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映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』メリル・ストリープ オフィシャルインタビュー

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

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“鉄の女”のニックネームをもつ元英国首相マーガレット・サッチャーの栄光と挫折の半生を描いた映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』が、3月16日(金)より公開。アカデミー賞で史上最多ノミネートを誇る名女優メリル・ストリープが、妻として、母として、国のリーダーとして力の限り闘い続けたひとりの女性を全身全霊で演じ、29年ぶりのオスカー像を獲得。そんなメリルが、自身が演じた政治家マーガレット・サッチャー像や彼女の苦悩について語ったオフィシャル・インタビューが到着しました!
映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』メリル・ストリープ オフィシャルインタビュー『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』
──フィリダ・ロイド監督からマーガレット・サッチャー役のオファーを受けた際、どのように感じましたか?
メリル:フィリダからマーガレット・サッチャーの人生と女性指導者をめぐる問題を描いた映画を作ると聞いて、すぐに関心を持ちました。女性指導者は数少なく、女性指導者であることの意味について興味を抱く映画監督も少ないですからね。

英国の首相になるためにマーガレット・サッチャーがどのような障壁を打ち破ってきたか。それを想像するためには、彼女が保守党の党首として頭角を現し始めた1970年代後半に生きる女性になったつもりで考える必要がありました。娘たちにはいつも言っているのですが、当時の世界は現在と大きく異なるものの、実際のところ、物事はあまり変わっていないのです。

戦時中に育ち、物資不足で復興途上の戦後の英国をじかに体験した女性が、自らの哲学を打ち出し、国の経済を立て直すために弱点と思われる要素を排除し、現実的な解決策を実行していく姿を追うのは興味深い作業でした。世界的な大問題を解決したその人物はたまたま女性でしたが、女性にそのようなことができるとは期待されていなかったのです。
──彼女は“男のクラブ”、しかも上流階級の世界に足を踏み入れ、その襟首をしっかりとつかんだわけです。政策はどうあれ、それだけで重大な成果ですね?
メリル:私は役者ですが、リハーサルの初日から本当に圧倒されるような気分でした。そこには英国が誇る名優たちが恐らく40~45人ほどいましたが、私は部屋の中で唯一の女性だったんです。保守党の会合に参加した時にマーガレット・サッチャーが感じたであろう気持ちを私も味わった気がしました。

議会での撮影、あるいは議会を再現するのはとても面白かったです。その場を支配し、政策か何かについて聴衆を引き込み、説得するということは人として誰もが苦闘を強いられることだからです。
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──愛を手に入れ失う、そして権力を手に入れ失う、作品ではこの二つのテーマが浮かび上がりますが、あなたにとってはどちらのテーマがより重要でしたか?
メリル:この作品が成功するとすれば、それは重圧と重大性と緊張感に満ちた彼女の政治家人生と、人間としての彼女に多大な影響を与えた私生活の両方が同等に扱われているからだと思います。つまり私たちは、ある人物を丸ごとすべて描いた映画を作ろうとしているんです。

マーガレットははっきり言いました。厳しい決断を下せば、その時には人々は自分を嫌うだろう、しかし彼らは代々にわたって自分に感謝することになるだろうと。指導者は常にそういう考え方をしなければなりませんが、それは母親も同じなんです。そう、今はあれこれ禁止する自分を子供が嫌うのでつらい、でも長い目で見れば子供は自分に感謝するようになるだろうとね。どちらも似たような問題だと思います。短期的な視点に立って人気を集める政治家もいるでしょう。しかし本当は長期的な展望を持たねばならないのです。
──作品は驚くほど政治的ではありません。そのことに観客は驚くと思いますか?
メリル:マーガレット・サッチャーの政治について何らかの考えがあって作品に出演したわけではありません。正直言って、彼女の政策については話にならないほど何も知らなかったんです。レーガン大統領の政策にはなじみがありますから、それらと一致するものが多かったことは知っています。しかし彼女は彼のすべての政策に沿っていたわけではありません。

ですから彼女の政策そのものよりも、その政治的決断のせいで一人の人間として彼女がどのような犠牲を払ったかに興味を引かれました。なぜ彼女が政策のせいで人々に嫌われたのか、その一方で彼女の政治的選択を称賛する人が多いのはなぜか、私たちはそれをできるだけ正確に描こうとしたんです。

