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パク・チャヌク監督、映画界を目指す学生たちに特別講義!自らの赤面体験談も披露

イノセント・ガーデン

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『オールド・ボーイ』『渇き』のパク・チャヌク監督のハリウッドデビュー作『イノセント・ガーデン』(5/31公開)。本作のPRのため来日したパク・チャヌク監督が、22日(水)、東京・渋谷の映画美学校にて、映画界を目指す学生たちに向けて特別講義を行い、自らの新人監督時代のエピソードや撮影現場でのコミュニケーション方法を語った。
パク・チャヌク監督、映画界を目指す学生たちに特別講義!自らの赤面体験談も披露

東京・渋谷にある映画美学校は、実践的な映画・映像づくりを教える映画専門の教育機関で、この日は『おかえり』などで世界の評価も高い篠崎誠監督が司会進行として登場。パク・チャヌク監督は、篠崎監督と、映画を見終わったばかりの学生たちに盛大な拍手で迎えられた。

早速、監督となった経緯を聞かれたパク監督は、「私は映画が好きだったが、監督になろうとは思っていなかった」と話し、その理由を、「映画監督というものは、タフでケンカが得意でリーダーシップがあり、社交的な性格でなければと思っていた。私は本が好きで内気だったし、当時の映画界は怖いところと思い込んで臆病になっていた」と明かす。さらに「美術も好きだったが、2つ下の弟のほうが才能があったので、これも諦めた。でも、せめて美術に携わりたいと思い、美術批評家になろうと、美学を勉強するために哲学を専攻したのです」と、自らの学生時代を振り返った。

そして大学生活の中で、運命を変える2本の映画と出会うことになる。それが、キム・ギヨン監督の『火女’82』と、アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』だ。「『火女’82』は精神的で、たかが外れたような、ぶっ飛んだ作品。「韓国でもこういうものが作れるんだ!」と思えたものだった。『めまい』は、字幕なしで英語も聞き取れないまま観たので、夢を見ているような感じだった。私の作品で、夢を見ているような特徴があったとしたら、おそらくそこから影響を受けていると思います」

大学卒業後、映画の現場で下積みを重ね、いよいよ監督としてデビューすることに。自ら脚本を書いたものの、製作者からは、「アンディ・ラウが出るような、センチメンタルな香港のアクションのようなもの」と「人気歌手を使うこと」という条件が。こうして出来上がったパク監督のデビュー作は興行的に失敗となってしまったが、「今でも、テレビのトークショーなどで(主演の人気歌手の)過去を振り返る映像を流すとき、この作品が出るんです。すると、映画のタイトルが(ネット上で)検索語1位になってしまう(笑)。2本目に撮った『3人組』という映画も、ワイルドな脚本で大衆受けを狙ったが、自分の考えがまとまらないまま撮ったので、調和が取れない生ぬるい演出だった。どちらも本当は世の中から消えて欲しいと思っている(笑)」と赤裸々に語りつつ、学生たちに「どういった作品であれ、撮るならば、その作品が持つ方向性やカラーをしっかりと掴んで見失わず、最後まで貫いて欲しい」とアドバイスを贈った。

そして3本目の作品となる『審判』で、「ようやく気を引き締めることができた」と語る。「実はこれまで俳優というのは“操り人形”だと愚かな考えを持っていたが、この作品で認識を改めた。舞台で知性を磨いてきた俳優と討論し、コミュニケーションの仕方も身につけることが出来た。何よりも俳優を尊敬することを学んだのです」と述懐。そして今作でハリウッドに行き、「(コミュニケーション面で)どうしたらいいか心配だった」と語り、「私はお酒が好きなので、韓国では毎日のように、時には夜通し俳優と酒を飲む。リハーサルと称して地方のホテルで飲み明かすこともあるが(笑)、それが作品にとっていい助けになる。幸いにも今回はミア(・ワシコウスカ)とマシュー(・グード)が酒好きだったので、よく一緒に飲む機会があった」と明かした。

また、今作の製作現場でのコミュニケーションについて、「撮影に入る前、一週間ほどリハーサルを行い、脚本を一行一行読んでもらった。私はト書きを読みながら、何故これを書いたのか、台詞や行動の意味を一つ一つ説明した。すると自然と討論となり、理解し合えるまで話し合いが続く。隅々まで何の疑惑を持たない状態で撮影に入りたかったのです。なぜなら、撮影回数は40回と決まっていたし、通訳を介すると時間が2倍になるので、現場で意見の衝突が起きようものなら大変なことになっていた。事前に話し尽くしたので、現場では特に話すことも無かったくらいです」

さらに、学生たちへ向けて、「俳優とのリハーサルで大切なのは2つ。1つは必ずメインキャスト全員を集めて話し合うこと。お互いがどんな演技や動きをするのか知り、話し合う必要がある。もう1つはその後、個別に面会し、集まった時に言えなかったことを個人的に聞き出す」と話し、撮影現場でのコミュニケーションのポイントを、「一方的な考えを押しつけず、俳優やスタッフの頭の中から言葉や行動を引き出し、意見を聞きながら提案したり選択するのが監督の仕事。自らの言葉や考えでやっているのだと思えれば、彼らもクリエイティブな仕事が出来る。そこで初めてい現場が生まれるんだ」と説いた。

すると、篠崎監督から「それでも意見が対立してしまうこともあるのでは?」と、現役監督ならではの質問。これにパク監督は、「確かに途方に暮れます(笑)。対立したときは、両方を撮影し実際に観て判断するが、それでもダメなら…監督の考えを通すしかない。監督というものは簡単に引き下がってはいけないが、意固地になって面子だけ気にしてもダメだ。その時に立ち止まって、「果たしてこれは芸術的な主張なのか」と自分に問いただしてから主張すべきだ」と、具体的な例を交えながらアドバイスを贈った。

韓国映画界で成功を収め、ハリウッドへ渡っても独自の美学を貫き、海外メディアからも高い評価を受けたパク監督。篠崎監督や学生たちからの質問を受け、一つ一つのシーンに込めた想いを丁寧に説明し、最後には学生たちと記念撮影後、盛大な拍手で送られ会場を後にした。
2013年5月24日
『イノセント・ガーデン』
2013年5月31日(金)TOHO シネマズ シャンテ、シネマカリテ他 全国ロードショー