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人間もゾンビも、“人間であること”を学んでいく──『ウォーム・ボディーズ』ジョナサン・レヴィン監督インタビュー

ウォーム・ボディーズ

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『50/50 フィフティ・フィフティ』のジョナサン・レヴィン監督が、「トワイライト」の著者も大絶賛したアイザック・マリオンの同名小説を映画化し、全米初登場No.1を記録した『ウォーム・ボディーズ』。本作は、ゾンビと人間が敵対する近未来を舞台に、ニンゲン女子“ジュリー”に恋したゾンビ男子“R”の奮闘を描いたハートウォーミングなラブ・コメディ。本作の公開を前に、ジョナサン・レヴィン監督が来日。直撃インタビューに応えてくれました。
人間もゾンビも、“人間であること”を学んでいく──『ウォーム・ボディーズ』ジョナサン・レヴィン監督インタビュー
──本作の原作は元々、インターネットのブログで公開されていた物語だそうですね。監督自身は、この原作とどのように出会ったのですか?
監督:僕の前作『The Wackness』('08/日本未公開)を気に入ってくれた制作スタジオ(Summit Entertainment)が、映画化権を取得したと言って紹介してくれたんだ。アイザック・マリオンという若い男の子がブログで連載していた物語で、読んでみてたちまち惚れ込んだんだ。ポップカルチャーと古典文学の要素をうまく使ったユニークなゾンビの物語で、トーンやひねり、不適さも凄く面白いと思った。是非監督したいと思ったんだ。
──シナリオ化するうえで、原作者とコラボレーションしたことは?
監督:原作をそのまま映画にするのではなく、原作者に対してリスペクトを残しつつ、僕の解釈もいれながら脚色するので、脚色のときはある程度、原作者と距離を置いた方がいいというのが僕の考え方なんだ。とはいえ、彼がどう感じるのかも重要だから、シナリオを一稿あげるごとに見せてはいた。この関係は撮影中も続いて、何度か現場に遊びに来たので、いくつかのシーンを見せて感想をもらったり話し合ったりもしたんだ。自分の原作だからといって色眼鏡で見ることもなく、すごく冷静で知的な感想をもらった。監督にとっては作業しやすい距離のとり方だったよ。
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──監督自身はゾンビ映画が好きなんですか?また、「ロミオとジュリエット」の要素もありますが、これまでのゾンビ映画と差別化したかったことなどありますか?
監督:ゾンビ映画はもちろん大好きで、ジョージ・A・ロメロの映画や『バタリアン』、ピーター・ジャクソン監督の『ブレインデッド』も好きだよ。でも、これまでのゾンビ映画との差別化は必ずしも考えていたわけではなくて、制作の時は、ゾンビ映画よりも『シザーハンズ』みたいなイメージを参考にしたんだ。でも、“ゾンビ愛”は感じてもらいたいと思っていたので、ゾンビ映画を研究しながら、ムーブメントコーチを招いて“我々のゾンビ”を作り上げたんだ。
──ゾンビのムーブメントコーチですか!?
監督:シルク・ドゥ・ソレイユのテクニカル・ダンサーに指導してもらったんだ。今回は、モントリオールで撮影したけど、シルクはあそこが本拠地だからね。これまでの、ゾンビの長くて豊かな歴史をリスペクトしながら考えたら、我々のゾンビはちょうど、ロメロのゾンビと最近のゾンビの中間ぐらいになったかな(笑)。
──ゾンビ映画ファンの反応は意識しましたか?
監督:もちろん、そういう人に観て欲しいと思っていたけど、正直、ハードコアなゾンビ映画ファンから「このゾンビは違うだろ!」って言われやしないかと心配はしていたんだ。でも、アメリカにおいては、みなオープンに観てくれた。“ゾンビ愛”を気に入ってくれたのかな?映画においてゾンビ神話はユニークな形で進化して続けているから、アメリカでは受け入れてくれたほうが多かった。これは嬉しい反応だった。
── ゾンビ映画って社会的なメッセージが色濃かったりしますが、この映画はあまり構えず、素直に「ゾンビに会ったら優しくしてあげよう」と思えました(笑)。
監督:そう感じてもらいたいと思っていたから、嬉しいよ(笑)。表立って声高にならないように、すごく努力して作ったんだ。
──ゾンビの視点から描いているせいか、戦闘モードではないゾンビの生活は穏やかな印象で、のんびりした死後という感じがちょっと羨ましくもありました(笑)。一方で人間側の世界は戦いに備えて殺伐としていました。
監督:原作は“R”の主観で全てが語られるので、ゾンビ側の世界ばかり描かれているんだ。脚色するにあたっては、人間の世界も並列して見せたかったので、世界観を一から作り上げた。結果、ゾンビ側の世界のほうが、リラックスしていて居心地よくみえるのは皮肉で面白いよね。

