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[TIFF]『チェイサー』ナ・ホンジン監督が来日 最新作『哀しき獣』ティーチインに出席

哀しき獣

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『チェイサー』で世界を震撼させたナ・ホンジン監督の最新作『哀しき獣』が、第24回東京国際映画祭アジアの風部門に正式作品され、26日(水)に上映を迎えた。これに合わせナ・ホンジン監督が来日し、上映後にティーチインを行った。
[TIFF]『チェイサー』ナ・ホンジン監督が来日 最新作『哀しき獣』ティーチインに出席

映画『哀しき獣』は、中国の延辺朝鮮族自治州に住むタクシー運転手が、借金返済のため殺人を請け負うが、密航船で渡った韓国で罠にはまり深奥なる闇に直面していくクライム・サスペンス。『チェイサー』でタッグを組み、今や韓国映画界を代表する2人、ハ・ジョンウとキム・ユンソクがその脚本の素晴らしさから再び集結。既にハリウッドのメジャースタジオがリメイク権を獲得し、ナ・ホンジン監督によるリメイクも予定されている注目作だ。

26日(水)に東京国際映画祭での上映に合わせ来日したナ・ホンジン監督は、上映後のティーチインに出席し、観客からの質問に熱心に答えた。質問では「なぜ武器が斧なのか」「なぜあのシーンで彼は驚いたのか」など、具体的な疑問が寄せられ、監督は、「理解できない部分があったのは監督のミスですね。お詫びします」と苦笑いしながらも、劇中の設定を丁寧に説明。「韓国でもネットで説明をみて理解した人が多かった。観た後、理解に苦しむようなことがあれば、ネットに説明を書いて出しましょうか?」と話し、会場を笑わせた。

また、本作の原題は『THE YELLOW SEA(黄海)』だが、タイトルに込められた意味について監督は、「実際に密航ルートに沿って黄海を渡り中国へ行き取材したが、私が船に乗った日は海が穏やかだった。その時から考えていたが、シナリオを書きあげてピリオドを打った時は、迷わずに「黄海」に決めた。でも、韓国のタイトルも『哀しき獣』にすればよかったかな…」と話し、邦題のセンスに感心している様子。

さらに、韓国からの留学生が「ここ数年間、暴力を扱った韓国映画が多いのは何故?」と質問。これに監督は、「暴力的な描写のある映画は興行成績と反比例するので、決してトレンドではないと思う」と前置きし、「暴力は、現実の中には明らかに存在しているけど、認めたくないもの。でも、存在している以上なくなることはない。そういった認めたくない、見たくないものをあえて取り上げることに意味があると思っている。明らかに言えるのは、前向きな意味で捉えているということです」と、バイオレンス作品を撮ったこだわりを明かした。

さらに、もう1人韓国人女性から、「なぜ朝鮮族の話なのか」と、製作のきっかけに関する質問が。監督は、「今日は9本のインタビューで必ず聞かれ、これが10回目ですが、お答えします」と笑わせながら、「実は、『チェイサー』の中に朝鮮族の話を入れようと思っていた」と、『チェイサー』にまつわるエピソードまでさかのぼった。『チェイサー』の初稿シナリオでは、朝鮮族の男女による殺人事件がサブプロットとして入っていたが、プロデューサーから「最初から最後まで血だらけになってしまう」と止められ、あえなく外したようだが、その後も気になり、取材を進めたという。

「実際に朝鮮族の方々に会い、居住地に行きました。延辺という地域に飛行機で降り立った時、まるで主の居ない廃墟のような町だと感じた。彼らは韓国にお金を稼ぎに行くため、家庭も社会も破綻し、残っているのは老人と子供。辛い光景だった。故郷があるにもかかわらずそこから離れ、彼らがどんな風に生きてどんな苦労をし、何に傷つき苦しんだか、どんな涙を流し、どんな思いで自分の故郷に帰っていくのか、彼らの旅の過程をシナリオにして書こうと思いました。この映画は朝鮮族の話ではあるが、外国人労働者すべてに言える話だと思います」と、予定時間をオーバーしながらも熱く語り、会場から温かい拍手が贈られた。
2011年10月27日
『哀しき獣』
2012年1月7日(土)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー!
公式サイト:http://kanashiki-kemono.com/