サービス終了のお知らせ
シネマトリビューンは、2021年3月31日を持ちましてサービスを終了いたしました。


これまでご愛顧いただき、誠にありがとうございました。

ニュース&レポート

男ってバカだけど優しい──『夜明けの街で』若松節朗監督インタビュー

夜明けの街で

  • Facebookでシェアする
  • ツイートする
人気作家・東野圭吾が初めて“恋愛”をテーマに執筆し話題を呼んだ原作を、岸谷五朗、深田恭子、木村多江という豪華キャストで映画化した『夜明けの街で』。横浜を舞台に、幸せな家庭と、会社での安定した地位に恵まれた主人公が、ミステリアスなヒロインと出会い、甘く残酷な不倫の恋に溺れてゆくさまを描いた大人のラブストーリー。本作の公開を前に、メガホンをとった若松節朗監督にお話を伺いました。
男ってバカだけど優しい──『夜明けの街で』若松節朗監督インタビュー
──東野圭吾さんの原作を映画化するにあたって意識したことは?
監督:最初に考えたのは、東野作品でありながらも、サスペンス性をあまり強く出さず、不倫という題材を中心に、不倫する男と女、不倫される女の心理を描こうと思いました。もちろん、男としては一回ぐらい不倫してみたいという願望もありますから(笑)、身近な自分の生活で考えた時に、「女房ならどう思うのかな?」とか、一つ一つ考えながらやることも楽しそうだなと思いました。
──監督自身が不倫願望お持ちなんですね。会見でも堂々と宣言されてましたね(笑)
監督:「男なら…」と言ったつもりが、「僕には不倫願望あります!」となってしまいましたけど(笑)。個人的にはもちろんあります(笑)。男ならば“非日常”を求める部分は誰にでもあると思いますよ。女房や子供になんの不満もなくて、「こんないい家庭があるのに何故?」という所に、男は入っていく感じがします。バカな生き物ですね(笑)。燃え上がった後どうなるか、殺すか殺されるかまでいく人だっていますから、まさに「地獄」でしょうけどね。
──劇中では渡部(岸谷)が、秋葉(深田)と一線を越え“不倫男”になった後の、心弾むような描写や慌てふためく様子が面白くもあり、「男ってバカだなぁ」なんて思いながら観ていました。
監督:本当にバカですよね(笑)。ただ、僕は今回、「男ってなんて優しいんだろう」っていう映画を作ったつもりなんです。「バカだな、そんなこと言わなきゃ良いのに…」って思いながら、「でも、優しいよな」と思えるような男です。岸谷さんとも話し合いましたが、家庭に何の不満がなくても、目の前に秋葉のような女性が現れた時はどうなるか、やはり弱い女性が目の前にいたら助けてあげたくなるだろうと。でも、言わなきゃ良いことまで言ってしまい、おどおどしていく男は、撮っていて面白かったですね。
『夜明けの街で』 『夜明けの街で』 『夜明けの街で』 『夜明けの街で』
──岸谷さんと、“不倫”の表現について衝突したりは?
監督:衝突というものではありませんが、秋葉への思いをどこまで持って行くかというのは何度も議論しました。映画では、渡部のマンションは川の向こうにあるんですが、渡部は橋の途中まで秋葉を引きずり、川の真ん中ごろで気持ちを切り替えるんです。そして後半では渡部は家族を捨てる決断までしていますから、最後に秋葉の所へ向かうシーンは、橋を越えるか越えないか、どんな風にメールを打つのか、家族に背中を向けるのか、涙を流すのか、岸谷さんと何度も話し合いました。ここは見る側がどう受け取るのか楽しみにしています。
──深田さんは今回、男を不倫に引きずり込む女性を演じていました。
監督:今回の役は、深田さんがこれまでやったことのない芝居だったので大変だったと思います。秋葉はこれまで15年のうちの14年半を頑張ってきて、自分が自信を失いそうになった弱い時期に自分を抱擁してくれた男が、たまたま渡部だった。誰でも良かったかもしれない。利用したと見てもらって良いと思います。
──理想的な妻を演じた木村多江さんはいかがでしたか?
監督:「こんな奥さんがいるのに何故?」という“こんな奥さん”というのが大事なんですね。「不倫してあたりまえだよね」って思われるような奥さんだと困りますから(笑)。現場ではいつも岸谷さんに、「木村多江がいま頭の中にどれくらいある?」と聞きながら撮影していました。木村多江が何パーセントあるかによって、岸谷さんの芝居が変わるんです。男ってずるいのかもしれないけど、リミッターがかかっているのがいいんですよね。
──最後のほうの木村多江さんの表情と、これからの地獄を連想させるようなトドメのひと言は本当に怖かったです。
監督:玄関での芝居でも良かったんですけど、映画では橋をポイントにしていたので、木村さんがわざわざ追いかけて来るというのが重要でした。何も言わないで終わったと思っている男に、もうひと刺しする。女性は怖いですね(笑)。でもね…渡部は3年後ぐらいにまた同じ過ちをしますね。
──懲りずに?
監督:渡部ならやります(笑)。
──原作のままではありますが、横浜という舞台は、映画にどんな影響を与えましたか?
監督:横浜は、遠さがちょうどいいんですよね。1時間ちょっとで、行きはドキドキしているけど、帰りは日常に戻る時間として、ちょうど良い距離なんです。そういう意味では、横浜は格好の場所でした。あと、横浜は夜景もきれいですが、朝焼けも美しいんです。映画の冒頭に登場しますが、太陽が出る直前のオレンジ色のラインが一直線に出る画は冬にしか撮れないんです。タイトルにもなっているところなので、無理を言って撮りました。
──監督自身は今回、不倫というテーマに挑戦して、振り返ってみていかがでしたか?
監督:“不倫”という意味では、『ラストコーション』とまではいかないけど、底まで愛した後、立ち直れない男を描くのに、ベッドシーンも含み、もうちょっと踏み込んでも良かったかなとは思います。次は頑張ります!
──最後にこれからご覧になる方にメッセージをお願いします。
監督:不平不満もない家族がありながら、不倫に落ちることは身近にあることだと思います。奥さんと彼女と男、3人の心理サスペンスを紐解いていくのも楽しいと思います。奥さんは不倫にいつ気付いたか、秋葉はいつ渡部に惚れたのか?いつ別れを決めたのか?知らないのは男ばかりです(笑)。
2011年10月5日
『夜明けの街で』
2011年10月8日(土)全国ロードショー!!