ゾンビ側の世界で日々ボーッとして、何も感じないでいるのは楽かもしれない。傷つくこともないしね。それでも彼らはあえて“感じる”ことを選択する。繋がりを求めて、人間になりたいと思っていくんだ。これは映画のテーマでもあって、人間であることの意味を忘れてしまった2つのキャラクターが、交流を通して学び直していくんだ。
──前作『50/50』では、シリアスなテーマをとてもカジュアルに描いていました。今作は、ロマンスとコメディにゾンビが加わりましたが、違った要素のバランスをとるのは難しそうでリスキーな感じもしますが、あえて挑戦するのは?
監督:僕はリスキーだと思っていなくて、むしろ真っ正面から描こうとするほうがリスキーなんじゃないかな。バランスをとるのは確かに難しくて、実際に撮っていても上手くいかなければ、カットするよ。こういったアプローチは、自分の人生観からくるのかもしれない。悲しい時に笑えたり、その逆だったり。これが僕なりの世界の見方だし経験だから、それを正直に描くんだ。ジャンルや神話を使いながら、色々な種類の物語を伝えられるというのも、映画作りの素晴らしさだからね。

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──キャスティングについて伺います。キュートなイケメンゾンビ“R”を演じたニコラス・ホルトはベスト・キャスティングだったと思います。どのように彼を選んだのですか?
監督:色んな人の名前があがり、オーディションをする中で最終的に彼に決めたんだ。イギリスのテレビシリーズ「skins」で彼を知っていて、チャーミングでユーモアがあり、脆さを出すのも上手い。なかなかこんなコンビネーションを持っている役者には出会わないし、何よりも彼はこの題材に対して何一つ怖がっていなかったんだ。喋らないで唸っている役柄は、一歩間違えるとアホのように見えてしまうからね(笑)。でも彼はとにかく好青年で、地に足がついていて賢い青年だった。会って話して、彼なら出来ると思ったよ。
──ヒロインのジュリーを演じたテリーサ・パーマーは?終末の女戦士といった雰囲気も素敵でした。
監督:ニコラスとのケミストリーを重視したんだ。オーディションでニコラスと脚本の読み合わせをしてもらったが、彼女はすごくいいエネルギーを出してくれた。何と言っても“R”は、めちゃくちゃ死んでいるわけだから、相手役としては生き生きとしたエネルギーやカリスマ性が必要だったんだ。それに加えて、外見はタフだけど内面の脆さもある。彼女の資質はピッタリだったよ。
──脇を固める役者さんも良かったです。特に、ゾンビ仲間の“M”を演じたロブ・コードリーさんは、コミカルな表現やエモーショナルなシーンで重要な役柄でした。
監督:“M”役のオーディションは、ゾンビチックに演じる人が多くて、見ていてちょっと辛かったよ(笑)。でも、その中でロブはもの凄くリアルに演じてくれて、“M”というキャラクターを信じさせてくれたんだ。彼はコメディ畑出身で、アドリブが上手くて「唸るだけでアドリブができるんだ!」って思わせてくれた(笑)。実際に一緒に仕事をしてみると、セス・ローゲン(『50/50』)とちょっと近い感じだった。必要テイクが撮れた後、2〜3パターンを自由に演じてもらうと、凄く良いものが撮れるんだ。

これまでもロブは、ロマンティック・コメディの『ベガスの恋に勝つルール』や『ライラにお手あげ』で主人公の友達という役柄が多かったけど、今回はさらにドラマ性のある役柄で、細かい心の機敏を見せてくれたと思う。本当に素晴らしい役者だと思うよ。
──クライマックスでは団体戦のアクションもありました。CGも使ったと思いますが、ここまで大がかりなアクションは初めてでは?
監督:確かに、こんなに大がかりなアクションは初めてだから、ある意味挑戦でもあった。“ガイコツ”(進化したゾンビ)はCGなので、スタントマンがボディスーツを着て動きを表現して、それをCG用に色んな角度から撮るわけだから、撮影に時間がかかるのも大変だった。でも、映画作りという視点で見ると、大変さには大差はないんだ。10日ぐらいに分けて撮影をしたけど、VFXスーパーバイザーとの作業を経て、クランクアップ後にも追加撮影して、よりシークエンスに対する理解が深まったし、学ぶことも多かった。今回はもちろん満足しているけど、経験値を上げたし、今後もより良いアクションが撮れると思うよ。
──最後に、これからご覧になる方にメッセージをお願いします。
監督:『ウォーム・ボディーズ』は、楽しく笑えて、ちょっと考えさせてくれる映画なんだ。みんなが驚いてくれると嬉しいよ。
2013年9月18日
『ウォーム・ボディーズ』
2013年9月21日(土)シネクイント他全国ロードショー
公式サイト:http://dead-but-cute.asmik-ace.co.jp