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朝井リョウ・吉田大八監督が、早稲田大学に凱旋!『桐島、部活やめるってよ』 ティーチインイベント

桐島、部活やめるってよ

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8月11日(土) より公開される映画『 桐島、部活やめるってよ』のティーチインイベント付き特別試写会が、早稲田大学・大隈講堂で開催。上映終了後、安藤紘平早稲田大学教授をホスト役に、吉田大八監督と、26歳で今回がデビュー作となる枝見洋子プロデューサー、そして原作者の朝井リョウが登壇した。
朝井リョウ・吉田大八監督が、早稲田大学に凱旋!『桐島、部活やめるってよ』 ティーチインイベント

映画『 桐島、部活やめるってよ』は、その原作である同名小説の著者・朝井リョウが小説すばる新人賞を受賞当時、早稲田在学中だったことでも話題の作品。さらに、本映画の吉田大八監督は、早稲田大学第一文学部卒業で、在学中は映画サークル「ひぐらし」に在籍。そして枝見洋子プロデューサーもまた第一文学部で、卒業からわずか4年で本作の映画プロデューサーとしてデビューを飾った。

在学中の19歳でこの原作を執筆し小説家デビューを果たした朝井は、「大学に入って1年経ち、自分の中で17歳の時の感覚が薄れてきたと感じ、もったいないので書き記したいと思った」と、執筆の経緯を明かし、「高校生の時は、毎日ずっと狭い世界にいて同じ人と顔を合わせ同じ時間を過ごしていた。大学は、自分で考え自分で友達を作って行動する。自分とは遠い距離の人の何気ない行動が、周りの人間関係まで動かしてしまうのは、高校生の時しかなかったんじゃないか。それを中心に青春小説を書いたら、今までと違う切り口で話を組み立てられると思いました。不在の人(桐島)を中心に小説が書けるのかという挑戦もありました」と語り、「何か面接みたいになっちゃった…」と照れ笑いを見せた。

この原作の映画化へのいきさつを、枝見プロデューサーは、「読んだ時に、映像で観たいなと思うシーンがいくつもあった。すぐに企画書を書いたところ、佐藤貴博プロデューサー(『GANTZ』『デスノート』)から手を差し伸べていただいた」と語り、「原作はオムニバスで、それぞれのモノローグで語られるという繊細なものでした。せっかくチャンスをいただいたけど、どうやって映画にすればよいのか悩みました。そんな時『パーマネント野ばら』を観て、出演者の表情にグッと来て、この監督の撮る高校生の表情を観たいなと思いました」と、吉田監督へのオファーの経緯を説明。安藤教授は、「映画は、“私が観たい”、“誰かに観せたい”という思いから作らなければならない」と頷いた。

一方、原作について「もっと甘酸っぱいものだと思っていたら、逆にヒリヒリするような、色んな気持ちの動きを丁寧に描いていて面白かった」という吉田監督。映画化にあたっては、「同じ風景が視点によって違うものに見えてくることを活かしたかった。桐島が部活をやめたというニュースが伝わる金曜日を繰り返すことで、この先何か不穏な予感が観客の中に育っていく。何度も繰り返すことで、ちょっとイライラしてもらうのも狙いでしたね」と語った。

小説でも映画でも“不在の桐島”。この扱いについては、「映画では、顔が映るだけで具体化されてしまうので、小説のように扱えるか、朝井さんから難しい問題を出されている気がして、この難問に答えられれば、映画がうまくいくという根拠のない確信がありました(笑)。桐島がどんな存在か、登場人物が行為やセリフや表情で語る。すると桐島が立体的に浮かびあがり、桐島そのものが存在するよりもっと深く、観る人の気持ちに刺さってくるんじゃないかと思いました」

また、この“不在”の効果は、今回起用された演技経験のない役者陣にも影響したようで、「梨紗(山本美月)と宏樹(東出昌大)のバスのシーンでは、山本さんが感情的に高ぶっていて、本気で桐島に対して怒っていたんです。彼女は演技の経験がなかったけど、その瞬間、フィクションと現実の境目を超えて梨紗と一体になり、本当に桐島を好きになっていたんでしょうね。役者に対して桐島の存在をコントロールしようと思っていなかったので、それぞれの桐島が出てきて面白かった」と語った。

映画について朝井は、「親ばか発言かもしれないけど、本当にいい映画でした。映画化されて不幸な原作もいっぱいある中で、自分が思っていた「核」の部分が監督と合致し、そこがうまく描かれていたので、大満足です」。これに対し監督は、「もし僕が失敗したら、後20年ぐらいは映画にできないわけですから、ここでベストを尽くさないと(笑)。「あいつに預けるんじゃなかった」って言われたくないですから(笑)。僕自身が映画で言いたいことがあればオリジナルで作るので、原作ものは、あくまで原作者から預かっている立場。映画化するうえで原作を削ったり追加したりしても、そこを原作者に認めてもらえると嬉しいですね。役目を果たしたような達成感はあります」とホッとした表情で語った。

この日は、来場した学生たちからの質問も受け付け、映画の内容に関する質問に監督が答えたほか、「登場人物の誰に近かったか」という問いには、「観るたびに違ったりするけど、友弘かな。帰宅部でフラフラしてる感じが」と枝見プロデューサー。監督は、「取材でよく「前田でしょ?」という前提で聞かれるんですけど、前田ほど打ち込んでいなかったので、映画部の4番目ぐらいの子ですかね(笑)」と話し、会場の笑いを誘った。朝井は、「小説を書いた時のメインキャラクターが5人なので、それぞれ5分の1づつが自分です」と回答した。

また、運動部に所属していて将来は映像関係の職に就きたいという女子高校生からは、「今の私がするべき努力は?」との相談。枝見プロデューサーは、「好きなことのためなら頑張れるから、それを追求することで生きる道につながると思う。私も高校時代から映画が好きでしたが、どんな職業があって何をすべきか分からなかったけど、受験を機に(早稲田大学の)文学部の映像・演劇に辿り着いた。そこで同じ好きなことを追い求める仲間に出会えたのがよかった」。吉田監督は、「僕は大学から映画に興味を持ち始めて映画監督になった。(高校生なら)今は好きなことに打ち込んでいてもいいのでは?」と、温かいエールを送った。
2012年7月4日
『桐島、部活やめるってよ』
2012年8月11日(土) 新宿バルト9ほか全国ロードショー
公式サイト:http://kirishima-movie.com