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ゾンダーコマンドが決死の覚悟で収容所を撮影 映画『サウルの息子』本編映像解禁

サウルの息子

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第88回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされているハンガリー映画『サウルの息子』(1/23公開)より、本編映像の一部が解禁された。
ゾンダーコマンドが決死の覚悟で収容所を撮影 映画『サウルの息子』本編映像解禁

映画『サウルの息子』は、これまで歴史の闇に葬られてきた強制収容所の悲劇の部隊“ゾンダーコマンド”にスポットを当てた作品。ゾンダーコマンドとは、収容者の中から選抜された特殊部隊のことである。彼らの主な仕事は強制収容所に送られてきた同胞達の衣服を脱がせ、ガス室へと誘導するなどの“死への案内”である。同胞達を欺かなければならない罪の意識は彼らの精神を蝕んでいき、そして数か月生きながらえた後、彼ら自身も口止めに皆殺されていくのだった。

監督は『ニーチェの馬』で知られる名匠タル・ベーラの助監督をしていた38歳のハンガリー出身の若き新鋭ネメシュ・ラースロー。自身の祖先もホロコーストの被害にあっており、実際に“ゾンダーコマンド”によって書かれた資料を読んだことから製作を決意。本作は第68回 カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞、第73回ゴールデン・グローブ賞ほか賞レースで外国語映画賞受賞、第88回アカデミー賞でも外国語映画賞でノミネートされている。

今回解禁された映像は、主人公サウルが仲間の写真撮影を助けるため、わざと戸口に立ち彼の姿を隠そうとする。そして仲間のゾンダーコマンドはこの惨劇を外の世界に知らせるため、決死の想いでカメラのシャッターを切る。大量の遺体を焼却している為立ち込める大量の煙を目の当たりにし、呆然と立ちすくむサウル。その煙の中からはナチスの部隊が静かにサウル達に近づいてくるのだった。

このシーンは、ネメシュ監督が大きく影響を受けた、実際に存在したゾンダーコマンドが決死の覚悟で強制収容所の様子を撮影した4枚の写真の撮影現場を思わせる重要なシーンである。ネメシュ監督はその4枚の写真に関して「あの4枚の写真には深く影響されました。それらは大量虐殺を証言し、物的証拠となり、根本的な問いかけをしています。死や残酷さに直面した時、どんな視点をとるべきか?我々はこれを、サウルが収容所内を旅する間、突然、ほんの一瞬だけ、虐殺の光景を構築することに参加するという形で、映画の中心部分に入れ込んでいます」とコメントしている。

実際の4枚の写真は、1944年夏にアウシュヴィッツで撮影されており、収容者が撮影した写真は現在、知られている限り、この4枚しか存在しない。これらの写真の撮影者は、ここ最近の研究でようやく人物の特定がされている。当時、カメラのフィルムを歯磨き粉のチューブの中に隠などして何とかカメラとフィルムを持ち込み、ガス室の扉の陰から燃やされている死体を撮影したようである。この写真には手紙も付いており、「これを世に広めてくれ、写真さえあれば皆信じてくれるはず、そしてもっと撮影用のフィルムを送ってくれ」と書かれ、彼のこの惨劇を外部に伝えたいという想いがにじみ出ていた。

これらの写真を取り上げた「イメージ、それでもなお アウシュヴィッツからもぎ取られた四枚の写真」の翻訳者である早稲田大学文学学術院准教授橋本一径氏は本作に対し、「サウルの姿は私たちが仮に‘ゾンダーコマンド’として働かされていたら、彼のようになってしまったかもしれないということを痛感させられます。彼に自分を重ねずにはいられなくなります。自分がそこにいたらどうなるかということを実際には経験していない、若い世代の監督が描いたのです」と語っている。


2016年1月22日
『サウルの息子』
2016年1月23日(土)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
公式サイト:tp://finefilms.co.jp/saul