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薙刀・アイパッチの少女に投影した2つのキャラクターとは? 『Z〜ゼット〜果てなき希望』鶴田法男監督&川本まゆインタビュー

Z〜ゼット〜果てなき希望

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「コージ苑」で知られる日本ギャグ漫画界の重鎮・相原コージの原作漫画を、Jホラーの先駆者・鶴田法男監督が実写映画化した『Z〜ゼット〜果てなき希望』。本作は、ゾンビが発生し、バンデミックな状況下に置かれた病院を舞台に、人間とゾンビとの壮絶な闘いを、激しく、時にユーモアを交えながら描いたゾンビ・パニック・ホラー。映画の公開を前に、鶴田監督と、薙刀を振り回しゾンビを蹴散らす主人公・戸田を演じた川本まゆにインタビュー。映画に込めた想いや撮影を振り返っていただきました。
薙刀・アイパッチの少女に投影した2つのキャラクターとは? 『Z〜ゼット〜果てなき希望』鶴田法男監督&川本まゆインタビュー
──鶴田監督はこれまで様々なホラーを撮ってきましたが、今回、ゾンビ映画を手がけたのは、念願叶って…という感じなんでしょうか。
監督:逆ですね。監督業を始めて二十数年のなかで、ゾンビものの話は何回かいただいたことはあるんですが、基本的にお断りしていました。というのは、80年代に『13日の金曜日』のような、いわゆるスプラッターホラーが欧米から輸入されて大ヒットしましたが、僕は、日本には“怪談”という素晴らしいホラーがあるのに、どうして欧米の残酷なホラーを面白がって観るんだろう?という不満があったんです。それが発端で、ビデオ『ほんとにあった怖い話』を手がけました。だから、スプラッターやゾンビ映画に対しては非常に否定的だったので、興味ないですと断っていました。

でも今回、相原コージさんの原作を読んで、そこに書かれている希望のメッセージが素晴らしいと思い、何が何でも映画化しなくちゃと思って取り組みました。映画って、上手くいくと世界に発信できるものだから、色々な問題を抱えている今の日本でこういうものを作って伝えていったら、世界の人たちは受け取ってくれるんじゃないかという思いもありました。
──“希望”や“生きる”という部分には熱いものを感じながらも、中学生の男の子のシーンなど大爆笑しながら見ていました(笑)
監督:そこはやはり相原さんの優れているところですよね(笑)。ゾンビは死の象徴で、突然降りかかってくる死を前にしても人間は“生と性”にこだわっている。普段の生活でセックスの部分なんてのは当然、人前にはさらけ出さないしオブラートに包んでいるわけだけど、相原さんの原作はそれをすべて剥き出しにしてるんですね。そこが面白いし、人間らしいんです。登場する中学生なんか本当にバカですよね(笑)。そういう人間らしさも描きたいと思いました。
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──原作はオムニバスですが、数あるストーリーの中でもインパクトのある“薙刀の少女”が軸になりました。この少女・戸田に川本さんを起用したのは?
監督:薙刀をもってゾンビを退治していくというキャラクターですから、当然、ちゃんと薙刀を振り回せる人じゃないと意味がないんです。色んな方にお会いするなかで、お芝居と薙刀のどちらかがダメだったんですが、彼女をオーディションした時、薙刀を持ったその瞬間、もうキマッてるわけですよ(笑)。

