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最後に、片隅にある良心を信じたい──『藁の楯 わらのたて』大沢たかお インタビュー

藁の楯 わらのたて

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大沢たかお、松嶋菜々子、藤原竜也。国民的人気と知名度を誇る3人と、鬼才・三池崇史監督の強力コラボで贈る話題作『藁の楯 わらのたて』。本作は、高額の懸賞金をかけられた凶悪犯を護衛する5人のSPと警察官たちの、命がけの道程と心の葛藤を描いたアクション・サスペンス大作。いつ誰が何処から襲い掛かってくるか分からない緊張状態の中、任務遂行のため“人間のクズ”の“楯”となり護衛する…そんな主人公・銘苅一基(めかりかずき)を演じた大沢たかおにインタビュー。自身の演じた役柄や三池監督の現場について伺いました。
最後に、片隅にある良心を信じたい──『藁の楯 わらのたて』大沢たかお インタビュー
──木内さんの原作や脚本を読み、銘苅というSPを演じるにあたって、どんな役作りで臨んだのですか。
大沢:スケールが大きくて、ちょっと現実離れした話なので、作品としても演じる人物としても難しい題材だなとは思いました。三池監督の意見もあり、銘苅という人物を非日常的なスーパーヒーローにしないように、等身大の、実際にこの国にいる“警視庁のSP”という枠から出ないように、というのは基本的なルールとして決めました。所作だけじゃなくて彼らの行動パターン、射撃訓練やフォーメーションも、想像では出来ないことだし、勝手に決めちゃいけないものなので、実際のSPの方に話を聞きながら、地味だろうが何だろうが皆でリアルさを追求しました。
──実際のSPの方に話を聞いて、彼らの仕事をどう思いましたか?
大沢:漠然と思っていた印象とはずいぶん違っていましたね。SPは悪い人を捕まえるわけではなく、とにかく対象者をいかに守って逃がすか。好き嫌い関係なく、その人の“楯”になって自分が撃たれる可能性もある。そもそもそれを仕事として出来るかっていうと、僕には出来ないなとは思いました。
──演じていて難しかったですか?
大沢:難しいと言うよりも、感情や性格が表に出ちゃいけないのがSPの絶対的なルールなので、銘苅は主人公だけど自分の感情を表現せずに物語を引っ張っていく。普段あまりない感じだったので、良い意味で挑戦的だなとは思っていました。僕らの仕事は感情を見せる仕事なので、真逆をやっているというストレスは感じましたし、日々葛藤しながら演じてました。
──感情を抑えて演技をするなかで、「人間のクズ」という清丸に接するわけですが…
大沢:清丸に会う前のほうが葛藤がありましたが、清丸を移送している時は、感情はシャットアウトして、ただの“対象者”として観るようにしていました。それでもムカッとする時もあるけど(笑)、基本的にSPは感情を出さない特別なトレーニングを受けている人たちなので、いちいち感情的になっていたら隙ができてしまう。直接見ない、話しちゃいけない、感情的になってはいけない、その前提でトレーニングしましたし、その感覚はわかりますね。

対象者を視野に入れつつ直接は見ない、反対側の人は僕の見えない範囲をカバーする。実はそんな計算もちゃんとあって、松嶋さん演じる役と僕の位置はお互いの死角にあり、位置は正確にとってました。映像ではさっぱりわからないと思うので、むしろ説明書とか付けて欲しいくらい(笑)。
──三池監督の現場は初めてですね。
大沢:どの俳優も、一度やった人は何度も一緒にやりたいって言うし、誰に聞いても良い話しか聞かないので、どんな人なんだろうって楽しみにしてました。実際にお会いすると、人間的に奥行きがあって、本当に人を魅了する人でした。映画監督としては、これほど映画を楽しそうに撮る人はいないんじゃないかと。現場では少年のようにキラキラと笑っていて、役者とスタッフに対する気配りも忘れない。常に皆を楽しい気持ちにさせてくれるし、無駄なことに気を遣わないようにしてくれる。人間としても映画人としても、純粋に尊敬に値する人ですね。
──ご自身の刺激になった?
大沢:「もっと頑張んなきゃ」って思いましたね。無条件で信じて任せてくれるので。実はそれが最もプレシャーなんですけど(笑)。任せてくれるということは、自分の実力がなんぼのもんじゃ…と、毎日自分に問わなきゃいけない。年齢を重ねるにつれて、そういう局面って少なくなって、どんどん陥っちゃう場所がある。毎回気をつけてはいるけど、もっと成長しなきゃいけないと改めて感じましたね。
──藤原竜也さんとの共演はいかがでしたか?
大沢:藤原君が演じた清丸という人物が面白くて、藤原君=三池監督だったんです。三池監督も言ってたけど、清丸は自分の一部でもあって、笑い方ひとつにしても自身が投影したいものがすごくあって、藤原君を通していろいろ言わせるんです。台本にないけど、「ここで笑ってこうして」とか「ここで松嶋さんにこう言って」とか、すごいことを言わせて嬉しそうにしてるので、皆で爆笑してました(笑)。藤原君も「僕じゃない…」って松嶋さんに必死に謝ってましたから(笑)。そういう意味で清丸は、藤原君の肉体と感性を借りた“三池監督の清丸”であって、監督と役者が一つの人物を作りあげているのが、見ていて面白かったですね。そしてそれを映像で見ると、もののみごとに彼の狂気性が表現されていたので、映画を観て驚くことがいっぱいありました。
──松嶋菜々子さんとSPとしてコンビを組みましたが、現場ではどんな話し合いをしたのですか?
大沢:彼女なりに監督と話して、役のイメージもある程度掴んで現場に入ってますから、役柄について僕とあえて語り合うってことはないですね。松嶋さんも今回は男に囲まれてるし、この手の役柄もそんなに経験はないから緊張していたみたいだけど、メイクもほとんどしてないし、髪もバッサリ、いちいち鏡も見ないし、本人なりの気迫をすごく感じました。
──最後に、これから観る方々にメッセージをお願いします。
大沢:正義、悪、職務、人間の本質的なものとか、色んなメッセージが込められた映画ですが、監督とラストシーンの話をしていて、今の世の中って色んな問題を孕んでいて、決して素晴らしい世の中とは言いにくい。でも次の世代には、決してそんなに真っ暗じゃない、もしかしたら片隅に“良心”とか“愛”、“約束”があり、そういうものが繋がっていくかもしれない。僕自身は最後にそのメッセージがあると思って一貫して演じていました。

とは言え、映画を観る方は自由に!映画館で2時間ハラハラドキドキ、手に汗握りませんか。それが一番のメッセージですね(笑)。
2013年5月1日
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『藁の楯 わらのたて』
2013年4月26日(金)新宿ピカデリー他 全国ロードショー
公式サイト:http://www.waranotate.jp