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『日輪の遺産』佐々部清監督が塾義トークショーに登壇~ 誰かのために必死になれる、それが日本人の遺産

日輪の遺産

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8月27日(土)より公開される、堺雅人主演の映画『日輪の遺産』。本作の公開を前に、学校の先生を対象とした試写会が東京・調布市で開催され、佐々部清監督、映画評論家の寺脇研がトークショーに登壇。調布市長の長友貴樹氏も駆けつけた。
『日輪の遺産』佐々部清監督が塾義トークショーに登壇~ 誰かのために必死になれる、それが日本人全ての遺産

映画『日輪の遺産』は、「鉄道員」「地下鉄に乗って」など、数々の名作を世に送り出してきた浅田次郎の原作を、『夕凪の街 桜の国』『出口のない海』の佐々部清監督が映画化。終戦間際の日本を舞台に、3人の軍人と20人の少女たちが、祖国の復興を願い重大な任務を遂行しようとする姿を描いた人間ドラマ。主演に堺雅人、ほかに中村獅童、福士誠治らが出演する。

6月25日(土)、文部科学省が取り組む「熟議」として行われた試写会では、上映終了後、数名ずつのグループに分かれ、グループごとに映画の感想や教育の現場、これからの日本について語りあった。普段から学校で教鞭をとる方が多く、中には、今まさに復興へ向かっている現在の日本と戦後の日本を重ね合わせて意見を述べる方も。そして監督や市長との質疑応答も行われ、多種多様な意見が交わされた。

質疑応答では、戦時中という時代の表現について佐々部監督が、「浅田次郎先生の原作を参考にしつつ、戦争を体験された方に直接お話しを聞いて作り上げていきました。主演の堺さんも、当時の近衛師団にいた方にお話しを伺って役作りをされています」と明かした。また、映画のタイトル『日輪の遺産』が意味することについて質問されると、「「遺産」とは「思い」のことだと思っています。作品を作るにおいて、≪日本人の特性≫を意識しました。映画に出てくる人物は、誰一人として自分自身のために動いている人はいないんです。誰かのためにこそ必死になれる、日本人としての良い部分を劇中で伝えたいと思いました。そういう部分は、日本人全ての遺産だという意味で捉えていただければ嬉しいです」と回答した。

また、本作の持つメッセージについて監督は、「原作のなかに、≪国生みの神話≫という言葉が強調されて出てきます。文字通り、国が生まれかわるという事なのですが、まさにこの一言に尽きるかと。敗戦を経験した日本が、わずか数十年で世界に通用する国に生まれ変わったように、震災や不況で苦しい状況の今、まさに日本という国は生まれかわろうとしている時期なのだと思います。いま、この作品が上映されることに、意味があると感じています」と語った。

映画評論家の寺脇は、「「絶対に戦争には負けない!」と、国民全員が必死に思いこんでいた戦時中の日本と、「原発は安全だ」と思い込んでいた現代の日本は似ている部分があるのでは」と指摘。劇中で勤労動員として呼集された20名の少女と、現在の福島の子供たちを重ね合わせ、「子供に決定権はありません。『日輪の遺産』の中で、20人の少女たちが命令に逆らえなかったように、福島の子供たちが「ここを離れたい」と願っても、彼らの意思で逃げ出すことが出来ないのが現状。だからこそ、我々大人が子供を守らなくてはいけない。まずは私たち大人が責任を持って生きていく必要があると感じました」。さらに、「今、福島で暮らしている子供たちが大人になった時、福島出身というだけで差別され、結婚できないかもしれない。10年後、福島出身の子と結婚できるか?、「できる」と言える子どもを育てていくことが、我々大人の、重大な使命です」と訴えた。

最後に監督は、「私は、映画という手段でしか語れません。これまでに『チルソクの夏』『夕凪の街 桜の国』など、寺脇さんの仰るような差別の問題を描いた作品も撮ってきました。今は、簡単に昔の作品も観ることができるので、是非、子供たちにも観てほしいですね。「こんなこともあるんだ」と、映画を通じて考えてもらえたらと思います。微力ではありますが、私自身で出来る〈映画〉という手段で、教育という現場を応援させていただければ嬉しいです」と会場の先生たちにメッセージを送った。
2011年6月28日
『日輪の遺産』
2011年8月27日(土)、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
公式サイト:http://www.nichirin-movie.jp/