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女子限定!『空気人形』是枝監督&ペ・ドゥナのティーチ・イン付き試写会イベントレポート

女子映画評議委員会Cinema Preview『空気人形』

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TOKYO FM [CINEMA80]MUSIC ON! TV [MOVIE ON!]が発足した「女子映画評議委員会」は、最新の映画やDVDを女性視点で鑑賞してガールズトークを繰り広げる、女子限定の特別プログラム。 シネマトリビューンでは、この女子映画評議委員会で行われたイベントをレポートします。
画像:女子映画評議委員会レポート

9月17日(木)、秋葉原UDX THEATERで行われた「女子映画評議委員会Cinema Preview『空気人形』」は、招待された約120名の女性客が、是枝裕和監督の最新作『空気人形』を観賞後、監督と主演のペ・ドゥナに、率直な感想と、気になる質問をぶつける、ティーチ・イン形式のスペシャルな試写会。会場では、エンドロールが終わり、場内が明るくなると、目を潤ませている女性もチラホラ。そんななか登場した是枝監督は、女子だけの会場を見渡して、「緊張せざるを得ない状況ですね」と、少し照れくさい様子。そして、今まさに、映画で愛らしい“空気人形”を演じたペ・ドゥナが登場すると、客席から「かわいぃ~!」と歓声があがりました。

是枝:最初にこの映画を撮りたいと思ってから9年かかりましたが、自分のなかでは、種を蒔いて水をやり、自然に木が育って実をつけるまでに必要な時間だったと思います。素晴らしいキャストとスタッフに恵まれて自分の力以上の映画になったと思っています。ここで少し話し合うことで、お土産がまた少し増えたりするといいなと思います。
ペ・ドゥナ:空気人形を演じたこと、監督にキャスティングして頂いたこと、非常に光栄に思っています。今日、お話しするにつれて皆さんがどんな風に映画を見たか気になります。お会いできて光栄です。

