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米アカデミー賞受賞 辻一弘、オスカー像を手に凱旋帰国 日本で個展の予定も

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

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3月30日(金)公開の映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』のメイクアップを担当し、第90回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング部門で日本人初受賞を果たした辻一弘が、母国日本へ凱旋来日し、記者会見を行った。
米アカデミー賞受賞 辻一弘、オスカー像を手に凱旋帰国 日本で個展の予定も

1969年5月25日、京都市に生まれた辻一弘は、10代の頃から特殊メイクを独学で学び、黒澤明監督『八月の狂詩曲』や伊丹十三監督『ミンボーの女』の制作に携わった後、96年に『メン・イン・ブラック』の現場で働くため渡米。『PLANET OF THE APES/猿の惑星』『グリンチ』などを経て、2006年の『もしも昨日が選べたら』と、2007年の『マッド・ファット・ワイフ』でアカデミー賞にノミネートされた。

2012年には映画業界を引退し、現代美術家としての活動に専念していた折、ゲイリー・オールドマンから「あなたが引き受けてくれたら、私はこの映画(『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』)に出る。」と直接オファーが届き、「飛行機から飛び降りるような覚悟で」承諾。フィッティング、彫刻、装着、調整等、開発と試作に6ヶ月を費やし製作された“チャーチル”は、世界中で評価され数々の賞を受賞。見事、アカデミー賞でも、主演男優賞にゲイリー・オールドマンが、そしてメイクアップ&ヘアスタイリング賞にて辻一弘(他2名)が受賞し、W受賞を果たした。

会見では、オスカー像を持って登場し、授賞時の心境や今後の活動、そして若者に向けてのメッセージなどを語った。

──ついにオスカー受賞しましたが、辻さんに続きゲイリー・オールドマンが決まった時の気持ちは?
辻:この仕事が始まった時に、冗談を言っていたんです。“二人ともとれたら本当の意味でリタイアできる”と。賞レースで二人で賞を取り始めて、最後がアカデミー賞だったので、とても嬉しかったですね。
──実際にアカデミー賞で自分の名前を呼ばれる気持ちを教えて下さい。
辻:当日はすごい緊張していたんです。2時について、レッドカーペットを歩いて、式が始まるのが5時。アカデミー賞は長いのですがメイク&ヘア賞は二つ目の発表で早くてよかった。呼ばれた後は目の前に有名な役者が座っていてもそちらを見ずに、早く終わらせよう、これで(賞レースが)終わってよかった、と思いました。
──アカデミー賞でのスピーチで、「素晴らしい旅」と話していたのが印象的です
辻:この仕事は非常に素晴らしかったんです。映画の撮影は仕事としてこなしていましたが、それ以降、インタビューなどの取材も努力をしてきましたので、撮影だけではない意味で「旅」という言葉を使いました。いままでノミネートされた映画はそれほどたいした映画ではないのですが(笑)、今回の映画は素晴らしかったので、やった意味もあったし結果を出せました。
──素晴らしい特殊メイクで別人のようでした。造形のなかで一番難しかった点は?
辻:チャーチルとゲイリーの顔は全く違うんですね。似てればよかったのですが違かったので、メイクに見えないメイクをしたかった。つけすぎず、似させなければいけないバランスが難しかったですね。
──特殊メイクのコツは?
辻:どう完璧にやっても生き写しにはならない。映画の仕事というのは、万人が納得する結果を出さないといけない。でも、人それぞれやらせると違うことをするんですね。今回は、僕のやり方とゲイリーの演技とプロダクションの組み合わせでああいう結果が出たのは良かったです。
──アカデミーの受賞直後にNHKのドキュメンタリーを再放送していました。そこで、猫を飼っている様子がうつっていましたが、辻さんにとって猫とは?
辻:今も元気にしているんですけど、猫はストレスを解消してくれる。僕にとって非常に大事な存在ですね。2008年から飼っていますが以前は犬を飼っていました。
──今後の活動について教えて下さい。もう映画はやらないのですか?
辻:メインはファインアートなのですが、映画でも本当にやりたいことがあれば、やりたいと思っています。2020年に日本で個展をやるので、その準備で今とても忙しいです。なので早く帰りたいです(笑)
──アーティストの辻さんから見て。オスカー像のデザインはどうでしょうか?
辻:すばらしいですよ。他のトロフィーとくらべてもプロポーションも素晴らしいし、長い歴史があるだけある。自宅の作業場の応接エリアに置いています。
──受賞後、ゲイリー・オールドマンに会いましたか?
辻:受賞後、ゲイリーさんとはお互いに良かったと話をしていましたね。でも会場は人がたくさんいて話す時間もなかったので、また落ち着いたら会おうと言っています。
──師匠としているディック・スミスも特殊メイクで頂点にたちましたが、辻さんは彼を超えたと思いますか?
辻:周りは“新しい基準を築いた“と言ってくれた。(18歳のころから)映画をしているのでオスカーを取れたらいいなと思っていたので、複雑な気持ちもあるけれども、取れて良かった。
──夢を叶えた辻さんから、若い方に向けてアドバイスすることは
辻:やりたいことを自分の心に正直に、他人の意見を聞くな、と言いたい。結局何が一番大事なのかは自分しかわからないですから。自分で決めないとあとで後悔しますよね。あとは10年続ける、とか海外に一ヶ月以上住んでみるといういことでしょうか。僕も映画をやっていて12年。目標を切り替えるまで10年かかったんですね。辞める決心がついて、やりたいことやっていると、人生が良いことに繋がっていく。やっぱり自分のやりたいことを見極めるということは、大事だと思います。日本人はなかなか自分を信じられない人が多いので、自分を信じたほうが良いですね。
──辻さんにとってのハリウッドとは
辻:映画の仕事をするのであれば、経験をしたほうが良い場所。良いところも悪いところもあるし、生き残っていくのは合う、合わないもあるので、大変。一言では言えないですね。僕の場合はいったん離れてみたのがすごく良かった。外から見ると理解が深まるので、それは恵まれていました。
2018年3月20日
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『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』
2018年3月30日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
公式サイト:http://www.churchill-movie.jp/