しかし私たちがそれ以上に描きたかったのは、政策を決定する立場にいることによって、人はどのような犠牲を強いられるかという点です。指導者であり責任を取らねばならない立場にある時、それは人にどのような影響を与えるのか。そして強くあり続けるためには、どれだけのスタミナが必要なのかという点です。
──マーガレット役として40年分の人生を演じているわけですが、それは大きな挑戦だったでしょう。
メリル:すばらしい体験でしたよ。通常の作品では一つの特定の時代が設定されますが、この作品では彼女の人生を丸ごと振り返るので、本当にワクワクしました。

一言加えておくと、J.ロイ(・へランド)とマリース(・ランガン)の見事なヘア&メイクはもちろん、年老いたマーガレットを表現できたのはマーク・クーリエが補綴技術を駆使して見事に変身させてくれたおかげです。
──撮影は年代に沿って進められたのですか?
メリル:撮影は年代とはまったく無関係に進められたので、本当に不親切極まりなかったです! でも実のところ、最初から野心的な場面に臨めて良かったと思っています。気を引き締めて戦闘に臨む海兵隊員になった気分で、毎日現場で文字どおり戦うことができました。

毎朝、目が覚めるとこう思いました。「自由世界の指導者じゃなくて良かった。オバマ大統領じゃなくてよかった」と。だって、何て仕事かしら! シェークスピア劇的な大人物を演じた後に心から感じたのは、ただ感謝の気持ちだけです。とても謙虚な気持ちになり、彼女が背負っていた責任の重さを考えると恐れ多い気がしました。人々を死の危険に追いやらねばならない、非常に大きく恐ろしく深刻な立場にあっても、夜になれば枕に頭をのせて眠らねばなりません。公的な人物は犠牲を被らない、彼らは怪物か神のような存在だと考えてしまいがちですが、実際は誰もが同じように中間的な存在なんです。
──演壇に立ち、議会の様子を再現した時はどんな感じでしたか?
メリル:大きな重圧を感じました。ある意味、マーガレット・サッチャーの気持ちが分かった気がしました。当時、彼女は数少ない女性政治家の一人でした。女性政治家はほかにもいましたが、頂点に上り詰めたのは彼女を含め、ほんの一握りにすぎません。

彼女はメディアを利用してそれを成し遂げたわけではありません。少なくとも米国ではそうですが、現代の政治家たちが政界でのキャリアを積むために使うような手法を取らなかったんです。いかにフレンドリーな印象を残すかではなく、いかに自分が有能か示したんです。彼女は誰よりも入念に準備し、投げかけられる可能性のある質問をすべて予想する必要がありました。予期し得ないような質問に対しても答えを用意する必要があったんです。なぜなら彼女は地位を維持するために、同列に並ぶ男性より優れていなければならなかったからです。女性が上に立つことに対して、それだけ大きな反発があったんです。

それだけにスリル満点でしたね。実際の映像記録を入手できたので見たのですが、彼女は十分に覚悟ができていたし、徹底的に準備をし、完全に臨戦態勢なのが分かりました。まさに軽い足取りで意欲的に勝負に挑んでいる感じでした。その意欲の強さに感激しました。それこそが必要条件だったんです、指導者であるためには欠かせない資質だったんです。
──この作品に出演できて最も良かった点は何ですか?
メリル:この作品に出演できて最も良かった点は、一人の人物の人生を丸ごと見ることができたことですね。この年齢になると、自分の人生を最初から振り返ってみることが実際にあるんです。その膨大さに圧倒されることもあります。当時は重大だと思っていた出来事がぎっしり詰まっているから。

その一方で、重要なのはこの日、この瞬間だと気付くんです。今ここにいることがね。唯一重要なことは自分の人生を生き、まさに今この瞬間を生きることだと言えますが、実際にはこれほど難しいことはありません。つまり禅ですね、今この瞬間を生きる。感じて、ただそこに在れ。
2012年3月15日
『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』
2012年3月16日(金)、TOHOシネマズ日劇 ほか全国ロードショー
公式サイト:http://ironlady.gaga.ne.jp