」と感じてくれたのは嬉しかったです。
監督:褒め言葉ですね。
中丸:試写を見た方から、「二次元的なお芝居が面白かった」というメールをいただいたのが印象的でした。自分の演じるキャラクターについて、監督と話して、どういう意味なのかとかすごく悩んだんですけど、監督から「ダークヒーローでいて欲しい」と言われて、その単語で納得し、楽になりました。頭でリアルに想像するよりも、私はこの映画の中でダークヒーローでいればいいんだと。そういうものが伝わったんだなと思いました。
──最後に、本作をお楽しみにしている方にそれぞれメッセージをお願いします。
高橋:作品全体が美しいですし、ただのホラー映画じゃないというのは伝えておきたいです。色んな要素が含まれているので、エンターテイメントとして楽しめるし、人間ドラマ的な要素も楽しめます。観ている人それぞれの視点で楽しんでいただけたらと思います。
中丸:SNSでチラシが出回った時、男性でも「怖そう…見られるかな」っていう方を見かけたんですが(笑)、怖いだけじゃない、色んな要素がある物語です。初日は舞台挨拶もありますし、私が一緒にいるので大丈夫ですよと伝えたいです(笑)。一緒に観ましょう!
監督:人間の深層心理の本質を描くのに、ファンタジーとかホラーが有効な手段だと思い、そういう映画を作ってきました。今回、ヴァンパイア映画という形式を借りながら、人間のダークな部分を見せたいと思い、その芝居を中丸シオンと高橋真悠がしっかり演じてくれているので、そこを観ていただきたです。あと、真面目な映画と思いきや、割と振り切ったエンターテイメントとして、意外な楽しみも隠されているので、そこも観ていただきたいなと思います。


2019年8月26日
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『VAMP』
「夏のホラー秘宝まつり 2019」にてオープニング上映 8/23(金)~キネカ大森、8/24(土)~シネマスコーレ、8/24(土)~シアターセブンにて開催