観賞後の質問タイムでは、「待ってました!」とばかりに、早速客席後方から質問の手が挙がりました。

──吉野弘さんの詩を入れた狙いを教えてください。
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是枝:原作を脚本に膨らませていっていたときに、作者が“空気人形”という存在に、僕たちが生きていて否応なく感じる空虚感や孤独感を重ねているんだな、と感じたんです。最初は「性」が中心になる映画だったんですが、その奥に「生」を描く必要があると思いました。 その後、たまたま仙台で『誰も知らない』の上映会があり、それを主催された国語の先生からお手紙を頂いたんです。そこには「あなたのお話にあった、人間と人間のつながりを見事に描いている詩があるので送ります。」と書かれていて、同封されていたのが吉野さんの詩でした。普段、欠如、欠落はネガティブに捕らえているけれど、他者と繋がっていくという可能性なんだという詩でした。それに触れたときに「空気人形」の話だと思いました。先生には「空気人形」の話はしていなかったんです。
僕が感動したその体験を、人形にも同じように体験させることで、自分のなかで価値観が反転していく、それに重ねられると、最初に思っていた「性」のむこうに「生」が見えてくると思いました。
映画を作っていくプロセスの中で、ペ・ドゥナやカメラマンのリーさんとの出会いも大きいのですが、スタッフでも何でもない人から頂いた手紙の中にあった詩が、自分の方向性を大きく変えていくということが素敵だと思いました。
──ペ・ドゥナさんは、この役柄をどう思いましたか?
ペ・ドゥナ:空気人形は、誰かの寂しさ、空しさを満たしてあげるという存在なんだと、肯定的に捉えました。彼女は秀雄のために存在していて、彼の寂しさを埋めてあげることができると思うと、拒否感なく空気人形になれたし、その間はとても幸せな気持ちで存在感を感じることができました。純一を愛するようになり、秀雄が別の人形を連れてくる。その時に心を痛めたり、自分の存在について葛藤したりするんですが、演じているうえでは、全く問題ありませんでした。むしろ誰かの慰めになれるし、詩に出ているような役割が果たせると思うと、幸せな気持ちになれました。
──お二人が一番好きなシーンを教えてください。
ペ・ドゥナ:どのシーンも好きで、そのときによって変わりますが、それでもひとつ挙げるすると、空気人形が佳子(余貴美子)にファンデーションをあげるシーンです。おせっかいなんですが、空気人形の純粋な気持ちが表れていると思います。あとは、オダギリさんとの別れのシーン。「いってらっしゃい」、「いってきます」というのも、切ないけれど、美しいと思いました。
是枝:2つでもいいかな(笑)。ペ・ドゥナに関していうと、船の上のシーンですね。真冬の寒い時で、初めて満たされて外へ出て、世界に触れていく時の表情、橋の上で手を振っている人に手を振り返すカットが好きです。船の上だけで最初は12分あって、スタッフは、僕が切らないんじゃないかと心配していたくらいです。
あとは、ラストで人形が夢をみて、みんながハッピーバースデーを歌うカットのあと、現実に戻った時に拍手が聞こえるシーンがあるんですが、あのペ・ドゥナの表情に拍手が入るのがいい。彼女が自分で聞いたんだとおもうと、色んなことを考えちゃいました。
──監督はどうしてこんなに女心がわかるんだろうと思いました。
是枝:女心は解んないよねぇ(笑)。でも、解らないなりに考えました。心を持った人形がどんなふうに感情が動くだろうか、こういう時は嫉妬するんじゃないか、こういう時は、自分がしてもらったことを相手にもしてあげたくなるんじゃないかとか。ただ、すごく参考になったのが、オダギリくんの役のモデルになった方でした。その方は、自分の作っている人形を本当に愛していて、哲学的に、「人形ってなんだろう」「人間ってなんだろう」という一方で、職人的な、「体が冷たいのをなんとかしてあげたい」「線を消してあげたい」という思いがありました。作った人がそう思っているんだから、人形が心をもって動き始めたら、同じように思うだろう、とすると、もし線を消せたら、ミニスカートをはいて外へ出るだろうと。感情を想像しながら、メイクや衣装を考えました。スカートは短かったけれど、衣装の伊藤さんに「寒いんじゃない?」と言うと、「人形は寒さを感じない!」と押し切られました(笑)。結果的には、それがすごく彼女を魅力的にみせたと思います。色んなスタッフが色んな感情を込めて、人形を人間にしていったので、僕が女心を解ってるわけではないんですね(笑)。
──映画を観ていると、監督はペ・ドゥナに恋しているんじゃないかと感じましたが、監督がこの作品を通じて感じたペ・ドゥナの魅力は?
是枝:撮っている時はもちろん惚れてますよ!僕だけでなく、現場にいたスタッフはみんな彼女のファンになっています。それくらいペ・ドゥナは魅力的でした。それに、非常にプロフェッショナルで、現場に入ってくるときは常に100%の状態でした。朝、僕らより2~3時間早く入り、全身に人形のメイクをしてもらいながら、悲しいシーンでは台本に涙を落としていました。本番では泣けないので、今のうちに泣いて感情を作っておき、現場に入っていたんです。もう、惚れましたね(笑)。監督として負けないように頑張らないと、と思いました。
──是枝監督とお仕事して感じたことはありますか?
ペ・ドゥナ:もともと監督に対して思っていたイメージは、ものすごくシリアスで、苦悩する人なのだと思っていましたが、とても愉快な方でした。監督の印象を聞かれると「カンペキナカントク」と答えるんですが、スタッフにも気を配り、現場でも良い雰囲気を作ってくれます。リーダーシップもあり、クリエイティブも発揮していました。そして、自分で“これを作るんだ”、という強い意志があるにも関わらず、現場では私に何らかのインスピレーションを感じたら柔軟に対応するといった、心を開いた状態でお仕事をされていました。
ARATAさんが言っていたんですが、肌を露出する映画を撮るのは初めてというのが意外でした。あと、CGも初めてと伺いました。でも実際は1~2個以外はすべてアナログで、人形が私に変わるところや、空気が抜ける時など、本当に人の手で創れるんだろうか、というところもアナログでした。
是枝:ごっついオジサンが3人で、“どうしたら色っぽくなるだろう”と一所懸命考えながら動かしてました(笑)。でも、人形浄瑠璃みたいに、人が動かすことで感情に見えてくることもあるんだなと思いました。例えば、膨らんでいく手を彼女が見るシーンがあるんですけど、実際は首から下を床に隠して、ビニールの体をくっ付けているんです。だから、ビニールの体を見ている彼女の目線の、悲しみとか驚きといった感情は本物なんです。今にも泣きそうになっているのが、見ている僕も切なくなってくる。CGを否定するわけではないけど、ただ、手作業っていいなと改めて思ったわけです。
『空気人形』『空気人形』女子映画評議委員会レポート
──本日は女性だけの試写会でしたが、感想は?
是枝:哀しくて切ないシーンもあり、女性にとっては、見たくないと思うシーンもあるかもしれないけれど、それを逃げずに描きたいなと思いました。人形がどんどん人間になっていくと、いいことばかりじゃなく、人と関わることで傷つくことも傷つけることもある。逆に周りの人間たちは、傷つくことや老いが怖いから、人間であることからちょっと目をそらしています。人形が人間になっていく姿と、人間が人形ぽく見えてくるという“逆転”も考えていたので、色んな意味で、彼女が体験する辛いこともそうですけど、今回は逃げずに撮りたいと思いました。彼女がそれを全身で受け止めてくれたことで成功した映画だと思っています。
彼女の物語として観ると、哀しいかもしれないけれど、そこで終わっているつもりはなくて、だからこそ最後のシーンに拍手を入れたつもりです。そこから始まる物語もあるんじゃないかと思っています。是非、二度三度味わっていただければと思います。
最後に、観客席で監督とペ・ドゥナを囲んで記念撮影を行い、お二人は女性客からの握手の求めに応じ、深々とお辞儀をしながら会場を後にしました。

映画鑑賞後に、監督や出演者の思い、撮影時のエピソードを知ることで、『空気人形』のテーマをより深く理解できた様子の女性たち。集まったコメントでは、満足度100%といった数字も多く、恋する切なさや孤独感、空虚感に共感するメッセージが多く寄せられました。

↓女子映画評議委員会↓
女子映画評議委員会
『空気人形』是枝裕和監督独占インタビューも合わせてご覧ください
2009年9月18日
『空気人形』
2009年9月26日(土)、渋谷シネマライズ、新宿バルト9ほか全国順次ロードショー
公式サイト:http://www.kuuki-ningyo.com/