あと、スケベな話なんですけど、彼女がミニスカートをはいていて、薙刀を構えた瞬間に、ミニスカートから出ていた太ももの筋肉がふっと浮いたんです。それがすごいと思って(笑)。薙刀を持ったことはないと言ってたけど、ちょっと練習すればすぐいけると思いましたね。
──薙刀を構えるショットは格好良かったです!川本さんは、本当に薙刀を持ったことがなかったんですか?どれくらい練習したんですか?
川本:本当に初めてでした。練習は、基礎とか立ち方を学んだのが1日で、あとは自宅に持って帰って、クランクインまで自主練習していました。
──刀ではなく薙刀というのがまた良いですね。
監督:ゾンビ映画って、ある程度の距離をもってピストルとかライフルでゾンビを撃ち殺しますよね。でも日本では無理があるので刀になると思うけど、刀だとゾンビとの距離が持てないんです。相原さん、上手いところに目を付けたと思います。薙刀って日本の長い歴史の中で生まれてきた武器で、日本の文化を背負ってるんですよね。正直、原作を読むまで薙刀の存在を忘れていましたが、ちょっと忘れられた、日本の新しい一面としても見せられるんじゃないかと思いました。
──戸田の薙刀は原作のままですが、アイパッチは映画独自の特長ですね。戸田のキャラクターはお二人でどう話し合ったんですか?
監督:まず、原作を読んだ時に、この物語は『ゴジラ』('54)と同じメッセージを持っていると思いました。その『ゴジラ』で、最後にゴジラを倒す芹沢博士がアイパッチをしてるんですよ。そしてもう一つ、僕は『ニューヨーク1997』が大好きなんですが、その主人公スネーク・プリスキンもアイパッチなんです(笑)。原作を読みながら、芹沢博士とスネークが僕の中で合致してしまったんです(笑)。それで川本さんに、理由も言わずにアイパッチを付けてもらいました(笑)。でも、彼女は彼女なりに戸田のバックグラウンドを考えてましたね。
川本:『ニューヨーク1997』は監督に言われて観ましたが、先に「Z〜ゼット〜」の原作を読んだ時に、戸田というキャラクターの背景も想像しながら読みました。この物語のゾンビは、何をされても死なないゾンビなので、戸田はこれまでどう闘ってきたんだろうとか、この先どうやって闘っていくんだろうとか。アイパッチは、幼い頃から薙刀を持っていたので、闘いのなかで傷を負ったり、誰かを守るために怪我をしたのかもしれない。それとも周囲を威嚇するためのアイパッチなのかも…とか、色んなことを考えていました(笑)。
監督:僕自身ももちろん、戸田は“不幸な生い立ちがあって、世の中を真っ正面からみれなくなった人”とは考えていたんですけど、あえて彼女に言いませんでした。まだ新人なので、あまり僕が言うと大変になるかな…と思ってのことで、自分なりに考えて欲しかったし、考えてきたら「それでいい」と言うつもりでした。初日あたりは戸惑っていたけど、3日目ぐらいからはもう戸田になりきっていましたね。人と話をするシーンでも、目線を合わせずそっぽを向いて話すとか、僕が注文をつけなくてもそういうことを意識してやっていたんですよ。ほとんどお任せ状態で、彼女を撮る時は楽しかったですね。
川本:片目が見えない中で強さを見せなければいけないので、とにかくいちいち格好つけて演じていました(笑)。「よーい!」の掛け声と同時に、背筋をスッと立てる感じでした。
監督:細かい話なんですけど、あかりと戸田が話すシーンで、立ち位置とカメラのフォーカス合わせが難しいシーンがあったんですが、彼女は何度やっても決められた場所でピタッと止まるので、カメラマンもやりやすいわけです。そういった基本的なことがきっちり出来る方なので、新人なのに新人とは思えなかったですね。
川本:褒められた(笑)。ありがとうございます!
──現場での鶴田監督の印象はどうでしたか?
川本:すごく優しかったです。(他の作品で)監督とお話しする機会が少なかったので、今回のように役について色々お話出来たのも良かったです。その中で、「今のシーン、格好良かったよ」とか言っていただいて、ちゃんと出来てるんだっていう自信にも繋がったし、コミュニケーションがとれたのが、すごく嬉しかったです。
監督:僕、いつも「怒ってる」って言われるんです(笑)。新人の女優さんとお仕事することが多いんですが、『リング0 バースデイ』の時の仲間由紀恵は、僕が声をかけると「また怒られるのか…」って怯えてたらしいんですよ(笑)。自分ではそんなつもりはないので、ちょっと複雑な気持ちなんですけど。今回は新人の女の子ばかりなので、なるべく怒らず、父親のような大きな心で接しようと思いました(笑)。でも、彼女たちは自分なりに考えて作り込んでいたし、台詞でもポーズでも、ちょっと注文するとバチッと決めてくれたので、怒ることもなかったですね。
『Z〜ゼット〜果てなき希望』
──最後に、これから観る方へメッセージをお願いします。
川本:アクションもカッコいいし、ゾンビも本格的です。映画のサブタイトルに「果てなき希望」とありますが、観終わったときにその意味がわかると思います。地獄のような過酷な世界で、主人公たちが希望を見つけて生き抜こうとする姿を見て、明日への希望とか色んなものを感じていただければと思います。
監督:ゾンビ映画ですが、単に残酷でショッキングなホラーではありません。僕は『ゴジラ』('54)と同じメッセージを持った作品という意識で作りました。今年、ハリウッドでリメイクされた『GODZILLA ゴジラ』が7月25日に公開されますが、『Z ゼット』は7月26日公開です。同時期の公開は全くの偶然なんですけど、ぼくは偶然じゃない気がしています。是非、『GODZILLA ゴジラ』を初日に観たら、翌日は『Z〜ゼット〜果てなき希望』を観に来てください。
2014年7月24日
『Z ゼット 果てなき希望』
2014年7月26日(土)より、シネマート六本木、シネマート新宿他全国公開
公式サイト:http://www.cinemart.co.jp/z/